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コキ使われて追放された元Sランクパーティのお荷物魔術師の成り上がり〜「器用貧乏」の冒険者、最強になる〜  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
第2章「なんて言うか、助けにいこうと思う」

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◆豹の槍10◆「なんでこんなことになってんだ!」

 ……ゲスどもがッ!


「────二人次第だ。……言っとくが、リズはもう長くないぞ」

 そうだ……あの怪我ではそう長く持つまい。


 リスティがいるので、回復させることも不可能ではないが……。


「リズ? ……あー、あの小さいほうのアサシンな。可愛いじゃねぇか。もう味見してんのか?」

「ふざけろッ……。──二人を引き渡せば、物資は返してくれるのか?」


 それを聞き届けるとリーダー格の男は肩をすくめる。


「そりゃー、おまえ。二人のサービス次第さ。……で、どうするんだ? 他にもまだお前は色々持ってるぜー、ひひひひ」


 ……この野郎。


 ジェイクとて馬鹿ではない。

 二人をコイツらに引き渡したとて、物資など渡す気はないだろう。


 だが、チャンスはできるかもしれない……。そう、チャンスが。

 なんせ、投げ渡せる品物とは違い。二人は人間だ。


 跳ね橋越しに、ポイ! と言うわけにもいかないだろう。


 それができるならとっくに対岸に渡って連中を切り伏せている。

 裏切り者で卑怯者に容赦などするものかッ!


 しかし、それができないがために、こうして延々を『肥溜め』に向かって話すような気分で、このクソ野郎どもとジェイクは交渉しているのだ。


 もっとも、それが実るとは彼も信じてはいなかったのだが……。


 そうとも……。

 もはや、信じてはいない。


 ジェイクは何も信用できない。

 出来なくなった……。


 たったの数日。

 そう────ほんの数日だというのに、物資不足のためジェイク達「豹の槍(パンターランツァ)」は『悪鬼の牙城』から先に進めなくなってしまった。


 腕っぷしがあっても、物資がなければどうしようもない。

 当然だ。

 人は飯も食えば、クソも垂れる。


 だがら、ダンジョン探索は難しいのだ。


 深ければ深いほど物資が必要になり、

 必要になればなるほど、物は多くなり行動は鈍くなる。


 だから、腕っぷしの立つ荷運び(ポーター)を雇ったのだが……。


 それが失敗だった。

 まさか、裏切られるとは──。


 最初から狙っていたのか、

 衝動的なものだったのか、

 それはジェイクにもわからない。


 だが、現実はこうだ。

 ほとんどすべての物資を「鉄の拳(アイアンフィスト)」にまかせて身軽な状態で進んできたというのに、ここでこの事態だ。


 彼らの身を護るのも探索成功の道だと思い、進行ルートの敵を排除しようと焦ったのがまずかった。


 悪鬼の牙城の門番である赤、青オーガを切り倒して、彼ら「鉄の拳(アイアンフィスト)」を迎え入れようとしたとき、目の前で跳ね橋が片側だけ上がっていったのを見たときは何事かと思った。


 だが、その直後────「鉄の拳(アイアンフィスト)」のリーダーは、荷物の所有権を主張し、ジェイクとそれらの交換交渉を迫ってきたというわけ。


 よりにもよってこの場所で……。


 ──いや、この場所だからか。


 せめて、もう少しダンジョン内の資源がある場所ならまだ何とかなったかもしれない。

 食べられる動植物や、探索に使える装備が入手できる区画もあるのだ。

 それに食用に適したモンスターも、いる場所にはいる。

 だが……。


 ここに生息するのはオーガのみ。


 食われるのはオーガではなく、むしろ人間だ。


 仕方なくジェイクは交渉に応じ、ギルドに預けている金以外にも、こうしたダンジョン内での交渉用にと、念のため持ち歩いている貴金属で手を打とうとした。


 SランクとAランクだ。

 

 本格的にもめ事や殺し合いに発展すれば、

 単純な力量だけでなくダンジョンの外に出てからの政治力もまるで違うのだ。

 ジェイクの力は、(性格は抜きにして)凄まじいものがある。

 とくにダンジョン都市では、冒険者の力量がモノを言う世界。Sランクは伊達ではない。


 それらを勘案すると、彼等が正面切って争うとはジェイクには思えなかった……。

 ちょっとゴネて賃金をせびる程度と思っていたのだ。


 だが、それが誤りだったらしい。


 貴金属、マジックアイテム等を渡しても、彼らは一切物資を引き渡さなかった。

 それどころか再三ジェイクの持ち物を要求し────今は彼のパーティメンバーさえ寄越せと言う。


 間の悪いことに、跳ね橋が奪われた時にリズが反撃にでようとした。


 遠距離攻撃も跳躍力も彼女が一番上だ。


 それは成功するかに思われたが、……反撃を見越していた「鉄の拳(アイアンフィスト)」に全力で迎撃され彼女は地底湖に落ちた。


 最初から皆殺しにするつもりで彼女が攻撃していれば、今──そこに骸をさらし、

 あるいは後始末にと、地底湖に落とされアリゲーターフィッシュに食い殺されているのは「鉄の拳(アイアンフィスト)」だっただろう。


 だが、リズは『殲滅』ではなく、『制圧』を選んでしまった。


 ジェイクが荷運び(ポーター)をここで失うのは得策ではないと判断したためだ。


 結果、中途半端な反撃は撃退され────地底湖に落ちたリズはアリゲーターフィッシュに片足を食いちぎられかけて……、重傷を負った。


 地下のモンスター魚の奴は……毒まで持っていたらしく、千切れかけた足を繋ぎ解毒するにはリスティをもってしてもかなりの魔力を消耗することが予想された。


 それは不可能ではなかったが……。今リスティが魔力を失ってしまってはそれを回復する手段がほとんどないのだ。

 ポーションも医療品も……、魔力補助のマジックアイテムも、「鉄の拳(アイアンフィスト)」が奪ってしまった。


 辛うじてあったのはリズが所持していた小型の背嚢のみ。

 用心深い彼女のお陰で、即飢えることはなかったが、もとより予備の予備。

 

 中にあったのは一人分の保存食が数日分と簡単な医薬品のみ。そして、『虫の知らせ』のマジックアイテムがあった。


 ジェイクが嫌って、捨て去ろうとした……ビィトのお節介の一品(ひとしな)だ。

 かつて、ジェイク達がダンジョンにトライし始めたときに、あのアホが高い金をだして設置した緊急連絡用のマジックアイテム……。


 まさか、これを使うことになるとは思いもしなかったが。

 そのことをジェイクは苦々しく思う。


 だが、これが最後の頼みの綱でもあった。


 一か八か……『悪鬼の牙城』を抜け、物資や資源の補充できる区画に向かう手もあったが、あまりにもリスキー過ぎる。


 リズが負傷しているのも非常に痛手だった。


 結局、初期の交渉は決裂し──(もっとも交渉する気は初めからなかった気もするが……)絞り取られただけで終わり、

 現状、ジェイク達は僅かな物資で食いつないでいるのみだった。


 そして、今──。


「わかった……二人に相談してみよう」

「お!? 本当か────……ひひひ。あ、」


 そうだ。最後のチャンスかもしれない。

 負傷しているとは言え、リズも──そして、戦力的には決して強いわけではないが、リスティもS級の冒険者だ。


 A級ごとき冒険者に後れをとることはない。

 そして、ジェイクがその場にいれば、あんな連中数秒で殲滅できる。

 そして、それをしてやる──。


「──言うの忘れてたけどよ、その『刀』も女と一緒に渡すんだぜ? もちろん、女どもの武装はなし。手足は縛った状態で──だ。いいな?」


 ぐ……。


「跳ね橋の先端に女を縛っておく。そこにお前の刀も置くんだ。で──おまえは扉の中に入って一度閉めろ。そしたらこっちの跳ね橋を降ろしてやるよ。それで物資と交換だ────どうだ? ん?」


 ニチャァ……と笑うリーダー格の男。


 ジェイクをして、そんな条件を飲めるはずがなかった。

 ──やり方次第では一気に制圧することも可能だが、パーティメンバーを危険にさらして、かつ自身の愛刀をも預けるという条件……。


 これでは上手く交渉が成立しても、丸腰でこのダンジョンに放置されるだけだ。


 ましてや制圧などできるだろうか?


 疲労の激しい体で扉を押し開けて、猛然と迫り、刀を奪い取って斬りかかる…………。


 ダメだ。


 リスクが高すぎる。そもそも、連中はジェイクがこの条件に乗るなどとは考えていないのだろう。

 だから端から無理な要求を突きつけるのだ。


「く…………」

「ん~~~? なんか言ったか?」


 ダメだ……!

 何とかしなければ……。


「──わ、わかった検討する」

「へへへ。ちゃ~んと可愛がってやるから安心しな。それでお前は気楽に一人ダンジョンに挑めるんだ、感謝して欲しいね」


 ひゃははははははははははは!


 ひとしきり笑うと、あとはもう用はないとばかりに焚火に戻りノンビリと酒盛りを始めた「鉄の拳(アイアンフィスト)」達。

 ギリギリと歯ぎしりをするジェイクのことなど、もう見てもいなかった。


 こっちは『悪鬼の牙城』でオーガに囲まれ食料難にあえいでいるというのに……。

 むこうは比較的安全な土地でノンビリと酒盛りに興じている。


 あまりの格差に疲労の激しい頭がクラクラとしてきた。


 ──何でこんなことになっているんだ……。


「クソッ」


 苛立ちを隠せぬまま、連中の耳障りな声を聞くに至りジェイクは耐え切れなくなり城内に戻った──。





 この先に未来などないというのに……。





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