第12話「なんてこった、水から上がらないと!」
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書籍、第六回なろうコン受賞
『拝啓、天国の姉さん…勇者になった姪が強すぎて──叔父さん…保護者とかそろそろ無理です。』二巻
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ズシン……。
「コイツ!」
ビィトを見下ろすゴーレムの手には巨岩が一つ。
それをグググググ……と持ち上げ、頭上に掲げると──。
ポイす!
と石を投げやがった!
しかもメッチャデカい!!
「こ、このぉぉお!!」
狭い溜め池にプカプカと浮いているビィトは良い的だろう。
その気になれば穴にピッタリと収まる石で蓋をされたらビィトは水牢攻めにあう!
幸いにも今の石くれはそこまで大きいわけじゃないが────。
小爆破────ズドォォン!
当たれば、ただではすまない……。
パラパラ、ポチャン……。
と石くれの空中爆破に成功したが、結構な大きさの石がむき出しの頭部にあたる。
焦りとともに、チクリとした痛みを感じていると、
「コイツら──!」
ゴーレムどもがワラワラと溜め池の縁に集まり始めた。そして、どいつもこいつも石を……!
そのうちにビィトの懸念していたように、何体かのゴーレムが巨大な石を共同で運んできやがった。
今までの鬱憤を晴らすかの如く嵩にかかって攻撃を始めたゴーレムたち。
「な、なめるなよ……!」
ビィトが剣士や武道家のような近接職ならここで詰んでいたかもしれない。
だが、ビィトは────ビィト・フォルグは魔術師。
下級魔法のみとはいえ、練度の高い魔術師だった。
「いいだろう…………。まとめて掛かって来い!」
水面に浮いたまま立ち泳ぎをすると、ビィトは右手に小爆破、左手に石礫を生成──。
「お前らに構ってる暇はないんだ!」
そうとも、姿は見えないがエミリィがピンチだ。
かなりの数のゴーレムに追われて、迎撃中だったらそう長くはもたないだろう。
ゴブリンと違って攫って行くなどと言うことはしない。ゴーレムはその場で人間をミンチにしてしまう。
「だから、時間が無いんだよ!」
ビィトはエミリィに待て! と言ってしまった。
律義のビィトが来るのを待っているかもしれない。本当ならこんな状況だ。一度身を隠すのが正解なのだが……!
「失せろぉぉぉお!!」
はぁぁぁぁぁぁあ────小爆破……からの石礫!
小爆破、石礫、小爆破、石礫、小爆破、石礫、小爆破石礫、小爆破石礫、爆破礫、爆破礫、爆礫、爆礫爆礫爆礫爆礫爆礫ばくはツブテ!!!
おらぁぁぉぁぉぉぁああああ!!
──ドォォォン、バキィイン!!
ド! ド! ド! ドキキキキィンン!
──乱射。
乱射。
力の続く限りの乱射。
目に見える限りの敵に乱射。
だが、ビィトの魔力は尽きず、敵は尽きる。
角度的に直接コアを狙えないものの、この近距離では外すはずもなく、まず小爆破で顔面を掘削し、弱点のコアを剥き出しに。
そこを狙撃して、一撃のもとに倒す。
倒せなくても、二撃、三撃と追撃してやれば良い!
複数でデカい石を運んでいたゴーレムは一体を集中射撃!
数発でコアを撃ち抜くと、そいつはグラリと倒れていく。
だがそれで終わりではない。
複数で支えていたがため、巨大な石くれの重さが残りのゴーレムを直撃──。
ミシミシミシッ…………。
「はは! ざまーみろ!」
ズドォォォオンン! と地響きのもと複数のゴーレムは巨岩に巻き込まれて潰れる。
死んではいないだろうが、すぐには起き上がれないに違いない。
まだまだ!!
次は────絨毯爆撃!!
「おらぁぁぁあああ!!」
粗方、目についたゴーレムは破壊してやった。
それでも、まだまだ沸いてきそうな気配を感じるので牽制として小爆破を溜め池の外にぶち込んおく。
ドドドン!! と連続した爆発音のあとにパラパラと小石が降ってくる。
やはり何体かはしつこく攻撃してくるようだ。
そもそも、ゴーレムは追撃を諦めて何処かへ行くという種類のモンスターではない。
ただ淡々と無機質に、人間をみつけると襲い掛かってくるので手に余る。
「くそ! しつこい!」
今もまた、ヒョコっと顔を出すゴーレムが一体。
そいつの鼻先に小爆破と石礫を叩き込んでやったが、破片が盛大に水面に降り注ぎ、泡立つ。
だが、それを最後にゴーレムの気配がやや間遠になった。
殲滅するほどではないはずだが……。
そうか!
爆破のスクロールに巻き込まれなかったゴーレムはそれほどではなく、かなりの数のゴーレムがドミノ倒しになりジタバタともがいているのだろう。
時間を置けば順繰りに起き上がってくるはずだが、今のところ少しは時間が稼げている。
──ならば、早く水からあがらねば!
そのままでは縁に手が届かないので、
「ぐぬぬんうぬぬ……!」
手足を突っ張って這いあがるビィト。
物凄く間抜けな格好だが本人はいたって真剣。
時間をかければゴーレムが戦列に復帰するのだ。
それでなくとも、エミリィの様子が気になって仕方がない。
すでに戦闘音は聴こえない。
もともとエミリィの武器は無音のスリングショットだが、それでも交戦していれば何らかの音がするはずだ。
しかし、周囲に満ちているのはゴーレムどもの蠢く音のみ。
「ぐ……もうちょい……」
ズリズリと蜘蛛のように手足を突っ張りながらなんとか溜め池から這い出す。
全身がずぶ濡れで、今にも滑って落ちそうだ。それでなくとも無茶苦茶体が重い。
身体強化を手足に
局所で掛けていてこれだ……!
「ぶは!」
ガッと、ようやく溜め池の縁を掴んだビィトは一気に体を引き寄せる。
そのまま懸垂の要領で体を持ち上げると、なんとか溜め池から脱出することに成功した。
しかし、それで終わりではない。
「ぐ!」
ズシン、ズシぃぃン!! 目の前にストーンゴーレムの中型種が立ちふさがる。
この辺で見かける小型のゴーレムよりも倍はあるであろう巨大さ──。
「どけぇ!」
両手に魔法を発動!
右手に小爆破────そして、左手に石礫!
まずは────爆破!!
ズドォォン!! からの────石礫!!
高速で発射された石礫が、小爆破でむき出しになったコアを撃ち砕く──。
「邪魔をするなあっぁあ!」
くそ! やっぱりエミリィがいない。
アコーディオン状に折り重なって倒れているゴーレムたち。その先の通路には確かにエミリィがいたはずだが見当たらない。
少し遠くの方にズシンズシンと足音を響かせてゴーレムがなにかを追っているようにも見えるが……。
それだけでは、エミリィが単独で逃げたと判断できない状況だ。
彼女が戦っていた場所にはいくつかのドロップ品が転がっているも、回収した形跡はない。
かなりの激戦だったのだろう……。
少なくとも10個ほどのドロップ品が確認できた。
「エミリィ……!」
死体がないなら無事だと思うが、ダンジョン深部で単独行動なんて自殺行為だ。
彼女なら息を潜めて敵をやり過すことも可能だと思うが、モンスターの中には探知に優れたものも多い。
人間の体臭、熱、息遣いに衣擦れ、そして、何らかの生体反応────そういったものを敏感に感知して襲ってくるのだ。
それはいくら盗賊として優れた才能をもったエミリィといえども完全には遮断できない。
とくに初見のダンジョンならその敵に対する予備知識もないはずだ。
もちろんそれはビィトとて同じ。
『石工の墓場』は未踏破の派生ダンジョンだ。
どこにボスがいるかもわからず、しかも規模すら不明。
『悪鬼の牙城』の近隣にあるダンジョンでゴーレムが沸く──という程度の予備知識しかなく、しかも、ほとんど人が訪れない場所だ。
だから、ビィトにもここの予備知識はない。
大雑把な地図と位置関係がわかるだけで、ほとんど未知のダンジョンと言ってもいいだろう。
僅かばかりの情報もあるにはあるが、その内容はといえば、モンスターとしては旨味の少ないゴーレムが大量に沸くというくらい……。
「エミリィ! どこにいるんだ、エミリィ!!」
空中で投げ捨てた荷物を大急ぎで回収すると、復帰し始めたゴーレムを魔法で蹴散らしつつビィトは一路エミリィが向かったであろう通路の先へ進む。
もっと、静かに行動しなければならないところだが、エミリィと合流するまでは仕方がない。
「エミリィぃぃぃぃい!!」
ビィトの声が冷え渡るダンジョンの通路に響いていた。




