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NATUMI  作者: 村畑醤油
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先行く兵士団

 私が何をしようが影響力はない。

 それでも私は行動を起こす。抵抗するし叫び続ける。それらに意味はあるか分からないが訴える。世界が変わるその日まで思い切る。

 なぜなら一種の贖罪だからだ。


 先行く兵士団総督 なつみ


 『告白』


 1.武田仁(仮名) 元先行く兵士団伍長

 初めて見た時あまりにも衝撃だったのを覚えています。ただ眺めていたテレビの映像がただの作り物じゃなく、本当に現実なんだなと。子どもながらにもの凄いことが起きている、元号が変わるとか日本人が火星に行っただとか(※当時JAXAから独立した後の先行く兵士団火星開発チームである与田悠氏たちが人類初の有人での火星探査に成功している)そんなちゃちなものではなく、本当に本当に歴史的瞬間なんだなと思った。生きている間に是非お目にかかりたいなといった若干不純な理由で私は先行く兵士団に入団を決めました。齢は十五の時でした。

 入団式の時、なつみ提督に初めてお目にかかりました。もの凄く聡明な印象を持ちました。その日は忘れられない1日となったはずですが、詳しくは憶えてはいません。ただ、これで自分も一兵士団員だなと背筋が伸びる思いでした。

 それまで全くなつみ提督が正義だと思っていました。この世の中心みたいな、なんか言葉では言い表せないけど。でも、それは否定される事になりました。当たり前だったはずの答え、よく見たら違う。ただ私たちが選択した答えが間違ってるんじゃなく解答用紙に裏切られた、そんな気持ちが私の胸の中をぐるぐると回っていただけでした。はっきり言います。彼女は世界を裏切ったのです。


 2.元パルク所属アイドル

 なつみは普通の女の子だったんです。また至って彼女に対して嫌悪感なんて抱いた事は一度もありませんでした。

 彼女とはパルクの中でも一番の親友でありライバルでした。パルクは元々小さいアイドルグループだったのですが入る時に審査が中々厳しかったのを覚えています。書類審査から面接まであり、面接は五次審査までありました。私もアイドルを目指していたものですから少しはこの業界について詳しい限りでしたがパルクは初めて聞いた会社でした。パルク社の中のパルクというちょっとおかしなネーミングではあったのですが面接を受ける女の子達は軽く500人を超えていて、改めて事務所の大所帯振りには驚きました。その狭き門を潜り抜けた9人だったためみんな可愛くて歌も踊りも上手でした。ただ、なつみだけは雰囲気が違うというか一人だけオーラが凄かったですね。多分渋谷のスクランブル交差点での雑踏の中でもすぐに見つけられるくらい、発光しているような感じです。生で見ないとこればかりは分からないですよね。一人だけ、一人だけ自分の世界に入り込んでいるというか。

 彼女に面接の話をした事があるのですが、彼女は部屋にノックをして座った瞬間に合格です、次の土曜日からレッスンがあるんだけど君も来る?みたいなことを言われたそうです。言わばエリート中のエリートだったんですよ。でも、聞いたところでやっぱりそうだなって思いました。自分が面接官でも同じように即パスさせると思います。だって彼女本当にすごいですよ?生まれつきスター性を兼ね備えている真の人間ですからね。

 稽古を重ね私たちパルクはメジャーデビューを果たしました。私たちは社会現象にもなりましたね。高い音楽性とセクシーさと可愛さを融合させたダンス。全ては熱狂のために全てを尽くしていました。ただ、常に一番人気のなつみだけはアイドルというよりも他の何かに向いていましたね。統率力に長けていましたし、何より本当にかっこいいんですよ。彼女の言うこと全てが芸術というか、話を聞く限り頭もいいですし聞いていてぼぉっとしちゃうんです。人を心酔できるほどのなにか、それを持っていたんです。また、ただ一つだけ気になることを言ったのです。

「私、日本をより良い国にしたい」

 彼女は何かを求めていたのです。全てを犠牲にしてでも変えたい何か、それを深く理解しようとして色々頑張ってました。本を読んだり、歴史を学んだり。特に帝王学に興味を持っていたそうで。自分でかつて存在した宗教家、皇帝や王様、それとこの口からは言えない独裁者の伝記を読んだのです。パルクの初の冠番組『みんなのパルクにレッツゴー』にて放送された楽屋に突撃するコーナーで小難しい本を読んでいてちょっとした話題になりましたが、何よりそれがゲーテのファウストで良かったなって心底思います。だって、一アイドルが独裁者の伝記を読むなんて世間からバッシングされないか怖くて仕方がないですよね。

 そして彼女はデビューしてわずか三年でアイドルを引退して「先行く兵士団」に入団するのです。18歳になった誕生日のことでした。

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