GWデート【香織とのデート②】
美味しい昼食をとりお腹を満たした俺達は、映画館へと来ていた。
「えっと、どこだっけ?10番スクリーンだよね」
「うんうん、10番スクリーンならそこの突き当たりにあるよ。私、飲み物とかポップコーン買ってきていい?」
「おっけー、お金渡すからSサイズのウーロン茶を頼む…。俺はトイレに行ってくる。」
「はーい。ウーロン茶って高校生男子っぽくないね」
アハハと彼女は笑う。
「うっせいやい!お茶が一番買って後悔しない飲み物なんだよ」
その後俺達はお互いの用事を済ませ、指定された会場にはいる。会場にはすでにほとんどの人が座っているようだ。ホラー映画のこの会場に小さい子はいないようで、パッと見た感じだとカップル、夫婦、男友達同士、女友達同士で来ている客が多いらしい。
「俺達って1番後ろの席だよな?」
映画館の中なので俺達は当然小声で話す。映画上映前のスクリーンには様々な予告編が流れている。
「あれじゃない?2人座れそうなソファみたいなやつ」
「ほんとだIの7とIの8、ここだ!カップルシートって縁のないものだと思ってたから意識して見たことないけど、こんな感じなんだね。」
「う、うん。なんだかくっついて座るのは意識しちゃうね…」
「え、今なんて?」
予告編の音で小声というのもあり、移動中の俺にはうまく聞き取れなかった。
「ううん、なんでもないよ…」
こうして俺達は自分達のシートに座った。
俺達のシートはほとんど真ん中だ、当然すでに来ていてさらにカップルシートに座っている客の前を通る。そのカップルの彼氏共が「すみません。」と言って前を通る前原さんに見蕩れ釘付けになり、隣にいる彼女に揃って怒られていた。
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私は今、人生初の気になる異性と映画そしてまさかのカップルシートに座っている。
カップルシートとは、まさにカップルのために作られたような座席で、普通の座席にある椅子と椅子の間の隔たりがなく、近いもので例えるとバスの座席のようなソファだった。座り心地はかなり良く、足も伸ばしてゆっくりできるとても快適なリラックスできる場所だとは思うのだがそれに反して私の心臓は早い鼓動をうっていた。
理由は単純、彼、美咲くんとの距離である。肩と肩、太ももと太ももの距離は0。そうくっついているのである。
彼は意識してくれてるのだろうか。そうだとうれしいな。そう思い彼の方をチラリと見る。
彼も同じことを考えていたのか、目が合い動揺して目を逸らしていた。そんな彼が可愛くて幸せで私は気持ちが舞い上がり映画どころじゃないよと思った。
そんなこと無かった。
めっちゃ怖かった。
いくら気持ちが舞い上がっていても、ホラー映画独特の「あ、もうすぐでる」とわかる演出に私の心は現実に引き戻される。
怖がっていた私は無我夢中で彼にひっついたり彼の肩と椅子の隙間に顔を埋めたりしていたらしいのだが、そんな美味しいイベントの記憶がほとんどなくてとても残念だった。
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映画館をでた俺達は映画の感想とこれからの予定について語っていた。
「怖すぎて、夢にでてきたらどうしよう…」
「でも、本当に怖いのは幽霊より人間だって知らされたような気がする。」
映画の内容をざっくりネタバレすると、主人公がとあるきっかけで幽霊に狙われるようになるが、その過程で周囲の人間も巻き込まれることになった。主人公は周囲の人を巻き込まないために奮闘するが、地域でも仲のいい家族として有名だった主人公の家族も、親友に妻をとられ、会社の仕事仲間も裏切り人間関係が崩壊していく。最終的に幽霊にも人間関係にも悩まされた主人公は…
といった感じだ。
この映画は霊の怖さはもちろん、人間の内面も上手く表現していて怖いけど面白いものだった。
「も、もう終わり!これ以上話したら夢に出そう…。」
「りょーかい。これからどうするの?」
「暖かくなるから新しい服がみたいな」
「よし、じゃあ行こうか」
「うん、ゴミ捨ててくるから待ってて」
「あ、いいよ俺が行く!ついでにトイレにも行きたいしここで待ってて」
「わかった!ありがとう!」
ウーロン茶を一気に飲んだ俺は映画に入る前に行ったはずなのにまたトイレにいきたくなっていた。
用を足した俺は前原さんを待たせている方へと向かった。
「前原さんじゃん!1人?暇なら俺達と回らない?」
俺が戻っているとそんな声が聞こえた。
「ごめんね、一緒に来てる人がいるの。」
「まじ?彼氏だったりすんの?」
「いや、彼氏じゃないよ」
「へぇ、じゃあ俺達と一緒に回ろうぜ。その子も一緒にさ」
彼女は同じ学校だと思われる男子生徒2人組にナンパのようなものをされていた。
「でも…」
彼女は見るからに乗り気じゃないよっだった。ここは俺が出てなんとか言わないとな。そう思い彼女の元へ向かう。
「前原さん。ごめんね待たせた。」
彼女は俺が現れると顔を明るくした。
「ううん、いいよ。」
その様子を見ていた男は悪態をつく。
「ちっ、こんなシスコンやろうと来てんのかよ」
「みんなのアイドルの前原さんはこんなシスコンと関わらない方がいいよ。」
俺がとても美少女な姉と学校でも仲良くしているのを見て、快く思ってない連中がいて陰でシスコンと呼ばれているのは知っていた。まさか面識のない相手に言ってくるとは思わなかった。
「美咲くんはシスコンじゃないよ!誰にだって優しいもん!」
「なんだよ、シスコンな上にたらしじゃねぇーか。」
「確かにそうだけど!」
「ふぁぇ?」
味方からの急なジャブに変な声出た、ここは普通「そんなことない」って言うところじゃないだろうか…
「私は誰にだって優しくて面白い美咲くんと回りたいの!」
彼女の真剣な表情に俺はドキリとした。彼らの存在が邪魔だなとも感じた。
「ちぇ、顔はいいのに男の趣味悪いなぁ」
そんな捨て台詞を吐いて、彼らは去って行った。
「ごめんね」
彼女は俺にそう言った。
「いや、いいよ。でもなんでたらしを否定しないのかな?」
俺は笑顔で彼女に問う。
「だってその通りじゃ…」
彼女の両頬を引っ張る。
「ほめんなひゃい(ごめんなさい)、ひっふぁはないれ(ひっぱらないで)」
「まぁ、いいけどね」
彼女の両頬を引っ張るということは、彼女と見つめ合う形になる。なんだか照れくさくなった俺は、その手を離した。
「緑斗くんのばか」
「え?」
「乙女の顔を引っ張った罰!私も緑斗くんって呼ぶから、緑斗くんも香織って言って!」
「はい!」
鬼気迫る彼女の様子に俺は同意せざるを得なかった。
「じゃ、行くよ!」
こうして俺達はお店をいくつかまわり、前原さんは一緒に選んだ服をとても気に入っている様子ですぐに購入した。
その後、俺達は最後に小腹がすいたのでクレープ屋さんに来ていた。
「楽しかったね!また一緒に来たいな。」
前原さんはご機嫌にいう。
「そうだね。また予定があったら行こうか」
「ほんと!?やったー!」
幸せそうな彼女の顔を見て、やっぱりすごい美少女だなぁと再び感じさせられた。
クレープを食べ終え、真っ直ぐに駅に向かった俺達はそのまま電車にのりお互の最寄り駅である集合場所で解散した。
送るよ?と言ったのだが、彼女は母が近くのスーパーで買い物しているので一緒に車で帰るから大丈夫だとのことなので、解散だ。
家までの帰り道。
[本当に楽しかったよ!ありがとう!]
と彼女からメッセージが届いた。
人生初の異性とのお出かけは上手くいったようで良かった。
次回からいよいよお姉ちゃんとのデート!と行きたいところですが、家に帰ったあとのやり取りも書きたいので悩ましいところです。
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