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第76話「なんてこった、床がもたない!!」

 ───うらぁぁあああああああああ!!!

 ───たりゃー!!!


 真っ向から撃ち合いをするビィトたちと、物量で押し切ろうとするオーガ達。


 オーガの数は続々と増え続け、───もはや、その数は100体では済まない!?


 それでも、真っ向から迎撃し、全身汗だくになりつつも、魔法を連射するビィト。

 彼の魔法が放つ冷気が周囲の空気やビィトの熱気とあわさり、水蒸気を発生させる。


 そして、エミリィもまた、必死でビィトをサポートする。


 氷塊でオーガの前衛かつ正面を凍らせ、奴らが凍った傍から狙撃し、砕いて倒していくビィトとエミリィ。


 だが、オーガどもも黙ってやられているはずもなく、凍った仲間を容赦なく蹴り抜いてきたかと思えば、盾にして突っ込んでこようとする連中もいる。


 パターン化している攻撃なら凌ぐことも出来そうだが、オーガどもも必死───そして、我武者羅だ。


「エミリィかわして!」

「お兄ちゃんも危ないよ!!」


 タイミングをずらされたり強行された場合、ビィト達はジリジリと後退せざるを得ない。


「もう、あとが……!!」

「スリングショットの弦が切れそう?!」


 ───ビィトたちも限界が近い。


 魔力に余裕はあれど、ビィトの体力がもつかどうか!

 エミリィだって、何度もスリングショットを発射して腕がパンパンに腫れ上がっている。


 だが、

 だが!! オーガの数は一向に減る様子が見えないッッ!!


 しかも、連中と来たら回廊が壊れるのもお構いなしに、仲間をぶち壊しながら近づいてきやがる───!


「くッ!! あと……どれだけ凌げば?! え、エミリィ! オーガの数わかる?!」

「ええ? えっと、えっとぉおお!……いっぱい!!」


 ───いっぱい、じゃわからん!!


「クソぉぉッ! 牙城のオーガが全部ここに集まっているんじゃないのか?」

「うー…………! わかんないよ!」


 エミリィとて集中できなければスキルを十全に発揮できないのだろう。

 ビィトだって段々魔法の着弾が怪しくなってきている。


 魔力は十分だが、体力───そして精神力がゴリゴリと削られていく。


 「氷塊」の連射で、周囲の気温は下がっているはずなのに、汗が止まらない。


 仲間の死体を量産しつつも、決して諦めることなく物量で押し切ろうとするオーガに、二人とも肝が冷える思いだ。


 しかも……。


 ガリッと音をたて、ビィトの足が回廊の穴に引っ掛かりそうになる。


「うお?! な、なんだ?」


 ───これは、ひょっとすると……!


「え、エミリィ?! 君の目から見て、この回廊……持つと思う?!」

「い、今それどころじゃ……!」


 バシュン! バシュン! と氷の大玉を連射するエミリィ。

 ビィトと違い、彼女はもう体力が持ちそうにない……!


 比較的頑丈に見えるエミリィも、奴隷時代の栄養不足が祟って、並みの冒険者か、それ以下の体力しかないのだ。


 それでも、まだ若いのでそこそこに体力は充実している。

 とは言え、連続した戦闘を長時間続けるのは不可能だろう。


 だが、休んでいる暇なんて───……。


 ビキッ───。


「あ、やっぱり!!」

 オーガが回廊を滅茶苦茶に攻撃し、あちこちバラバラだ。


 最初はビィト達周辺の損傷だったのだが、ビィト達が後退していくことで、損傷部分にオーガ達が体重をかけることになってしまった。


 それはすなわち……。


「エミリィ! す、すすすす、すぐに梁にロープを張って! い、今すぐ!!!」

「い、今ぁあ?!」


 ───今ッッ!!!


 ビィトの鬼気迫る様子にエミリィは慌ててロープに鉤を取り付けると、ヒュンヒュン回し始める。


 その間───てめぇらは、エミリィには近づかせない!!


 突然奇妙な行動をし始めたエミリィを見て、オーガどもは好機と見たのかエミリィを集中的に襲いはじめる───。


 が!!


 ───させるかぁ!!


 仲間の死体を盾にズシンズシンと突撃をかましてきた個体の足を狙って「氷塊」を連射ッ!

 転んだところで足がポッキリ……。

 絶叫をあげるオーガに走り寄ると、闇骨王の杖に「魔力刃」を展開し突き刺すと、オーガの前面に躍り出て「氷塊」を乱射しまくるッ!


「おらぁぁぁああああ!!」


 突然、正面から戦いを挑まれたためか、一瞬オーガの群れ全体が動揺して揺れ動くのを見たビィトは、

 彼は、これこそチャンスとばかりに、オーガの咆哮にも負けずに叫び返す!!


「かかってこいやぁぁぁあああ!!」


 グルォォオオオオオオオオオオオ!!


 やったるわぃ!!

 と、両者が負けじと叫び、大声で怒鳴り合う!


 ビリビリと、声だけで大振動した回廊だが──────……。


 来たッ!!


 ミシ……。

 ミシ、ミシミシミシ……!


「お兄ちゃん! こっちだよ!」

 いつの間にか梁にロープを張ったエミリィが梁の上に立ちビィトを誘導している。


 しかし、梁自体は頑丈なのだろうが、如何せん足場としては不安定。

 その上オーガどもが手を伸ばせば届く位置なのだ。


 おまけに──────。


(床がもう、もたないッ!!)


「え、エミリィ、慎重に進んで!」


 ええい、くそ!


 床も、抜けるならとっとと抜けてくれればいいものを!


 エミリィから狙いを逸らすために、オーガの前に躍り出たはいいけど、ビィトにそれ以上深い考えがあるわけではなかった。


 ズシン、ズシン! と足音も高くオーガがビィトを圧殺せんとする。

 そこに近距離で「氷塊」を撃ちまくるも、連中ときたら───損害なんてお構いなしだ!


「クッソぉぉお! 奴ら、なんて数だ!!」


 徐々に追い込まれていったビィト達だが、ふと後ろを見ればもう、回廊に先はない。


 その先の、薄暗い尖塔の入り口が見えていた。


 そして、正面といえば──────長い回廊の先、全てがオーガでギッシリ!!


 これじゃ、壊れてなくても回廊が持つわけがないッ!


 なんて連中だ……!


「───そんなに俺達が食いたいかッ?」

 だけどな───……。


「……悪いけど、腹ペコなのはお前らだけじゃねぇぞ!!」


 こうなったら自棄(やけ)だ!!


「エミリィ! ロープを俺にくれッ!」


 叫ぶビィトに向かって、エミリィが視界の端でワタワタとしつつも、意図を理解して、なんとか引っ張り上げようとロープを投げた。


 それを見越して、ビィトは魔法の連射を開始───。

 だけど、それはさっきまでとは様子が違うッ!!


「───腹ペコオーガさんよぉぉお!! これでも喰らえッ!」


 足止めに「氷塊」! 連射連射連射ぁぁぁああ!!


 かーらーのー!!!!




 「小爆破」だ!!!



 ───ドォン!!



 そして、連射、連射、連射───。

 連射連射連射連射連射……!


 連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射連射!!

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!



 牙城中に響きそうなくらいの爆発がオーガの足元に炸裂。


 そして、その鼻先には足止めとトドメを兼ねた「氷塊」を連射しまくる。


 爆発音を聞いたオーガの興奮が、最高潮に達し──────……!


「「「グルゥァァァアアアアアア!!」」」


 小うるさい爆発の音源である、ビィトを食らい殺さんと───……ズシン、ズシン、ズシィィン! と迫る!!


(くそ! まだかッ)


「お兄ちゃん、はい!!」


 梁の上から投げられたロープの輪を掴み腕に絡めると───!


 憤怒の表情で突っ込んでくるオーガに向かって、ビィトが最後通牒ッ!!





「おるぁぁぁぁああああ!!! 数で押しつぶせると思うなよぉぉぉおお!!」



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