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◆第7話◆「なんだかなぁ、リズが仲間になったみたい」


「ご、ごめん! もう終わったから、大丈夫?!」

「大丈夫じゃないのは、兄さんの頭だけどねー」


 口の中に詰め込んだ食糧を、モッサモッサとリスの頬張りつつリスティがよくわからない調子で茶化してくるが、構っていられない。


「───まったく……。お前は本当に出鱈目な奴だよ」


 重傷のリズを回復して見せたビィトの魔法を見て、呆れたとばかりに肩をすくめるジェイク。


 彼も随分回復して来たらしく、力ない様子ながらもポーションを口にしていた。


 だが、まだ疲労と飢餓が激しすぎて、固定物を食べる気力もないようだ。

 

 それはリズも同じだろう。


「───おい、もういいだろう。…………リズを連れてどこへでもいけ。いい加減、お前の顔を見ているのもウンザリだ」


 このッ!

 ジェイク───!


「こんな状態のまま置いていけるかよ! とにかく飯を食って、喧嘩できるくらい回復してから偉そうな口を聞けッつの!」


 ビィトも負けじと言い返す。

 なぜ、今までいい様に言われっぱなしだったのか、不思議なくらいだ。


「なんだと!」

「やるかぁ!?」


 再びバチバチと眼光を飛ばし合う二人を尻目に、失神から覚めたらしいリズがボンヤリと目を開く。


「…………あ───ここは?」


「リズ?!」


 慌ててリズに駆け寄ると、ビィトは彼女の肩を掴んでガックンガックン揺さぶりつつ、真っ正面から目を合わせる。

「大丈夫? どこか痛い所はない? ねぇってば」


 ガックン、ガックン!!


「あの、ビィ」

「止めんか!」


 ゴスン!! と錫杖をビィトの頭に突き刺すリスティ。


「───ッ~~~……!!」


 敵意を認識できなかったものだから、まともに頭頂部にクリティカルヒットした。


「な、なにするんだ!」

「こっちのセリフよ。ったく」


 ぼーっとした目で、自分の足を眺めるリズ。


「私……直って、あ───」


 フと上げた視線がジェイクと絡み合う。

 そして、目が合ったリズは、悲し気にその目を伏せた。


「ジェイク様──────……勝手な真似をして、申し訳ありません」

「───いい。礼を言わねばならんのは、俺の方だ……」


 ジェイクにしては殊勝な態度でリズを見つめる。


「あの、私───」

「……これからは別のパーティだな」


「ッ!!」


 リズが雷に打たれたように体を硬直させる。


「だが、今生の別れというわけでもない。そのうち縁があれば会えるさ」

「は、はい…………。お、お世話に、なり、ました」


 クスンとしゃくりあげ、三つ指をついて平伏するリズ。

 ジェイクは何でもないように緩く首を振って、リズの顔をあげさせる。


「まだ、ダンジョンから脱出できたわけじゃない。……あの連中を仕留めて、そして、失ったものを取り戻して、そこで初めてやり直せる───気をつけろよ。リズ」


「はい……。まだ、私は戦えます───いつでも、いつまでも……!」


 コクリと頷き返すジェイクを見て、リズはビィトに向き直る。


「ありがとうございますビィトさま。この身───今より全てあなたの物です。いかようにして頂いても構いません」


 ひとつの戦力としても、

 ひとりの女としても、

 ひとまつの糧としても……。


「いかようにも──────」


 意志の強い瞳で見つめられるも、ビィトとしては戸惑うしかない。


 いや、それよりなにより───。


「俺を何だと思ってるのよ?!」


 戦力はともかく、女とか糧とかもリズをそういう対象として見たことなんかないからね?!


「──……その、そう言った方が、あの……こ、好みなのかと……」


 ジッと、エミリィを見据えて、急にモジモジし出すリズ。


 …………あーうん。


「一回、きちんとお話ししようね」

「はい」


 はい、ちゃうわ!!


 絶対なんか勘違いしてるよね?!

 俺ぁ、別に君を買い取ってナニしようとも思ってないよ?!


 ほんとだよ!?


「お兄ちゃん最低」

「最低兄貴」


 黙れ、女子ーズ!!


 あぁぁあああ、もう!!

「こういう時は──────」



 決まってるだろ!!



「飯にするよッ!!!」


 ───もう!!!!

 皆、腹がすきすぎておかしくなってるんだ。

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