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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
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■■2章-狂人は褥をむさぼり、獣を沈める-■■①

直接的な描写は極力回避したつもりではありますが、

とても嫌な内容になります。ご気分が優れない思いをさせてしまうかもしれないので、

この■■2章-狂人は褥をむさぼり、獣を沈める-■■①、

次に更新予定の②に関しては飛ばして頂いても、

次々回の前書きで内容を抜粋した物を掲載致しますので、

そちらをご覧ください。

■■2章-狂人は褥をむさぼり、獣を沈める-■■


白亜の王城を覆う様に、扇状に広がる区画、貴族街。

辺境都市ハンニバルを除き、他の都市や街にもそれは存在する。

当然、王都リクスパスタクの貴族街は国内最大の規模であり、

各々の権力と財力を見せつけるかの如く、豪奢で華美な館が立ち並んでいる。


一見華やかなこの区画には、王都の民とは言え足を踏み入れる事を嫌う。

民も分かっているのだ。

この貴族街こそが王都に、巣食う魑魅魍魎達が館の中で激しく蠢きながらも、

静かに獲物が掛かるのを喜色を浮かべて待っている事を。


強かで狡猾な獣達は、己の欲望と言う名の獣を、

満たすためであれば手段は問わない。

高貴な貴族然としたその腹の底には、黒く滾る邪な獣が垂涎して猛っている。


そして、この貴族街に潜む貴族の皮をかぶった獣達こそが、

狂王マサルが、自らの手で根こそぎ取り除こうとしている病巣である。


狂える王の逆鱗に触れた事など気付かない、

愚かな獣は今日も己を満たすために、狂宴に明け暮れる。


貴族街の少しはずれた一画に、その館は存在する。

通称、"隷属の館"。

己の身の内に醜い獣を飼う、狂える貴族の持つ別宅。


広大な庭は屋敷の周囲を除いて、

整備される事なく木々や草花が鬱蒼と茂り。

物々しい警備がなされている強固な門を抜けると、

本館までの4頭立ての馬車が2台なんとか通れる道が伸びている。


貴族街の中でも異色のこの不気味な館は、王都の民の中でも有名で、

昼夜問わず、森の様に生い茂る木々の向こうに見える館から、

少女のものと思われる悲鳴や嬌声が延々と響き渡っている事で知られている。

館の主と同好の者を除き、当然貴族の中でも気味悪がられていた。


そんな館の主人である"パブタス・ナナスタト"伯爵は、

辺境都市ハンニバルから北西、王都リクスパスタクから西に位置する。

"商業都市ナーノルッタ"を治めている。


ナーノルッタは2都市を繋ぐ街道沿いに存在しているため、

両都市を往来する商人や冒険者たちで日々たくさんの人が訪れる。

またハンニバル周辺の魔境を通らずとも、ハンニバル産の素材等を手に入れる事が出来るため王国中の商人が(こぞ)って訪れる事から"商業都市"と呼ばれている。


そんな大都市を預かるパブタス伯爵が、

極度の少女趣味(ロリコン)だと言う事は貴族達の中では有名な話で、

その財力に物を言わせてグラウス大陸の各地から、蒐集した性奴隷達は、

同好の貴族達には大変評判が良く、それを目的に取り入ろうとする者も多い。


だが、一部の伯爵の知人たちは彼の蒐集品である多種多様な、

種族の奴隷達を"自慢の性奴隷"と伯爵は口にするが、

その美しく飾り立てられ、酒宴を彩る蕾達が"全員"生娘なのを知っている。

なぜ"性奴隷なのか?"と、ある貴族が問うた時に"愛でるだけでいい"と、

口にしたと言う。実際、酒宴の時に給仕する奴隷達は客のために、春を散らせる事はあってもとても大切にされていると口々に言う。

悪い噂だけを聞いて初めて宴に招かれた貴族たちは、

金に糸目をつけない酒や食事、そして蕾たちとの淫靡な夜を振舞われると、

伯爵が実際は少女趣味(ロリコン)では無く、王城内の派閥形成のための手段として、

そう振舞っているのではないかと噂する。


だが、そんな事は"当然ない"。

パブタス・ナナスタトが、己が身に飼う獣の本質が少女趣味(ロリコン)ではないだけだ。

昼夜問わず弱者を貪る狂気は確かにこの館には存在する。


陰惨に狂気と鼻につく独特の生臭さが満ちたそんな館の一室。

だらしのない脂肪だらけの身体をぶるぶると揺らし、

荒い呼吸を繰り返すパブタスの姿があった。


「…はぁ…はぁ…っっ!! あ゛っは゛っぁ゛!!………。」


"豚人(オーク)"の様なパブタスは身体を小さく痙攣させる。

組み敷いていた"玩具"を一瞥し、脂肪を揺らせて立ち上がり辺りを見回す。

広いベッドの上には、狂宴の贄となった玩具が1っ増えその数は6っ。

心が砕けてしまった少女達は、うつろな目で虚空を見つめていた。


「ぶふふふっ、まだまだ儂も現役じゃな6度果てても喰い足りん。

 …おいっ、誰ぞおらぬかっ!」


己の腐った肉の色をした芯が、仄暗い色をした欲望を、

どくどくと滾らせている(さま)を満足気な笑みを浮かべて

己が獣の飢えを満たすため、パブタスは家人を呼び付ける。


――トントン。


「入れ。」


狂宴会場の主人より許可を得て、扉から入室した執事は、

一度ベッドに視線を向け、すっかり壊されてしまった玩具達を一瞥して、

眉根を歪ませ小さく嘆息した。


「……些か、最近になってやけに頻度が高いように思われますが?」

「ぶふふ、そう嫌な顔を見せなくてもよかろう。

 なぁに大事が差し迫っているからのぉ、

 年甲斐もなく滾ってしまって仕方がないのじゃ。」

「大事…ですか。」


何が大事だと、執事は胸の内で主人に唾を吐く。

執事はこの主人に父親の代から仕えている古株ではあるが、

変わり果てた眼前の狂人には、ほとほと愛想が尽きていた。


辺境都市ハンニバルの王都の中間に位置する商業都市ナーノルッタ。

経済効果の高さはオーカスタン王国内でも五指には数えられる大都市である。


そんなナーノルッタを長きに渡り治めてきたパブタスは以前はこの様な、

狂宴に身をやつす様な狂人ではなかった。

王国への忠義に厚く、先代である慈王デオスタから覚えが良かった。

そして、何よりも民から愛される人格者であった。

それが、今ではこの有り様…。

草場の影から、側に仕えるお前が至らないからだと、

亡き父の叱責すら聞こえるような気がして滅入る。


彼は完全狂ってしまった主人に、

そんな心の内を悟られぬ様に、声音だけは柔らかく取り繕い問うた。


「それで、どの様なご用件でございましょうか。」

「…足りんのだよ、"ザフラマ"。喰うても喰うても満たされん。

 出しても出してもじゃ…。

 だからのぉ、あと2人…いや3人ほど、用意してくれないか。」

「……お止しても無駄なようですね。

 かしこまりました、ご用意致します。少々お待ち下さい。」


恭しく礼をして扉に歩み寄る。

振り返って再度、退室のために礼をするザフラマは、

再びちらりと壊れた玩具たちを見やった。


ショックで心の臓が停止しているであろう玩具が2体。

花を散らした後も執拗に、続けられた行為の過酷さで心が壊れたのが4体。


主人は、狂宴に招いた奴隷に二度と手をつける事はない。

だが、どちらにしても狂宴の後に正気に戻る事が無ければ廃棄せざるを得ない。


潤沢とは言え、些か一回きりの玩具を用意するための額としては、

馬鹿げた浪費には違いない。

どうにか狂宴の後、屋敷仕事の1つでもしてもらえる様な、

労働力になってもらえないだろうかと冷めた目で、

それらを見てる自分に気づき、自嘲する。


「なるべく急げ。」


繁々と頭を下げ退室するザフラマは背後から、そう言葉を投げかけられ、

忌々しいと思いつつも己を殺し、再度振り返り頭を深く下げた。

顔をあげ扉を丁寧に閉める際、ギリギリ視界に捉えた何も身につけず、

ただ滾る汚物とぎらついた主人の貌が、うすら寒いものを感じさせた。


退室後、足早に"特別な"奴隷たちが集められている大部屋に足を向けた。


亡き父の遺言とは言え、狂人に仕え続ける事に心が蝕まれる。


「恨みますよ、父上。」


思わずザフラマはそう零した。


「…ザフラマさん?顔色が優れませんが、どうなされました?」


廊下ですれ違ったメイドの1人に声をかけられ、

ザフラマは我に返る。


「いや、どうと言う事はない。旦那様が少し…な。」

「…ああ、またですか。」


ザフラマの言葉に、メイドの顔が暗くなる。

この屋敷で働く者たちは皆、自分たちの主であるパブタスが、

後ろ暗い性癖を持っている事に薄々は感づいている。


だが、それによって年端もいかない少女の命や心が、

朽ちていっているとまでは、知らない。


家人達には執事筆頭であるザフラマ自身が、

「犠牲になった者は解放されている。」と説明しているからだ。

あくまで家人達の中では、

主人の過剰な寵愛を受けた後に奴隷から解放され、

館から去って自由を手に入れたものだと認識されている。


だから、彼女の様に女性である家人達は、

いつか自分たちもそう言う憂き目に合うのではないかと、

多かれ少なかれ不安を抱いている者も少なくない。


そんな彼女の肩を軽く手を置き、努めて優しい声音で告げる。


「君の様な"大人の女性"は、大丈夫だ。」


ザフラマの言葉を受けて、ほんの少しだけ安堵の表情を見せたメイドに、

軽く手を上げ、その場を去った。


あの狂人は噂通り、確かに成人の女性には全くもって興味を示さない。

どんな種族であっても10歳前後の少女にしか、

食指が伸びない事を、ザフラマは当然よく知っている。

そこまでならば、伯爵が少女趣味(ロリコン)だという噂は正しい。


だが本質はもっと別のところにある。


"奴隷部屋"の扉に辿り着くと、ザフラマは、一度深く息を吐き出した。

主人が壊れてしまってからは、彼の玩具となる"特別な奴隷"達と接する時は、

覚悟を決めて自身の心を殺すように努めていた。

そうしなければ彼自身、とうに壊れてしまっていただろう。


「…入るぞ。」


扉の向こうからの許可を待つことなく、そう短く口にして扉を開く。


全員同じ服を着せられ、同じ髪型をさせられた50名ほどの、

多様な種族の奴隷たちが、ザフラマの来訪の意味を理解し怯えている。


その奴隷達を目にして、ザフラマは心の底から辟易とする。

服装や髪形だけではなく全員がよく"似ている"のだ。



「貴様と、貴様…それから貴様。

 来い、主様がお呼びだ。」


指された玩具たちは、一層その顔色を悪くするものの、

奴隷紋の力によって抵抗する事すら出来ずにザフラマの前に並ぶ。


「「「"お父様"の下へ向かう支度を致します。」」」


特別な奴隷としてここに買われた彼女達は、最低でも三カ月は徹底的に、

パブタスの娘"ネフィラナ"の言葉使いや、仕草を"教え込まれる"。


そして、大体3カ月を経過する頃には狂宴に招かれ壊される。


ネフィラナの模造品である玩具らは、

繁々と頭を下げて身を清め支度を整えるために部屋から去って行く。


狂宴から逃げ出すために自害してでも逃げたいのだろうな。

真新しい玩具たちの背中を見つめ、ふとそんな事を考えてしまった、

ザフラマは(かぶり)を振り、改めて感情を捨て去る。


(お嬢様が無事であればいい…。今はそれだけを考えろザフラマ。)


歯を食いしばり、今自分が本当に守らなければいけない存在を想う。

今は亡き父と、そして狂える主人の"正妻であった女性"のために、

ザフラマは、罪悪感に揺れる自分を叱咤する。


「奥様…必ずや、ネフィラナ様は不幸にはさせません。」


病に伏した後も、自分自身の事よりも領主である夫と、

その夫との間に授かった愛娘の幸せだけを願っていた彼女は、

死の間際、まだ青年だったザフラマにネフィラナを頼むと告げた。

だから、彼はその約束のためならば狂人に仕え続ける事を厭わない。


そして狂人が狂人になってしまった原因の一端もそこにある。


晩婚だった彼は、心の底から愛した正妻を病で亡くした。

あまりに呆気なく唐突に訪れた永遠の別れに彼は虚無感に苛まれた。


だが、彼には正妻が残してくれた、彼女と瓜二つの幼い愛娘がいた。


艶やかな明るいブラウンの毛を揺らし、

屈託の無い笑顔で彼女譲りの大きな瞳で彼を見つめる。


そんな愛娘をただただ見守り、幸せになってもらえるように生きようと、

彼は正妻を亡くした辛さから、立ちあがった。


そして、とある日…伯爵は己が内に飼う獣の存在を気づき絶望する。

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