第14ピリオド:Pick And Roll
早くも約束破ってしまいました。
それではどうぞ。
椎がコートへ入ると同時に恵が審判に伝えタイムアウトを、レッドドライバーは取った。
優と恵以外はベンチに座って、各自休憩をとる。
とにかく激しい疲労のせいかダラッとした体勢になっているが。
あっ、遥が大量にスポドリ飲んでる、500ミリぐらい。
「海が退場しちゃったから、マークマンを変えたいんだよ。」
「俺じゃーあのデカ物は相手できねーな。」
椎と相手4番の身長差は目測で15センチぐらいはあると思う。
そうなるとディフェンスする時もオフェンスする時もかなり不利となってしまう。
「とにかく4番には、この中で一番大きい香が良いと思うんだ。で9番に遥。
椎には10番を頼めるかな?」
「中入れられたらどーしよぅもねぇぞ。」
「この前の遥みたいに、かなりプレッシャーをかければ落とすよ。」
遥を指差しながら言う。
「じゃっ、私と恵ちゃんは前と同じマークマンに付くんだねっ?」
「うん、じゃみんな行くよう。」
残り8分50秒。
11番のボーナス1フリースローが入ってから、オフェンス開始。
いつもどうり優と恵の2人で運んでいく。
そして椎とその相手(マークマン)、10番を観察して、
「10番の人すごいディナイディフェンス(パスを入れさせないようにする)だよっ。」
「椎にボール入れるにはちょっと難しいかな。」
香か遥にパスを入れようと思い視線を中ポジションへと向ける。
10番は、椎が鋭く速いドライブの1対1が武器の選手だと認識し、なんとかパス自体を入れさせないようにとしているようだ。
「しつこいなぁ、疲れねぇのか、そのディフェンス。」
「いつもやってきている形だから全然疲れん。」
さも余裕のような笑顔を向けてくる。
「遥みたいに体格いいから俊敏性がねぇと思ってたんだよ。」
「遥って?」
「うちのチームの5番だ。」
「なるほどなぁ。」
さっきからプッシュトークが続いてる。
顔は怖そうだが性格は優しいらしい。
会話しているせいで2人ともいつのまにか足を動かすスピードが緩まっていった。
「それから、!」
「くっ。」
椎が話を続けようと意識を自分に向けてから一瞬で、スピードを速くしてあのしつこいディフェンスから脱出した。
「恵、パスくれ!」
「おーけー。」
まるでいつディフェンスを振り切ってどこでもらうか分かっているかのようにパスが出された。
「届けぇ!」
パスカットを必死にしようと10番が付いてこようとするが、間に合うはずもなく、
「うらあ!」
パスキャッチから流れるようにドライブしていく。
カバーしようと慌てている9番の腰横からバウンズパス、そして遥のシュートチャンス!
「ふがっ!」
前回とも同じくリング手前に弾かれてしまった、
「リバウンド奪取!」
これで25リバウンド♪
逆サイドでポジション取りしている香へパスを回す。
オフェンスはなるべくパスを回した方がチャンスが生まれることが多いのだ。
ここでディフェンスをかわすようなフックシュートを打った、
「前走れ!」
が、4番にブロックされてそのまま外にいる6番へパスが通る。
「いくよっ!」
掛け声と共に優のマークマン、11番が速攻に走り出した。
優も付いていこうとするが、なかなか速く追いつかない。
「優っ!後ろからパス!」
誰かが言う声に反応してジャンプして手を伸ばす。
しかしというかジャンプ力が少し高いと言え優の身長が120代のせいか、擦ることもなく11番の手へ。
カットされると思って逆速攻防止(ターンオーバセフティー)の準備をしようと思ったけど、カットされなくて良かったぁ。でもなんであんな小っちゃいんだろう?可愛いけど。
速攻を喰らい、これで11番が連続5P獲得。
なんで身長無いんだろうねっ?中学時代はシューティングガードしかやらしてもらえなかったよ。
1対1は好きだけど、中に入っちゃうと高い人がブロックしに来る。フェイクが完全にひっかからないんだよぅ。だから3ポイントシュート一筋に賭けたんだ。
ここだ。点差が12点も開いちゃった。
「パスッ!」
優が最高のスピードで11番を振り切って、恵からパスを受け3ポイントシュートを打とうとした。
「優、チェックが来てるぞ!」
椎の警告と同時に、シュートしたボールが11番にブロックされ、たたき落とされた。
「くおっ!」
落ちたボールを拾いまた3点を狙おうとする。
11番はドライブにもシュートにも対応できる体系をとり、ひたすらブロックしようとして来る。
「「「無理はするなあぁ!」」」
他のメンバーが優に対して、打つな、と大声で言った、
優の手からボールが離れそうになった瞬間に11番は手を伸ばしてくる。
ディフェンスの重心が前になったのを確認して、中へと切り込むために右手でボールを床に突ける格好になった。
11番も当然反応して今度は重心が左側へとかかり左足がそのコースを塞ごうとする。
優は足をドライブ状態のままボールを持ち上げ不安定な体勢のまま3ポイントシュートを、少しフォームがバラバラな、手から離す瞬間に、
「チェック!!」
11番が両手を伸ばして完全にブロックできるようにした。
少しだけそえるだけの左手で、自分の右側へ落として、
トラベリングに気をつけながら、11番の脇を通るようにして抜いて、慌てて手でディフェンスをしてこようとする相手の位置を考えながらドリブルを1回強く突いて後ろに下がった。
「ほっ。」
少しだけ不安定な3点シュートが、打たれ、11番の手が当たり、
優が3ポイントを加点してバスケットカウントを取った。
「やったあー!」
優が歓喜の声を上げた。
「やっぱり優はすげぇな。」「1本決めてよ。」
3ポイントシュートのバスカンはなかなか起こらない。ここでのF.T1本が重要。
まあ、優は中学の時から有名なシューターであった訳だ。当然1点も決めた。
『4点プレイだああああ!!』
「あのちっちゃい子のロッカーモーションとバックビハインドショットは凄かったな。」
優を見ながらそのプレイヤーは言う。
この後、優が怒濤の連続3ポイントシュートで2点差でオールブレイカーズを下した。
残り1分で遥がバスカンの3点プレイを魅せた。リバウンド数30を超えた♪
優が打ち立てた記録は、
3点率:8/10(80.0)27点獲得。
内、バスカン3回、全てのフリースローを決める。
さらに連続3本決める。
香の記録は、
2点率:6/9(66.6)13点獲得。
内バスカン2回、フリースロー1/2
遥の記録は、
リバウンド数:OFR(オフェンス時のリバウンド)13回DFR(ディフェンス時のリバウンド)18回の合計31本
恵の記録は、
アシスト数:8本
スティール数:19本
ターンオーバー数:1本
他にもいろいろな記録が準決勝で出たらしい。
レッドドライバー6人は翌日、朝7時半に明水駅にいた。
「おはよっ!」
「起きるの速えーな。」
決勝戦の開始時間は9:00となっている。かなり開始時間まで時間があるが、
「体育館まで、歩けば、時間立つと。」
「じゃぁ行くか。」
体育館へ到着した6人は、丁度開館仕立ての中へと入り込んでいった。
「今日の試合が10分×4ピリオドなんだってよ。」
「疲れるねえ。」
試合までに各自準備体操をしておこう、恵の意見によってあと1時間ぐらいはフリータイムになった。
「決勝戦、勝つぞぉ!」
ティップオフはもう近い。