花果山
花果山は、人間界と天界の狭間に位置する。
人間は、山の入口を見つける事が出来ず、天界に住む者達にとってはさほど魅力のない山だ。
よって、あやかしや動物達にとっての楽園になっている。
なかには、人間のように木や蔦などで土台を作り藁の屋根をのせた家のような物をつくって住むものもいる。
その中の一人に、山を仕切る『美甲』と呼ばれる猿のあやかしがいる。
美甲のすむ家に、赤子をくわえた狐が入っていく。
狐は家の中に入ると、くるっとまわる。
九本の尻尾が舞い上がり身体を包む。
ふわり。
尻尾が床に落ちると人間の女性に変わっていた。
花魁のような艶やかな着物を着て胸元が大きく開いている。
狐目でうりざね顔、ただ美しいと言うだけでなく、妖艶な魅力を発してきた。
手に、先程の赤子を抱いて座っている。
赤子は気持ち良さそうに眠っている。
「いるかえ~」
「なんじゃ~」
家の奥の部屋から声がする。
濃い紫色の着物を着た大猿が出てくる。
髭を撫でなから狐に話しかける。
「また、珍しいもん拾ってきたな」
「可愛いだろ」
赤子を撫でながら狐が答える。
「人間の赤子じゃねえか。それよりも、相変わらず色っぺえなあ。九尾」
「あんたこそ、相変わらずだねぇ。」
九尾と呼ばれた妖孤が微笑む。
「ふん。そろそろおいらの女になっても謂い頃じゃねえか」
「ばか言ってんじゃないよ」
九本の尻尾の先端が美甲の鼻先をつつく。
「おっかねえなあ」
「ふん」
「さすが、1700年前の大戦の元凶だな」
「ふん。天に戦争吹っ掛けたあんたにはまけるさね」
「ぶはははは」
「ふふふふふ」
お互いの武勇伝を思い出し笑い会うふたり。
「で、またおめえの子供だってえのか? 」
「なにいってやがる。あたしゃもう色事には興味ないんだよ。なんたって、仙道の修行中だからね」
九尾が大きな胸をはる。
「もったいないねえなあ。いいもん持ってんのに」
「あんたは、煩悩の塊かい」
「ぶはばあ。ちげえねえ。煩悩の赴くまま好きなことすんのがおいらの流儀だかんな」
「で、話し戻すけど。仙石の上に捨てられて空に向かって泣きまくてったから、あんた好みかと思ってねえ。顔も似てるし」
美甲に良く見えるよう赤子を差し出す。
「まあ、人の子の弟子とんのも悪くねえか」
「だろ」
「空に喧嘩ふっかけるように泣いてたなんて面白えしな。名前は『空』」で決まりだな」
「さすが、花果山を統べるだけのことはあるねえ。あと、千年若かったらほれちまったかもねえ」
尻尾をふりふり美甲に笑いかける九尾
「で、息子にはあってかないのけ? 」
「あいつも半分人間だからねえ、仙道の修行もあるし。あんたなら人間どもとの付き合いもあるし、あんたに預けとく方が安心さね。あたいじゃ、人間どもの評判悪いしねえ」
「そんなもんかねえ」
美甲は、九尾から赤子を受け取り頭を撫でる。
「じゃ、頼んだよ」
九尾は、くるっとまわると狐の姿に戻り去っていった。
「いっちまったか。」
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