GW編【姉とのデート③】
ちょっといつもより文字数多めです!
カラオケを出た俺達は駅の全体の案内板を見つつ、次やることを探していた。
「彩雪姉ちゃんは買いたいものとかある?」
俺が尋ねると彩雪姉ちゃんは首を横に振った。
この大きな駅には衣服、雑貨、飲食物、はたまた超高級品など種類も多く、とても数えきれないほどのお店がある。
だが、娯楽となると駅にあるものは、映画館、世界の〇〇美術展、ゲームセンターくらいだ。この駅から少し離れたところにたくさんの娯楽施設はあるが、軽くゆったり遊ぶのには向いていない。
「映画は?」
「りょーくん昨日見たんでしょ?それに牛タン食べに行く時チラッと見たけど、ものすごい人の数だったよ?」
「そっかー、じゃあゲームセンターとかどう?彩雪姉ちゃんにあうかわからないけど」
「うん、それでいいよ!」
予定が決まった俺達は、さっそくゲームセンターへとやってきた。
ゲームセンターはかなり広く、クレーンゲームなど商品をとるためのゲームがあるエリア、プリクラ機が並んだエリア、音ゲーやカードゲームや車を運転するゲームが設置されているエリアの大きく3つのゾーンに別れていた。
特にこのゲームをしにきた!という目的がない俺達はとりあえず適当にぷらーっと見て回ることにした。
「りょーくん見て見て!あの子すごい上手いよ!」
彩雪姉ちゃんが楽しそうに俺の肩を叩く。
見るとそこには丸い画面で音ゲーをしている中学生くらいの女の子がいた。
「すごいなぁ、まだちっさくて可愛いなぁ、小学校高学年くらいかな?中学生くらいかな?」
「どうかな?見た目は彩雪姉ちゃんと同じ年齢に見えるんだけどね」
「りょーくん、今なんて言ったのかな?」
軽く流して歩いていると彩雪姉ちゃんは笑顔で俺の服の袖を引っ張る。笑顔だが目が笑っていなかった。
「いやぁ、彩雪姉ちゃんの方が可愛いなぁと…」
「どういう意味のかわいい?」
「そ、それはもちろん、美しいという意味で…」
「そっかそっか、お姉ちゃんはりょーくんを信じてるよ?」
そういいつつジト目を向けてくる彩雪姉ちゃんに、背中に冷たい汗をながした俺は、話を変えようと近くにあったクレーンゲームを指さす。
「あ、お姉ちゃん!あの熊さん可愛いよ」
彩雪姉ちゃんは、俺が指さした方向を見ると目を輝かせ、トテトテとそっちに駆けていった。そこには熊のぬいぐるみがあり、大きさでいうと平均的な枕くらいのものだった。
「りょーくん、ほんとだよ!かわいいよ!この熊さん」
お姉ちゃんが珍しく興奮しているようだ。
「なんなら、俺が取ってあげるよ!」
「いいの?やり方分からないから見てるね!」
「任してて」
ーー
結果、1000円使ったけど取れませんでした。
だって、クレーンゲームとか今までにそんなにしたことないじゃん?素人にはこんな大きいの無理じゃん?と心の中で言い訳をしていた。
「ねぇ、りょーくんお姉ちゃんも1回やってみていい?」
「うん、いいよ。」と俺は100円玉をお姉ちゃんに渡す。
「あのタグにひっかけたらいいんじゃないかな」
彩雪姉ちゃんはそう言ってボタンを押し操作をし始める。
彩雪姉ちゃんの言うタグの輪っかはかなり小さくアームの先が少しでもズレると入るとは思えない。針の穴を通すより難しいものだった。
増しては、初めてクレーンゲームをプレイするお姉ちゃんには難しすぎるものだ。できるわけが無い。とフラグめいたことを考えていた。
ー
「りょーくん見て!取れたよ!」
なんと彩雪姉ちゃんは寸分たがわずタグの輪っかにアームをひっかけて、1回で取ってしまった。
俺がなんかすごくかっこわるくて恥ずかしがっていると、彩雪姉ちゃんは背中をとんとんと叩いて
「りょーくんがぬいぐるみをずらしてくれたから、引っ掛けることができたんだよ!」
そう言って俺の頭を撫でた。彩雪姉ちゃんマジ天使。
心の中でそう思ったのだった。
その後も適当に色んなゲームを見たりプレイしたり楽しんでるととあるゾーンにきた。
「りょーくん、あの箱なに?女子高生がいっぱいいるけど」
「あぁ、あれはプリクラって言って遊んだ記念とかに写真をとる機械だよ。」
お姉ちゃんは一応女子高生なのにプリ機を知らなかったらしい。今の高校生に知らないものはいないと思っていた。
そんな俺も実際に使ったことがあるのは1回だけだ。中学校3年生の頃にクラスで体育祭のお疲れ会をした時である。クラスの女子がみんなで撮ろうよと言ってとったのた。
「そうなの?お姉ちゃん、りょーくんと一緒に撮ってみたいな」
「う、うん、いいよ」
「やった」
女の子と2人きりのプリクラはリア充みたいだなと思いいきなり緊張してきた。
適当にプリ機に入ると機械の音声による指示に従って俺とお姉ちゃんは写真をとる。
『最後はお好きなポーズでー!』
と機械のアナウンスが流れると彩雪姉ちゃんは俺の腕に腕を絡ませて肩に頭をのせた。
突然の彩雪姉ちゃんの密着に思わずドキリとした。
デコレーションに興味のない俺達は、適当に日付けと(姉)、(弟)など書くとすぐにデコレーションする場所を出た。
「見て見て!りょーくんの目がくりっとしてて可愛い」
彩雪姉ちゃんは完成したプリクラを見て楽しそうに言う。
備え付けのハサミで2人でわけると、彩雪姉ちゃんは最後に撮った1枚を手帳型スマートフォンのケースの内側に貼った。
「これでいつでもりょーくん見れるね!大事にするね!」
と顔を赤くして笑顔を向けた。
俺は照れくさくなって、「そうだね」としか言えなかったが俺も顔を赤くなっているのを見た彩雪姉ちゃんはニコニコして手を繋いできた。
お姉ちゃんと手を繋いだまま、駅まで行った。
「あら?美咲くんじゃない?」
駅のホームで電車を待っていると突然後ろから声をかけられた。
「あ、藤崎生徒会長」
「今は生徒会長ではないわ、ただの生徒会庶務よ。」
声を掛けてきたのは制服姿の藤崎涼白。俺と同じ中学生出身で生徒会長をしていた。透き通るようなセミロングの白い髪に白い肌、クールな印象を感じる整った容姿にモデルばりのスタイル。真面目で頭も良くきれる。当然男子には人気で、早くも1年生では前原派と藤崎派の派閥が存在している程だ。ちなみに2年生を中心とした美咲(姉)派もあるらしい。
香織がみんなのアイドルだとすると、涼白は高嶺の花と言う感じだ。
クラスは俺の隣のクラスだ。
「ところで、美咲くん。可愛らしいお嬢さんの手を握って誘拐かしら?」
突然スマホを開いた藤崎はそう尋ねた
「待って!110って入力しないで!お姉ちゃんだよお姉ちゃん!父さんが再婚したの」
「そう、知り合いが犯罪者じゃなくて良かったわ」
「当たり前だ!」
藤崎は「はいはい」と軽く流すと彩雪姉ちゃんを見た。
「美咲彩雪先輩ですね、私は藤崎涼白といいます。そこにいる美咲くんの友達…友達?って程でもないわね、元クラスメイトです。よろしくお願いしますね。」
「は、はい…よろしく…ね」
最近は仲良すぎて忘れていたが、彩雪姉ちゃんは人見知りだった。
「2年間同じクラスだったのに何気にひどくね…」
「知らないわ。」
「てか、お姉ちゃんの名前知ってんじゃん。」
「そんなこと生徒会に所属してるものとして当然よ。」
「じゃあ、最初の誘拐疑惑なんだよ!」
藤崎は俺のツッコミをスルーして、「電車が来たから帰るわ」と言って去って行った。
「りょーくん、楽しそうだった…」
藤崎が去るとジト目で彩雪姉ちゃんが見てくる。
「まぁ、面白いやつだからね」
「撫でて…」
「え?」
「お姉ちゃんの頭を撫でて」
「はい」
甘えてくる彩雪姉ちゃんを存分に甘やかし、俺達のお出かけは終わった。
彩雪姉ちゃんの機嫌は夕飯の努努鶏に俺が感動していると、謎のドヤ顔をして良くなった。
今回も大活躍のハイブリッドお姉ちゃん。そして、新キャラの登場ですが、活躍するのはまだだいぶ先になるかも知れません。
レビューのお礼
〇ゲームセンターの店員(monaka)さんに袋をもらいにきた彩雪〇
「あの…ふくろ1枚もらえませんか?」
クマのぬいぐるみを両手で抱えたかわいらしい黒髪の少女がやってきた。
monakaさん 「はいどうぞ!」
「あの…ありがとうございます…」
彩雪は笑顔で小さくおじぎをした。