GW編【姉とのデート①】
お姉ちゃんとのデートです!
「彩雪ちゃんって呼んで」
「へ?」
5月3日、今日はいよいよお姉ちゃんと出かける日である。朝、俺とお姉ちゃんは朝食を食べていた。
「いきなりどうしたの?お姉ちゃん…」
「昨日の夜聞こえた…電話で香織って呼んでるの」
確かに昨日の夜、香織からお礼の電話がきた。その時に、彼女の名前を呼んでいたのが聞こえていたらしい。
「ずるい…私も呼ばれたい…」
「う、うーん、でもお姉ちゃんはお姉ちゃんだし…」
「呼ばれたい」
「わ、わかったから、じゃあ彩雪姉ちゃんってのはどうかな?」
「わかった、それで我慢する。」
彩雪姉ちゃんは渋々だが納得してくれたようだった。
昨日の夜、彩雪姉ちゃんは俺の部屋を訪ねて、「学校の最寄りの駅に集合。」と言った。俺が理由を尋ねると「その方がデートっぽいから。」らしい。だが、数秒後またトテトテトテとかわいい足音をたてて戻ってきて、「やっぱり家から一緒に行こう。」と言った。これまた理由を尋ねると「そっちの方が長く一緒にいられる。」と可愛いことを言っていた。
そういう理由で今日は朝食を食べ準備を済ませると、一緒に出発する。
目的地は、昨日香織と行った駅からさらに3駅ほど行った中心都市だ。その駅は非常に広大で高さも10階以上ある。この場所で買えないものはないんじゃないかな?と思うくらいにお店が揃っていて老若男女問わず人が多い。
ちなみにノープランである。お姉ちゃんはとりあえず2人で出かけられたらそれでいいらしい。
「行こっ?」
玄関を出るとお姉ちゃんはそう言って手を出してきた。緊張して手汗をズボンでふいて彩雪姉ちゃんの手を掴むと、彩雪姉ちゃんは「ふふっ」と笑って「顔が赤い、ニヤけてる」と俺に言って楽しそうにしていた。
駅までゆっくりと歩いていると元々の集合場所予定だった公園の前までたどりついた。この公園は家から駅までの中間地点だ。
「かわいい妹さんだねぇ、仲良しな兄妹ねぇ」
と、通りすがりのお婆さんに言われた。
「わ…私がお姉ちゃんだから…」
人見知りの彩雪姉ちゃんは、小さな声でそう反論する。
「うんうん、そうよね。お嬢ちゃんも立派なお姉ちゃんだね。」
彩雪姉ちゃんは顔を真っ赤にして「ち、ちがっ!」と反論していたが、おばちゃんはニコニコして「じゃあ、邪魔してごめんね」と言って去っていった。
駅についた俺達は切符を買って電車に乗った。電車は昨日より人が多く、ドア付近で密着することになってドキドキした。お姉ちゃんは耳まで真っ赤にしていた。
目的の駅についた俺達は、とりあえず1階をぷらぷらすることにした。
「彩雪姉ちゃん、日本お土産村だってよ。」
「ほんと、美味しそうなのいっぱいあるね。」
見つけたのは、日本お土産村という日本中の名物お土産を集めたような場所だ。
「努努鶏あるかなぁ」
彩雪姉ちゃんが呟いた。
「ゆめゆめどり?なにそれ?」
「りょーくん知らないの?冷たい唐揚げだよ。とても美味しい。」
何故かドヤ顔の彩雪姉ちゃん。
「う、うん暖かい唐揚げしか知らない。」
「かわいい弟君にお姉ちゃんが今夜食べさせてあげよう。」
そう言って、案内板までトテトテ走りで努努鶏を探し始めた。
「お姉ちゃんあった?」
「うーん。見つからない。」
俺も一緒に探す。
「んー、どどどりみたいなやつはあるんだけどなぁ」
「りょーくん、それどこ?」
「あ、これだよ」
「それだよ。努努って書いてゆめゆめって読むの!」
お姉ちゃんは声に出して笑うのを必至に我慢しているようで口に当てた手の隙間から「ふふふっ」と空気が漏れていた。
「彩雪姉ちゃん、笑いすぎ!」
「だ、だって、どどどり…」
一向に笑うのを止めないので、話を切り替える。
「それで、ここはどこかな?」
「現在位置ここだから…」
「彩雪姉ちゃんこれ後ろじゃん!」
案内板を見ていた俺達は振り返るとそこに努努鶏のブースが存在していたことに気づかなかった。
努努鶏の購入を済ませると、俺は食べたいものがあるのを思い出した。長崎のお土産、角煮まんである。
俺はお父さんが稀に買ってくる角煮まんが大好きだった。
「彩雪姉ちゃん、俺、角煮まんが食べたい!」
「いいよ。案内板で探そうか。」
「彩雪姉ちゃん…努努鶏の隣見てみ…」
「あ、あった。」
同じ肉系のカテゴリーだからなのか、努努鶏のとなりにあった。
1つ400円の角煮まんを2つ購入した俺達は、ベンチ座って食べることにした。
「あ、美味しい」
彩雪姉ちゃんは、角煮まんにかぶりつくとそう言った。
「でしょ?美味しいよね角煮まん」
「うんっ、もちもちでお肉も柔らかくて美味しいね。」
お気に召したようでなんだか嬉しかった。
その後食べ物だけではなく、色んなお土産を見てまわり充実した時間を過ごした。
「お昼どうする?お店はいっぱいあるから迷うね。」
エレベーターの横にはレストランの並ぶ9階と10階の各お店の紹介が並んでいる。
「牛タン…」
彩雪姉ちゃんの目線の先には宮城の有名なお店だという牛タンのお店の写真があった。
「牛タンが食べたいの?」
「え、言葉にでてた?」
「うん、でてたよ。」
顔を赤くする彩雪姉ちゃん。
「じゃあ、行こうか」
「え、でも高いよ?」
メニューをみると確かに定食3000円近くの値段で学生には高い。でも彩雪姉ちゃんが食べたそうだし、普段自炊している我が家の、父さんからの仕送りには余裕があるので問題ない。
「俺も牛タン食べたかったし行こうか。」
俺の提案を聞くと彩雪姉ちゃんの顔色は絵に描いたように明るくなった。
「うん、行こっ!」
お姉ちゃんは楽しそうに俺の手をとり、エレベーターまで引っ張るのだった。
このあとめちゃくちゃ牛タン楽しんだ。
今回も午前中までしか行きませんでした…(チーン)
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レビューのお礼です?
〇緑斗のトイレ待ちをしている彩雪の目の前でありすさんが名前が書いてあるハンカチを落とす(特殊な状況ですw)〇
「あの…お姉(兄)さん…」
彩雪がハンカチを拾い声をかけるが、声が小さく聞こえていないようだった。
彩雪は急いでありすさんに追いつき、トントンと背中を叩いた。
「あの…ありすお姉さん、その…ハンカチ落としましたよ」