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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
74/143

■■2章-ルイの属性、迷える師匠の願望-■■②

ルイ 属性ステータス■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

基本属性  有/無   評価

火属性   有適正   A-

水属性   有適正   C

風属性   有適正   B+

土属性   有適正   S+


基本上位  有/無   評価

聖属性   無適正   -

光属性   無適正   -

闇属性   無適正   -

焦炎属性  有適正   B-

氷結属性  有適正   C-

電撃属性  有適正   A

鉱石属性  有適正   S+


最上位(トップ・スタンダード)特殊属性(パティキュラー)…習熟度不足により不明。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「"基本属性(スタンダード)"と"基本上位(ハイ・スタンダード)"…。ごめんなさい分かりません。」

「知らないと言うことを自身で知る事も立派な成長に繋がる、

 なにも卑下する事はない。」


ルイが申し訳なさそうに肩を落としてそう零す。

リズィクルは笑顔で首を振り、気にする事はないと口にした。


"基本属性(スタンダード)"とは火水風土の4っを指す。

魔法の初歩と呼ばれる4属性であり、火と水、風と土が相克関係にあるため、

ルイの様に、4属性全てに適正がある者は稀有な存在である。


また"基本上位(ハイ・スタンダード)"とは、各属性の上位とされる焦炎属性、氷結属性、電撃属性、鉱石属性の4っ。そしてルイには適正の無い光属性(アトリビュート)闇属性(アトリビュート)

そして、神の加護、またはそれに近い加護を持つ者が得られる聖属性(アトリビュート)

これらを含めた7っを指す。


判定結果から分かる様に、親和性はS~Cまでの4段階に分かれ、

各階位に+-が加えられて3段階で優劣が決められる。

C-は発動する事自体は可能だが、その威力と操作性は非常に低く。


1段階違うCの術者が放つ同属性の"(アロー)"を相殺するのに、

実に2倍の魔力量を必要する程の性能に差が出る。

当然S+ともなれば威力、操作性の高さは規格外だ。


ルイには伝えられない内容ではあるが、水に限っては不適正に近いながらも。当然、土S+は、次いで火A-、風B+と優秀な親和性を誇る。

そんな基本属性に加え、基本上位の鉱石S+と電撃A、焦炎B-。


適正が高い系統が3っ~4っと言うのは、

魔法を扱う者にとっては、さほど珍しい事ではない。

だが"使えない属性(アトリビュート)がこれほど少ない"と言うのは圧巻。


(これだけ親和性を誇る"魔法職"は、

 王国広しと言えど100人に1人の逸材と言ってもいい。

 …くくく、魔法職ならばな。)


リズィクルは、ルイに基本を説きながらもこの結果に内心胸が躍っていた。

魔術によって魔法の威力を高める法術(フュージョン)には、この汎用性こそが是とされる。

彼女の"親和性には劣る"とは言え、十分すぎる程にルイは理想的とも言えた。


「…と、この様に区分されている。

 他にも基本属性の高位にある"最上位-トップ・スタンダード"には、

 火の最上位、爆裂属性などに加え、

 時間属性や空間属性と呼ばれる属性(アトリビュート)も加えて存在する。」


「時間と空間…凄そうなのは分かりますが、想像が追いつかない…。」

「くくくっ、身近な物だとアイテムボックスにその原理は応用されている。

 別の空間を魔力で作り出す、または拡張する。

 これらの作用も空間属性の恩恵の1つだ。

 更に複雑な属性になると"特殊属性-パティキュラー-"と呼ばれ、

 重力を操作したり、魔物を召喚したりさすがの妾も知らない属性もある程だ。」


リズィクルの言葉に、ルイはしばし自分の足元の影を見つめて疑問を口にした。


「僕のこの影は特殊属性(パティキュラー)ですか?」

「いやそれはない。」


リズィクルが悩む素振りも見せずに断定した事にルイは困惑する。


最上位(トップ・スタンダード)特殊属性(パティキュラー)は、魔法を修練し習熟して行く過程で、

 "後天的に得られる属性"、当然、魔法をこれから学ぶルイには、

 その素養がある訳がない。

 更に、もしその素養が現在ルイが有していれば、

 先ほどの魔道具で表示されていなければおかしい。

 故に、ルイのそれは"特別属性"ではないと言う訳だ。」


ルイはその言葉に頷く。しかしどうしても気になる様で影見つめている。


「そんな顔せんで良い、妾も明日から調査するつもりでいたからな。

 さて、有意義な時間を過ごせた。講義は一旦ここで終えよう。

 さあ冒険者ギルドに着いた、降りるぞ。」

「わかりました。」


リズィクルの言葉通り、窓から外を見ると見慣れた景色が広がっている。

ゆっくりと流れる景色は速度を落とし、小さな嘶きと共に停車した。


「今日はお世話になりました。馬車楽しかったですっ。」


馬車を降り、御者にルイはそう感謝の言葉を告げ頭を下げた。

御者は笑顔を浮かべ、かぶっていた帽子を少し上げて応え、

鞭を振るい馬車を走らせて去って行く。

姿が見えなくなるまでルイは手を振って見送った。


(魔法…ううん、法術(フュージョン)だ。僕にも使える様になる。凄いっ!)


ルイは自分の手をじっと見つめそんな事を思っていた。

つい口元が緩んでしまう。

ルイはリズィクルの講義を受けている間も、

ずっと胸の高鳴りを抑えきれないでいた。

リズィクルはそっとそんなルイの頭に手をのせ、冒険者ギルドへ入って行く。我に返ったルイも慌ててその背中を追って行った。


「おーっ!」

「ルイが帰ってきたぞ!」

「ルイだっ!!」

「ちゃんと帰ってきたっ!」


ルイがギルドに姿を見せると冒険者たちが騒ぎだした。

中には泣きそうな顔をしている冒険者たちの姿もある。


国王であるマサルとギルドを出た姿を目撃した者や、

その話を人づてに聞いた者が、

ルイが帰ってきた姿を実際に目にして安堵している。

エドガーやレオン、そして職員たちには「帰ってきますよ。」と、

聞かされていても、不安が完全に払拭される事はなかった様だ。


「おー、ルイだ。ルイっ!王様とお出かけは楽しかったかよっ!」


次々に声をかけられて揉みくちゃにされながら、ホールを進んでいると

中天を少し過ぎたこの時間から酒場で、

早くも酒を飲む顔見知りの冒険者がルイを発見しそう声をかけた。


「……ハィナさんの食事を楽しみながら、お酒を飲むのも良いですけど、

 ちゃんと訓練しないとだめですよっ。」

「「「がはははっ!」」」

「笑って誤魔化さないで下さい。」

「わりぃわりぃ、伏魔(パンデモニウム)からさっき帰ってきたとこだから、

 帰還祝いしてるだけだからよっ!

 明日からしばらくは訓練するから大目に見てくれっ!」


笑いながら告げた冒険者の言葉にルイは目を輝かせる。


「土産話楽しみにしてますねっ!」

「おーよっ!訓練の相手もしてやるからなっ!」

「はいっ!ありがとうございますっ!」

「くくくっ、妾たちの弟子は、なかなかの人気者だな。」

「皆さん、凄く良くしてくれます。」


酒場の冒険者たちに大きく手を振るルイの頭に手を置いて、

リズィクルは笑みを湛える。


「妾は報告する事があるから、レオの下に向かうとしよう。

 ルイはこのまま訓練所でエドの相手か?」

「あはは、相手してもらうのは僕ですよ。

 しっかりしごかれてきますっ!」

「……そんな笑顔でしごかれるなどと言うな。

 まったく、エドの悪影響がところどころルイから見受けられる。

 困った師弟だ。くくくっ」


頭を掻きつつ苦笑いを浮かべて濁すルイの額を軽く指で弾き、

リズィクルは笑顔で別れを告げレオンの工房へと去って行った。


ルイは訓練所へ足を運び、辺りに人気がない事を確認して"溶ける"。

出入り口の手前の死角になる場所に滑る様に、

身を潜ませもう一度誰もいない事を確認して、詠唱する。


影に身を覆わせて訓練着に着替えたルイは、

自分の格好を確認して小さく「よし」と声を漏らした。


「いやいやいや……全然良しじゃねーよ、馬鹿弟子。

 また可笑しな利用方法見つけてんじゃねーよ」


変な生き物でも見る様に、眉間に皺を寄せたエドガーが呆れた声を出した。

ある程度の距離まで接近には気付いていたルイは驚く事もなく振り返る。


「便利ですよ?これ。それと師匠、ただいま戻りました。」


「そりゃ便利だろうな。……まあいい、それについてはリズに任した。

 俺はそれには関わらん。それより、どうだった久々のお出掛けはよ。」


犬歯をむき出しにして、人好きする笑顔を浮かべてエドガーはしゃがみ込んだ。

「楽しかったですっ!馬車もすごかったし、城も凄かったんですけどっ!

 門を潜ってすぐ目の前に広がるあの景色っ!

 あんな奇麗な光景初めて見ましたっ!」


ルイは上機嫌に今日見た風景の何が凄かったか、エドガーたちが以前旅していた時に馬車を作成した話や、居城の城壁等を作ったと聞かされて驚いた事。

城に初めて入って感動し、あまつさえバイゼルから城内を余すことなく見学させてもらえた事など、喜色を浮かべて一気に説明した。


エドガーはその1つ1つを「そうか、良かったな。」と頷いていたが、

ルイがリグナットを誤って捕縛してしまった事に話が及ぶと、

一度、大きく目を見開いて、お腹を抱えてしばらく笑い続けた。


「かっかっかっ、それはいい経験したじゃねーかっ!

 しっかし、すげぇじゃねーかっ!

 リグナットのヤツ、ルーファスに死にかけになるまで、

 修行させられたって聞いてんぞっ!それを何もさせずに捕縛…くっ!

 …かっかっかっか!」


いつまでも笑い続ける彼をルイは少しムッとして睨みつけていた。


「かかっ!んなに怒んなよっ!悪かった、悪かった。

 それより、会ったか?シュナイゼルとセリーヌによ?」


口では謝罪しているが、あからさまに心が籠っていないエドガーに、

呆れていたルイだが、2人の名前に反応して破顔した。


「その様子なら、ちゃんと仲良くなれたみてーだなっ。」

「はい、両殿下ともとても優しく接してくれて、

 最後には僕の事を"友"だと言ってくれました。」

「馬鹿弟子にとっては、初めての友達か。そいつは良かったじゃねーか。

 あの双子は生まれた頃から知ってるが、本当に良く育った。

 あいつらの兄貴もだけどな、あんな王族他にはいねー。」


ルイはエドガーの纏う雰囲気に、

微かな怒気が混ざっている事に戸惑っていたが、

疑問を口に出す事なくその言葉に頷く。

ルイはジュリアス王子に会った事はないが、

あの2人がどれだけ兄を慕っているかは、話していて伝わった。


3人とも良い意味で、王族貴族に対してルイが抱いていたイメージとは異なり、

ルイは友としてだけでなく、民としても心から誇れる王族だと慕っている。


「……良い事だが、ルイ。お前、"守る者"が増えちまったぞ。」


そこでルイは怒気の理由に思い至った。


"友だとか、ツレってのはな。どっちかが一方的に支える物じゃない。

だが、ツレが苦しんでる時はどんなに自分が辛くても手を貸すもんだ。"

以前エドガーが酔った時に、レオンとの昔話を聞かせてくれた。

その際に、珍しくルイの頭に手を載せて口にしていた言葉だ。


その強い矜持に応えるべく、強く頷き口を開く。


「2人は僕が守る。」

「かかっ!言うじゃねーかっ!王族だぞあいつらっ!でっかくでやがった!

 あー、だが、いいツラだ。その心構え悪くねぇ、悪くねぇな。

 んじゃ、やるとすっか。」


微かな怒気を霧散させ、ルイの背中をバシッと強く叩き、

訓練所へ足をむけたエドガーを見つめ、かけられた言葉を反芻する。


そして、ルイならば強くなればあの2人の友の力になれると、エドガーが背中を押してくれた事に気づき高揚する。


「強くなるっ!もっと!」


ルイは声に出し強く誓った。

大切な家族を、そして初めて出来た友をどんな事があっても守れる様に強くなる。

弟子となる前から、そのぶれない指針のためにルイは自分を鼓舞した。


ルイ

「ステータスの時もそうだったけど、属性の表記もいっぱい悩んで瀕死でしたね。

エドガー

「けっ、脳筋ばっか先に出すからわりーんだよ。

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