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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
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■■2章-陽気な狂王は颯爽と現れる-■■①

 ■■2章-陽気な狂王は颯爽と現れる-■■


 頭をすっぽりと覆い隠す白い仮面をつけた男が目の前に立っている。法衣の様な物を身につけその上から、白銀の軽鎧を装備する妖しい男。身長はエドガーと同じくらいだろうか。その立ち姿は一見隙だらけ感じるが、ルイはそれを"擬態"と見抜いていた。時折無言で顎に手を当てたり、両手をひろげてみたりと謎の行動を取る際に隙が消えてなくなるからだ。恐らくこの人は今朝、師匠が言っていたお客様なんだとはいうのは分かる。だが、わからない。


(どうしてこの人はずっと黙って僕を見ているんだろう。)


 10分程前に、ルイはエドガーの言いつけを守り浴室で汗を流し、制服に着替えて冒険者ギルドへ戻った。知人の冒険者たちが酒場から声をかけてきたので、手を振り2階へ向かおうとしたルイの前に白い仮面の男が立ちはだかった。それから2人はお互いに見つめあったままで立っている。


「こ、こんばんわ。」


 ルイは覚悟を決めてこの怪しげな仮面に挨拶をしてみた。…が反応がない。ルイは途方にくれていた。すると白仮面に動きがあった。首をかしげている。もしかしたら言葉が通じないのかと思いルイは改めて口を開く。


「僕の言葉わかりますか?師匠の…ギルドマスターのお知り合いですよね?二階にいると思いますのでついてきて頂けますか?」

「…。」


 白仮面は頷いてみせた。もしかしたら以前までのルイと同様に彼は話すのが苦手なのか、または話す事ができないのではないか。とルイは考え2階へ案内する。2階にあがり周囲を軽く見渡した白仮面はおもむろに仮面をはずし、素顔を晒した。見慣れない髪の色と瞳の色をした男だった。柔和で人好きする笑みを湛え、アイテムボックスらしき物から細身のフレームの眼鏡を取り出して身につける。


「やあ、はじめまして。君がルイだね?さっきからずっと話かけていたんだが、返事がないから不思議に思っていたんだけど。僕がつけていた仮面は音を遮る魔道具だっていうのを、すっかり失念していたよっ!あはははっ!」


 陽気な人だ。そして少し天然さんのようだ。ルイは白仮面を脱ぎ去り高らかな笑い声をあげる黒髪の男をそう評価した。


「はい、ルイです。初めまして。そういう魔道具もあるんですね。僕も微動だにしないままじっと見つめられて、少し困惑していました。でも、普通にお話しできる方で安心しました。えっ…と。」

「ああ、名乗るのが送りれたね。僕はオーカスタン王国「マーシャルだ、ルイ。彼の名前は、マーシャルだ。」えっ?あっ、レオ久しぶりだねっ!相変わらず逞しいねぇ。やっぱりお肉食べる時は脂身がない物を食べるのかい?いやいや、そんな怖い顔をするもんじゃない。久しぶりの友人との再会にはそぐわないよっ?」


 レオンが大会議室の扉を開けて姿を現すと、マーシャルと呼ばれた黒髪の男は、レオンの肩を叩きながら畳みかける様に言葉を重ねる。レオンの額には複数の青筋が見てとれ、それに気付いたマーシャルは苦笑を浮かべおどけるように肩を竦める。珍しくルイに対しても語気が強いレオンにルイは怪訝な表情を浮かべる。レオンはそんなルイの気配を察して、柔和な笑みを浮かべる。その笑顔は「お前に怒っている訳ではないから安心しろ。」と言っているようだった。


「ルイ入りなさい。マーシャル、お前もさっさとこっちこい。お前がうろちょろすると騒ぎが起きかねん。」

「わかったよ、まったく友達甲斐がないね。久しぶりだっていうのに…。ルイ君もそう思うだろ?」


 掴みどころのない人だなぁ。とルイはマーシャルに続いて会議室の中に入って、扉を閉める。会議室にはすでにエドガーとシェラさんの姿がある。エドガーは難しい顔をして腕を組み、シェラは黒髪の男に軽く微笑み目礼をした。


「やあ、エド。それにシェラ。壮健そうでなによりだよ。ああそうだ、エドの好きなミントティーとレオが好きな珈琲を持ってきたんだ。淹れてくれるかな?あとこれは職員のみんなへのお土産もってきたよ。あとで分けてあげてね?嗜好が変わっていなければいいんだけどね。はい、シェラには城の庭でとれた薔薇で作ったジャムだよ。」

「あら、嬉しい。覚えていてくれてたのね?みんなの分も…これは、みんな喜ぶわ。これは??」

「知らない職員たちのお土産は、さすがに各々の好みを知らないからね。申し訳ないけど彼らは全員チョコレートを選んでおいたんだ。喜んでくれるといいのだけど。」

「きっと喜ぶわ。じゃあ淹れてくるからこっちに座って。ルイも座って待っててね?」


 マーシャルはシェラに手土産を渡し、一通り説明するとシェラに勧められた席に腰を落とした。ルイもそれに倣い席につく。シェラが退席するとエドガーが疲れた顔でマーシャルをルイに紹介する。


「ルイ、まず初めに入っておく。ギルド職員以外の前では"マーシャル"と、こいつの事を呼べ。」

「?…はい。」

「こいつの名前は、マサル・ルクシウス・コンドー。オーカスタン王国の現国王陛下だ。」

「えっ…し、失礼いたしました陛下。」


 子供であるルイにだって、王様に対してどうしなければいけないかくらいの知識はある。慌てて椅子から立ち上がり膝をついて頭を下げる。エドガーはそんな弟子の姿に驚いた。レオンも感心だと言わんばかりに頷いている。


「お前、そう言う事は出来るんだな。世間知らずの困ったちゃんとばっか思ってたわ。」

「ルイ君。僕は確かに、今となっては王様なんてやりたくも無いことをやってはいるが、エドとレオとは同じ学び舎で過してから、ずっと一緒に旅をしていた仲間なんだ。その弟子であるルイ君が謁見の間でも無いのに僕に臣下の礼をとる必要はないんだよ?だから、頭をあげて席についてくれないかな。」


 マサルは席から立ち上がり、ルイの前で片膝をついて両肩に手を載せ優しく語りかける。ルイは困った顔をエドガーたちに向け、助けを求める。


「ルイ、マサルの言う通りだ。誰かの目がある時はそうしてやってくれればいい。席に座りなさい。ルイがそのままだとマサルが気を使ってしまう。」

「はい。」

「うんうん、それでいい。僕は偉い訳でも血筋がいいわけでもないんだ。ただ先代に恩があってね、王子様が立派な大人になるまで代わりに王様をしているだけに過ぎないんだ。もともと平民みたいなものだしね。」


 立ち上がったルイの肩を優しく叩きマサルは席に戻る。ルイはそれでも些か緊張したまま席につき過度の緊張から俯いてしまう。ノックと共にシェラが戻り、飲み物を皆の前に配りルイの隣の席についた。エドガーがカップを口に運び、微かに喜色を浮かべるとマサルに顔を向ける。


「おお、やっぱお前が育てた葉っぱのやつが一番うめぇなっ!ハチミツにもあうしっ!!……んで?狂王様直々に辺境都市の冒険者ギルドになんの用で現れやがった?」

「葉っぱ…って。まあ、喜んでくれてるのは顔をみたらわかるから、そうやって喜んでくれると育て甲斐があるよっ。それで…用事ね。正直大した用事ではないんだけど、僕が正式には"明後日から"1カ月ほど、この街に滞在することになるからね。親愛なる友人たちに挨拶でもと思って顔出しただけだよ。」


 今日明日は滞在しててもそれは"お忍び"だと暗に仄めかす様に口にして、マサルもカップに口をつける。黙って様子を窺っていたレオンは、少し険のある口調でマサルを問い質す。


「ここで発生した事件の後始末か?それにしても随分悠長だな。2カ月も経ってから国王自らのこのこ出張ってくるとは何か問題でもあったのか?」

「その質問に答える事自体は吝かじゃないんだけど、ルイ君の前でするような話ではない気もするけどね?それとも同席させている以上、話を聞かせてしまっても問題ないって解釈でいいのかな?」

「ああ、それでいい。別にこいつの前だからと言って遠慮も心配いらない。第一こいつは、事件の被害者でもある。それに、お前の話す内容次第で、俺らが動く事もあるだろ。ってか、そのつもりだろお前。だったら余計にこいつに隠し立てして、暴走されたらかなわねぇ。しっかりその点、こいつには前科もあるしな。」


 マサルがルイの方を窺って疑問を口にするが、エドガーがそう口にし了承する。ややその物言いに悪意を感じたが、ルイも自分の前科が何を指しているかわかっているため、下手な抗議はせずに口を閉ざす。マサルはそんな2人のやり取りに一瞬呆うけた顔をしたかと思うと口元をゆるめ笑みを漏らす。


「あははっ。ちゃんと師弟しているねぇ君たち。レオはともかく、エドが弟子持ったなんて手紙で報せを受けた時には、とび跳ねたものだけど。こうして見ると本当に関係のようだ。ルーファスが弟子になったルイ君の事をとても心配していたけど、いらない心配だったようだね。」

「ルーファスって……えっ?先輩?」


 ルイは会話に突然現れた名前に反応を示す。そのルイの反応を目にしエドとレオは何故知ってると驚愕混じりの視線をルイに送る。その場にいたシェラも不思議そうな顔をして横にいるルイを見つめる。マサルは、そんな周囲の様子を見渡して、しばし顎に手を当て考える素ぶりを見せたが、笑顔を浮かべ得心がいったと頷く。


「なるほど。僕は報告受けていたから聞いていたけど、君たちはどうしてルイがルーファスを知っていて。ルイ君は僕たちがどうしてルーファスを知っているか知らないんだね。ルイ君、さっき同じ学び舎で過し、一緒に旅したと説明したね?その旅は、そのルーファスも一緒だったんだよ。だから、エドもレオも彼をよく知っている。それで、ルイ君がルーファスと面識があるのは、事件前夜エドと仇花が会っていた頃に、エドを迎えに向かったルーファスが、夜の花街の建物の屋上で街を眺めている彼を見つけ、接触する機会があって仲良くなったって聞いてるよ。そうだよね?ルイ君。」


 ルイは師匠たちとルーファスが友人だったと聞き、驚きはしたが、あのどこか底知れない先輩ならばと不自然ではないとも思える。2人の師匠に目をやり、この2人と一緒にいるルーファスの姿が、容易に想像出来てしまい納得した。エドガーは「あの時か…あの野郎、俺たちは報告されてねーぞ。」と少し苛立ちを浮かべ、眉間を指でほぐし、レオンはじっと腕を組んで瞑目している。ふとその目を開けレオンは、ルイに向き直りひとつ問うた。


「ルイ、正直に答えて欲しい。別に尋問する訳じゃない、安心しろ。ナルシャ、カリィ、スリン、カチェス…この四人の名前に心あたりは?」

「あっ…。オオカミの時の人たち。」

「なるほど…ルーファスめ。」


 レオンが口にした4人の名前にルイはしっかりと心当たりがあった。郊外を散歩している時に出会った四人の顔を思い出し、ルイは素直にレオンの質問に答える。そんなルイの答えを耳にし唸る。彼女たちは冒険者拉致の被害者であり、ルーファスと彼女達から事件前夜、郊外の草原で"少年"に偶然助けられた。と確かにレオンは聞いていた。そしてその報告をエドガーも受け把握していた。ただ、よくよく考えてみればオオカミの群れに単身飛び込む少年などいくらハンニバルとは言え、そうごろごろ存在するはずもない。件の少年がルイであると理解したレオンは、その件を伝えずに王都へ去っていったルーファスに胸の内で強く叱責する。レオンの質問の意図を察したエドガーも苦虫をつぶした様な顔を浮かべている。

 そんな2人の様子を興味深そうに観察していたマサルは、何故2人がその様な態度なのかを訪ねる。

マサル

「あははははっ、やっと僕の登場だねっ!!!!

 書いてて楽なんだよ、だって口調は穏やかにして、あとは笑っていたらいいからねっ!!

ルーファス

「語尾がたまに鬱陶しくなって、悩んで手を止めちゃう俺っちとは違うっすね

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