義姉との対面
幼くて人見知りだけど、弟のために張り切って時に空回りする可愛いお姉ちゃんが書きたくて書き始めました。読んでいただけると嬉しいです。
「緑斗話がある」
中学を卒業し、いよいよ華の高校生活が始まる前の春休みのこと。
俺、美咲緑斗はある日の夕食後に父から呼び出された。
母は生まれつき体が弱く、俺を産むと同時になくなってしまった。それからは、父が男手ひとつで俺を育ててくれた。いわゆる父子家庭である。
父の去年からの仕事は、父の勤める大会社の製品を自国より安価に材料または安い人件費で生産するための工場を海外に作ることを目的とした下見、交渉、計画の進行等であり、ほとんど日本にいることがない。
だから、父が家にいる間はなるべく一緒に過ごすことにしている。
「どうしたの?父さん」
父と話すことはよくあるのだが、いつもと違う覚悟を決めたような父に息を飲んで応える。
「緑斗、1人で寂しくないか?」
「うん、大丈夫。夜は友達とゲームとかしてるしね」
「そうか……」
「どうしたの?あらたまって」
「父さん、再婚しようと思うんだ。」
「そうなの?いいじゃん」
「え?」
俺がすぐに肯定したことに戸惑っている様子だった。
「父さんが昔からいろいろ我慢して弱音を吐かず1人で一生懸命働いてるのは知ってる。その父さんの心の支えになる父さんが選んだ人なら、俺は歓迎する。」
「そっか。ありがとな。」
「それで?相手は?」
「あぁ、さゆりさんと言って職場の後輩でな、交通事故で亡くなった姉の娘を養子として引き取って女手1人で育ててる人なんだ。」
「優しそうな人だね。」
「あぁ、お前のことを話すと是非会いたいと言っていた。」
「そうなんだ。ん?娘さん?」
娘ということは、俺の姉か妹になるということだ。当然気になる。
「彩雪ちゃんっていう、お前の1つ上の姉になるな。」
「姉か〜。」
一人っ子だったため、昔から兄弟には憧れていた。兄弟のいる友達は1人の方がその分愛情も貰えるし、うざったい兄弟がいないからいいとよく言っていたが、俺はそうは思えなかった。正直1人は寂しかったのだ。
「あぁ、とても美人らしいぞ?良かったな可愛い姉ができて。」
父が楽しそうに言う。
姉ということは女性である。うまくやれるだろうか?と内心では期待と緊張をしていた。
失礼なことするんじゃないぞ?、するか!、と父と軽く談笑したあと解散した。
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4月に入ってしばらく経った。高校生活は始まって、初めこそ緊張していたが、段々と慣れてきたところである。クラスでの立ち位置は物語ではクラスメイトAって感じだ。比較的に前に出るコミュ力の高い集団でもなく、あまり人と関わらない人でもない。友達はそこそこいて女子とも普通に話せる。
そんな俺は今、とても緊張していた。なぜなら、今日から俺に姉ができるのだ。
父と新しい母は海外へ行き、まだ新しい母と対面できていないが、姉は今日から一緒に住むことになったのだ。
「お前、今日から姉ちゃん出来るんだってな?俺にも紹介しろよ?」
話しかけてきたのは本多雄人。ゆうとと間違われがちだが、雄と書いて「たけ」と読む。お調子者である。中学からの腐れ縁で同じクラスになった。
「ええ、お前だけには紹介したくねえ。」
「おいこら緑斗!喧嘩売ってるなら買うぞ?」
「お前じゃ相手にならん。出直してこい。」
「なんだと〜!!」
そういうと雄人は俺の頭に拳でぐりぐりしてきた。
俺もやり返そうとした時
「こら本多くん!美咲くんを攻撃しない!」
と、活発な少女の声が聞こえた。
振り向くとそこには前原香織がいた。彼女はショートで地毛で髪が茶色く、色で表すとアッシュブラウンって感じだ。誰にでも明るく優しい。そのうえ、大変可愛い。いわゆる美少女である。そんな彼女は学校でも人気者だ。
その美貌に俺も雄人も一瞬見惚れるがすぐに再起動する。
「なんだ前原か、男同士のスキンシップに口出すんじゃねーよ」
と雄人
「なんだってなによ!暴力はダメだよ!」
「おかたいこった」
雄人が煽るので、前原はぷんすかしていた。
「女の子を煽るなよ雄人」
「なっ!お前、前原の味方につくのか!?」
「お前と学校のマドンナなら、美少女側につくだろ…」
「おまえ…おぼえてろよ!」
ちょうど授業のチャイムが鳴り、雄人は弱い悪役の捨て台詞みたいなものを吐いて自分の席に戻って行った。
前原は
「び、美少女…」
と頬を朱に染めて照れながら、自分の席である俺の前の席に座った。
なぜ、俺が学園のヒロインと仲良くなったかと言うと、理由は2つある。
1つ目は、入学式のことであった。道に迷っていた前原と一緒に入学式の会場へ行ったことだ。2つ目は、今の席である。初めての席替えで俺は窓側の一番後ろの席を勝ち取り、前の席がたまたま前原であった。
前原は人気者なので昼休みなどはいないが、席が前後になってから、休み時間話すような関係なっていた。2人仲良く話しているとクラスの男子からの目線はとても居心地が悪いのだが、前原と話すこと自体はとても楽しかった。
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ついに帰りのショートホームルームが終わり、放課後、友人への軽い別れの挨拶をして、俺は帰路についた。帰宅部である俺に放課後予定はない。
家に帰ると姉がいるらしい。緊張で胸が高鳴る。
父さんが言うには新しい姉はとても可愛いらしい。美人な義妹、義姉というのは等しく男子の憧れである。どんなタイプなのだろうか…。
そんなことを考えているうちに俺は家についた。
ドアを開けるのに鼓動が早くなる。
俺は深呼吸をし、ドアを開けて中に入った。
玄関には、普段はない女性用の靴が置いてあった。恐らく新しい姉は中にいるだろう。
おそるおそるリビングのドアを開けるとテレビの前のソファから離れていても綺麗だとわかる黒髪の持ち主の頭がちょこんと生えていた。
彼女はテレビの動物番組に夢中になっているのか、こちらに気づいていないようだった。
「もしかして、彩雪お姉さんですか?」
俺は声をかけてみた。
ビクッ…
彼女は擬音を付けるなら完全にビクッだな。という動きをして、ぜんまい式の人形のようにゆっくりとこちらを振り返った。
その顔を見て、俺はかなり驚いた。なぜなら確かにかなりの美少女である。前原とは違うタイプだが、美少女という項目では負けていない。まるで日本人形のような整った顔立ちに腰までのびた長い艶のある黒髪。見た目が幼くどちらかと言えば姉と言うより妹と言われた方がしっくりくる。
彼女は俺を見るとすぐにソファの背もたれに隠れ、すぐに顔だけひょこっとソファから出した。
「……よろしく…。」
新しい姉?は人見知りのようだった。
姉との出会いがメインなので友人、2人目のヒロイン前原香織ちゃんとのやりとりはまきました!次回はお姉ちゃんと仲良くしていきます。