お姉ちゃんとの初めての登校
「ふわぁ。」
目覚まし時計の音とともに私は目が覚めた。時刻は6時である。
今日から新しい高校での生活が始まる。家庭の都合上変な時期になってしまったので期待と不安でいっぱいであった。
それに…
昨日から弟ができた。私の性格からもあり、普段は男子と話すことはほとんどない。そのためとても緊張したし怖かった。
でも新しい弟、緑斗君はとても私に対して優しく接してくれてお姉ちゃんも頑張ろうと思った。
まだお互い距離はあるなと思った。
そんな新しい弟くんは、まだ寝てるかな?そう思ってリビングへ降りるとそこにはこんな時間なのに緑斗君がいた。
話しかけるとどうやら寝付けなかったらしい。
緊張したのかな?かわいいやつめ。と思った。
とにかく新しい弟とはうまくやっていけそうだった。
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新しい姉ができたその日の夜、俺は寝付けなかった。今までずっと1人か時々父しかいなかった我が家に女性がいるのだ。変に緊張してなかなか眠れなかった。
やっとのことで眠れたのだが、眠りは浅かったのか目が覚めると5時半だった。なんとなく喉が乾きリビングに降りコーヒーを飲みながら朝の情報番組を眺めていた。
しばらく経つと姉が起きてきたようだ。
姉は私を見ると驚いて声をかけてくれた。
「おはよう…はやいね」
「おはよ、緊張しちゃって眠れなかった。」
ハハと笑って応えると、お姉ちゃんはフフッと笑って「ちゃんと寝ないとメだよ」と言った。
そんな姉に朝から癒された。
「お姉ちゃんもはやいよね?」
「うん…お弁当を作ろうと思って…」
そういうとお姉ちゃんは2人分の弁当箱を用意していた。
俺は去年からほとんど1人暮らしだったので、料理をすること自体は慣れたが昼食は基本学食だった。
お弁当を作るには朝早くに起きなければいけないので、普段、朝に弱い俺にはかなり辛かったからだ。
「え、お姉ちゃんがつくってくれるの?」
お姉ちゃんは俺が「お姉ちゃん」って呼ぶととても嬉しそうにする。そこがとても可愛いのだが、その嬉しそうな顔をしたあと不安そうな顔に変わった。
「嫌だった…?」
「いやいや。とても嬉しいよ。俺、かわいい女の子に弁当作ってもらうの夢だったんだ。」
と慌てて返すと、お姉ちゃんは「かわっ…///」と言って顔を真っ赤にしてしまった。
「…お姉ちゃんだからね」
そう言ってお姉ちゃんは逃げるように台所へと向かった。
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お互い、学校に行く準備を終えるとリビングへと集合した。7時半である。
今日はお姉ちゃんは初めての学校なので、俺と一緒に向かうことになっている。
こんなに可愛い女性と登校するのに緊張してしまう。
「じゃあ…行こっか…?」
お姉ちゃんが緊張しているのが伝わってきて、なんだか俺の方の緊張が薄くなってきた。
「うん、行こう」
家を出て鍵を閉めるとお姉ちゃんと隣に並んで歩いた。
学校までの距離は、徒歩15〜20分くらいのまぁそこそこの距離である。学校前の坂道が自転車では辛いため歩いて登校している。
「お姉ちゃん、自己紹介とか大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ…お姉ちゃんだもん」
「ほんとかなぁ」
「ホントだよ!…ばか」
とそんな話をしているといつもより早く学校が見えてきた。
周りには登校中の生徒が多くなってきて、俺達の近くにいる生徒はちらちらとこっちを見ていた。
「おっす!緑斗!お前誰だ?その隣にいる美少女ロリは?」
デリカシーの欠けらも無い雄人が声をかけてきた。
お姉ちゃんはビクッとして俺の背中に隠れた。
見た目相応で可愛いのだが、本人に言うと怒られそうなので見た目にはなるべく触れないようにしている。
お姉ちゃんは「ろ…ろり…。」と悲しげにつぶやいていた。
なので俺は雄人の脛を蹴り「姉だよ。」と言った。
雄人は「痛ってーな。」と脛を抑えていた。
「お前にもったいないレベルの美少女だな。」
「うっせ、ほっとけ」
「じゃ、姉弟水入らずのとこ邪魔して悪かったな。」
そういうと雄人は自転車を漕ぎ去っていった。
「なんか失礼な奴でごめんね?」
「だ、大丈夫…元気な子だね…」
学校につくと周りはみんなお姉ちゃんに釘付けであった。お姉ちゃんから目が離せず人とぶつかり転倒している人も現れるほどだ。
俺はみんなが夢中になっているのが嬉しくなり、少し不安になった。
ついでに男子からの嫉妬の視線が痛かった。
「じ…じゃあ、私は職員室に行くから…」
学校の下駄箱まで行くとお姉ちゃんは俺にそういうので職員室まで案内し俺は自分の教室へと向かった。
教室に入り荷物を置くとすぐに雄人がやってきた。
「お前の姉ちゃん、めっちゃ可愛いな」
「なんだよ、お前にはやらねーぞ」
「ふっ、俺は巨乳にしか興味がないのさ」
確かにお姉ちゃんの胸は小さい。
「ならいいよ。」
「でもなにか目覚めそうだよな。」
「わかる。でも目覚めたらシバくぞ」
「姉に目覚めそうになってるやつに言われたくねー。」
「姉でも義理なんだから意識してしまうに決まってんだろ。」
そういうと雄人は「お前なぁ…」とはやくもデレデレの様子な俺に呆れていた。
いくらデレデレでも姉と弟である。ということは頭にいれている。もちろんお姉ちゃんに恋しようとは微塵にも思っていない。
その時だった。
「美咲くんのお姉ちゃん…そんなに可愛いの?」
すでに登校しており前の席に座っていた前原が振り向きそう言った。いつもみたいに活発なテンションではなく、落ち着いた感じだったのでピリッとした恐怖を感じた。
雄人はその様子を見て、「やべっ、1限目の準備しなきゃ」と絶対急ぐ必要のない適当な用事をつけて自分の席へと逃げるように去っていった。
「あ、ああ。」
とりあえず俺がそう答えると前原は
「ふーん。」
と言って前を向いた。
それ以上何も言ってこなかったので俺は「ふぅ」と息をつくと、前原は急にくるっと後ろを向くと笑顔で「おはよう」って挨拶をしていつも通りの世間話をしてきた。
その笑顔がなぜだか怖かった。
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昼休みになる頃にはかわいい2年生の先輩が編入してきたという話は学校中の話題であった。
「加布里先輩の教室にめっちゃかわいい編入生きてるらしいぜ」
「まじ?見に行こうぜ」
といった会話が廊下から聞こえる。
お姉ちゃんの様子は正直気になるが、入学したての1年生としては他学年のエリアに行きづらい。
しょうがない、ムカつくけど雄人をつれて見に行ってみるかと思った時のことである。
騒がしかった廊下は静かになり、みんな1人の人物に釘付けになっていた。
お姉ちゃんは教室にいる俺を見つけるとホッとしたようにして受け取るのを忘れていたお弁当を持ってきてくれた。
人見知りの性格からか、みんなの注目のもとお姉ちゃんは声をかけれないでいたので、俺は席を立ちお姉ちゃんの元へと向かった。
「忘れてたよ。ありがとう」
「うん、…大丈夫だよ」
お弁当を受け取って自分の席に戻ろうとすると後ろから、制服の裾を掴まれた。掴んでいるのはもちろんお姉ちゃんの手である。
「…一緒に食べよ…?」
お姉ちゃんがそう言うと、その様子を見ていた周りの人は倒れ悶え、男子達は恨めしそうに俺を睨んでいた。
「なんで、あいつなんだ。」
という声も聞こえた。
そして俺は後ろから冷ややかな視線を感じ、おそるおそる後ろを向くと笑顔の前原と目があった。
なぜだろうか。すごい怖かった。
俺はお姉ちゃんの手を引いて逃げるように中庭まで行くと、空いているベンチへと腰掛けた。
「どう?学校は上手くやれそう?」
「うん…。友達できたよ…」
お姉ちゃんはとても嬉しそうだった。
「良かったね。お昼も一緒に食べてきたら良かったのに」
「その子お昼は部活の人と食べるらしいから…」
そう言って
「それにお姉ちゃんは緑斗君ともっと仲良くなりたいから」
と付け加えた。
「迷惑だった?」と不安げに聞いてくるお姉ちゃんに、「俺もお姉ちゃんと食べたかった」と言うと顔を桃に染めて「良かった。」と言っていた。
余談だが、お昼はいつも雄人と食べている。雄人なのでスルーしておっけーである。
お弁当を食べながらお姉ちゃんとはいろんな話をした。国語も数学も得意なのだが、英語が苦手らしい。
「放課後どうする?部活とか見るの?」
俺がそういうとお姉ちゃんは少し暗い顔をした。
「ううん、部活には入らないよ。緑斗君と一緒に過ごしたいから…でも今日は一緒に帰れない」
と言った。
「何か用事?」
「ううん。放課後…学校で人と会わなきゃいけないの」
「それくらいなら待つよ?」
「ううん、6人もいるから先に帰ってて…」
寂しそうな姉を待つことを決意した。
その後、話題を変え少し話したあと俺とお姉ちゃんはそれぞれの教室へと帰った。
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今日は火曜なので授業は全学年7限までである。木曜と火曜は普段より1限多い憂鬱な日だ。
放課後、誰よりも早く教室を出て、校門でお姉ちゃんを待っていた。
教室を出てから1時間経った頃、お姉ちゃんが元気なくとぼとぼとやってきた。
「なんでいるの?」
「お姉ちゃんとどうしても一緒に帰りたくて」
そういうとお姉ちゃんは少し頬を染めて、「ありがとう」と言った。
「何があったの?」
元気のない姉が心配になって聞くと、お姉ちゃんは
「告白…された…」
といった。
「え、まさか6人全員?」
コクッと頷いた。
「お姉ちゃんすごい可愛いから仕方ないね」
ブンブンと首を振った。
あまり触れられたくないみたいなので話を変え家まで帰った。
家につくとお姉ちゃんは、怖かったと言って俺の背中にしがみついてきた。
「お姉ちゃんは俺が守るから」
という自分でも臭いなと思うセリフを言うと、お姉ちゃんは「うんっ」と頷いた。
「お姉ちゃんも…緑斗君を守るからね…」
そういうと顔を真っ赤にして自分の部屋へと戻って行った。
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