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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■1章-そして弟子と師匠になる-■■
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■■1章-約束と報告、功労者たちは一夜を語る。-■■③

 エドガーはそれから、犯人たちの必須条件をあげ説明した。

 まず彼らの目的がオルトック伯、その人だと言う事。

 普通に考えて辺境伯に限らず、権力を有する者が暗殺されれば大規模、かつ強制力のある調査が実施される。

 それと同様の事件でも起きない限りは都市の出入りは制限され暗殺に成功したとしても脱出が不可能になる。

 では、どんな事件を起こせば混乱に生じて暗殺を成し、逃げる事が出来るか。

 それは少し考えると自ずと導きだされる答えだとエドガーは続ける。


「そうなると条件が限られる。まず"巡回しているハンニバル騎士団が総勢で対応せざるえない規模かつ、円滑に処理出来ない事件である事"、"少数の人間で作戦行動が可能である事"、"目撃者の情報が波及しない事"他にも細けぇ条件もあげられるが、これが根幹。花火がでかけりゃいいってもんじゃない。仮に、工業区や商業区で大規模な混乱を起こしてみろ。ただでさえ、冒険者失踪事件で、巡回する騎士が増えている真っ只中だ。一気に押し寄せてきて城門閉じて、犯人どもはハンニバルに閉じ込められる。下手すりゃ事件を起こす直前で巡回に見咎められる可能性だってあらぁ。」


「なるほど、それで条件という訳ですか。少数で作戦行動可能。これは私にも分かります。過去の事件も襲撃犯を現地で調達して操っている。これは足がつかないためとも取れます。でも、実際は法国から人員を持ち出すとどうしても目を引きかねない。それに諜報は少数の方が察知されるリスクが少ない。そうなると敵は少数と考えた訳ですね。」


 オーリがエドガーがあげた条件を聞き、なんとなくではあるが全体像が見えてきた。エドガーは「そう言うこった。」と口にし、レオンの肩を叩き「続きはよろしく。」と酒を口に運ぶ。


「…お前。まぁいい。オーリ嬢が言った通りだ。そして、目撃者情報の波及を防ぐのは当然だ。それが早すぎれば、事態の鎮静化が想定より早まる危険性がある。混乱は長引かせる必要があるのだ。領主暗殺と同程度の事件。そんな大規模な事件を市街で起こすと、領主暗殺と同時に起こす意味が失われてしまう。それこそ犯人を外に出さぬよう、城門は閉鎖されハンニバルに囚われてしまう。そうなってしまえば、鳥の籠の中で我々と名無しに嗅ぎつけられて一巻の終わりだ。しかし全ての条件を簡単にクリアしてしまう区画がハンニバルには存在する。特別商業特区花街ススキノだ。」


 レオンの言葉を仇花が引き継ぐ。


「ススキノの夜は、連日物凄い数の人々の往来があるでしょ?誰が不審者なのかなんて判断なんてつけられるはずがないわ。そして花街門を除き、その周囲を城壁に見紛うほどの壁に包まれている。ある種の閉鎖空間ね。そんな所で、大規模な騒ぎが起きたら花街門の門番たちならば、まず門を閉鎖するわね。そのため仮に事件を起こした場所や犯人を目撃しても、その者が外に出られないんですもの。情報は波及しようがない。」


「混乱が起きると直ちに門は閉じられる。それを逆手にとろうとしたのか…。」

「門番たちも事件発生後、ただちに閉鎖している。犯人は逃げる間もなく花街に閉じ込められているはずと考える。だから、ハンニバルの城門を閉じるまでもない。」


「だから、ここが現場になる。と行きついたという訳か、事件の後、今ここで話を聞いているから納得出来ているが…。実際そうだと決め罠を仕掛けると言われて頷ける自信は私にはないな。」


 レオンと仇花の話を聞き、2柱、7柱、6柱が順に口を開いた。

 最後に6柱が口にした言葉にダンサイとオーリも同意だと言わんばかりに頷く。


「まぁ、こんな事言うとまた2柱あたりに噛みつかれそうだけど、頭領も私もエドたちと付き合いが長いのよ。"戦争みたいなもの"も一緒に潜りぬけた間柄、戦友って言ってもいいかもしれない。何度もエドの"堪"とレオンの"知恵"には、危ないところを救われたものよ。「俺らは仇花の糞火力に相当助けられたけどな。」んっんん!今はそんな話しなくてよろしい。…そんなエドから今の話を聞いて、"明日の夜、必ず仕掛けてくるから"って宣言されたから大慌てよ。自治会仕切る連中叩き起こして「昨今、王都や他の都市で"毒"とか"火事"で花街が被害に合う事が多いから、領主より突発的な防災訓練をする事になったから、明日、花街門、開門から訓練の終了宣言が出るまで従業員や遊女たちに、その日運ばれてきた飲み物や食べ物には手をつけない様に。」って、無理矢理納得させて協力させたの。」


 2柱は先だって「噛みつかれそう」と釘を刺されたのと、エドガー、レオンの戦闘能力が頭領並だと聞かされていたので言いたい事はあったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。ダンサイ、3柱はその当時から彼らを知っているので、納得した表情を浮かべているが。他の柱もなんと言っていいかと言う顔をしている。


「ふたつほど気になるんじゃが、良いかの?何故、火と毒と断定できたんじゃ?それと決行日が特定出来たのは、本当にエドガー様の堪だけかの?」

「火と毒は想定できる中で一番現実味があったから。絡め手で来ると言うのは想像は容易かったわ。辺境都市ハンニバルで現地調達した無法者や活動出来なくなった冒険者やらをいくら集めたところで、正面から喧嘩売れと言われたら彼らは、逃げ出すでしょ?」


「それは確かに。」

「自殺行為じゃの。」

「そんなに強いのか?やつら。」

「あとにしろ、2柱。」


 ダンサイの疑問に答える仇花が同意を求めると、その実力を知っている者、片鱗を目にした者が頷く。2柱はその様子に、隣にいる6柱に小声で話しかけるが素気無く返される。

 仇花に「堪の部分はエドから話してくれないと困るわね。」と促されて、杯を一気に空けて頭を掻きながら言葉を選ぶ。


「まぁ、そうは言っても堪なんだけどよ。ただルーファスが仕掛けた、王都に千の兵を遠征に出したってのは耳に入るだろうと考えるとよ。計画を前倒しにしたい相手にとっては絶好の機会じゃねーか?あと一日したら戻ってこないとも限らなねぇ訳だしよ。それと搦め手ってだけで考えるとよ、そりゃたくさん選択肢があるわな。だけどよ、雇われた馬鹿どもだって、誰も捕まりたくねーだろ?だが相手は、やつらを雇って動かしたい。じゃあ、馬鹿どもが安全だと思える手段じゃねーと駄目だろ。」


 エドガーは自分の堪を言葉にしろと言われ、しどろもどろになりながらも説明を続ける。それを瞑目しながら聞いていた6柱が納得の声をあげる。


「…なるほど、逃走するための毒かっ。」

「まて!なぜそうなる!!」


「いいか2柱、昨日の事を少し思い出してみろ。花街で毒をばら撒いたやつらは、毒に犯されたふりをして苦しんでいれば我々が勝手に花街門まで運び込んでくれる。あとは馬車に乗って教会に連れ出してもらうのを待つだけだ。そうであろう?」


「た、たしかに。…そうか、火が必要というよりも、やつらは煙が必要だったのだな。」

「あら、珍しい。その通りよ。」


 2柱は、6柱の言葉を聞きながら昨日の記憶を探る。

 そして毒を散布する人間が目撃されないために、火事を起こし発生した煙に身を隠すための行動だったのかと思い至る。仇花は、そこに思い至った2柱を意外そうな表情で見る。


「まあ、毒を使う。って言うまでは思い至ったがよ。散布方法までは、ちょっと絞りこめなかった。だが、吹きかけられたり、ばら撒かれる程度の毒なら、早々重症にはならねぇ。即死する様な毒の散布は雇われた奴らだってご免だろう。それと比べて服毒させられちまうとちょっと危険度あがっちまうからな。だから仇花の機転は助かったぜ、訓練口実に飲み喰いに制限かけてくれたからよ。んで、そこまで計画が見えてしまえば後は、花街門の開門を待つだけだ。昼間にはトラブルは起こしようがねぇ、入れねーからな。あとは張った罠に飛び込んでもらうのを待つだけになったって訳よ。」


「だからといって、そのまま朝まで呑んで帰ってきた時は、いっそ殺してしまおうと思ったがな。」

「そこは私も悪いのよ、許してあげて。」

「仇花がそこまで言うなら今回だけは見逃そう。」


「うふふ、ありがと。そして事件当日、私たちは一斉に罠をしかけるべく動き出した。まず私は"頭領"にエドから得た情報と対応について報告をあげた。その後、頭領から再度、呼び出された私とダン爺は"裏切り者を把握できていないこと"。"事件は3日後に起こると予想していること"を家族全員に共有するように仕向けろと命じられたわ。内通者が1人だと確信はしていたけど念には念をいれるようにって事だったみたいだけどね。」


「その間こっちでは、ルーファスが動いた。オルトックに秘密裏に接触してもらい。判明した手口、狙いを告げ、その日の内に相手が動く事を伝えた。前日にルーファスが指示し郊外に配置した部隊を事件発生後、ただちにオルトック自身に指揮を取ってもらい商隊を装う者たちを取り囲み一網打尽にする。これがまず1っ。そしてもう1つ、オルトックには死んでもらった。」


 オルトックの死亡はもちろん偽装。

 ただ仇花たちが家族にそうしたように、どこから情報が漏れるかわからないため、オルトックとバイゼルには事情を説明した上でルーファスは、出血量が多く、重症に見えるように胸を横薙に切りつけた。


 それによりオルトックは重症で床に伏せていると家人や護衛達に伝えられた。

 当初の予定では、レオンにあえて潜り込ませた暗殺者リグナットを捕獲、拷問と言う名の事情聴取の下、オルトック殺害後どのように報告するか聞いた上で殺害する予定ではあったが、実父と実兄の確執から、実兄に実父の魔の手が迫っており、すでに次兄を殺害された事を知ったリグナットは離反。

 相手の計画に沿ってリグナットには予定通り行動してもらった。


「実際待ち伏せは上手くいったようだ、こちらに窺う前にオルトックに会ってきたが、ルイ君が前日に救出してくれた冒険者4名が発見された郊外の草原付近にそれらしい一団を発見、事件後その一団に動きが見えたのを確認して一斉に包囲。偽1柱ことネグレイシア法国諜報局2番隊所属"顔なし"ナージタ・ルカバーナは、ルーファスに片腕を落とされた後に、捕獲。100人ほどいた商会もどきは81名が死亡、12名重症、7名が軽傷。生き残った者たちは皆、オルトックの下で牢に入れられて事情聴取が続いている。」


 レオンからルイの名前があがると仇花とサミュルを除いた面々が、驚愕の表情を浮かべる。

 実際この件は、ルーファスから聞かされていた2人を除いて、まだ周知されていなかった。

 仇花は「あとで説明するから。」と苦笑を浮かべ、話題に喰いつきそうなオーリ、ラミーエ。そして6柱、7柱をなだめる。

 ダンサイは「なにをやっとるんだ、あれは。」と渋い顔をしてこぼしていた。


「頭領の命で、私はダン爺、サミュル、ラミーエ、オーリに、事件の全容を伝えたわ。と言ってもそんな細かい内容を伝える余裕がなかったから"偽1柱"という輩が暗躍している事と、ナノスリスが生きていてそれに協力している事。恐らくこの中の誰かがナノスリスと対峙する可能性くらいかしらね。」


「はい、4柱からその話を聞いた私たちはエド様、レオン様が手配して下さった、女性冒険者の方々とオルトック様の騎士団に所属する女性騎士団の方々をお預かりして、遊女へ変装させるための衣装や、化粧の手配に追われていました。」


 実際、花街での毒散布をどうにか出来たとして、運ばれてくる被害者に遊女が含まれていないのは違和感がある、そこで仇花とエドガーが考えたのは、女冒険者たちと女騎士たちを遊女に変装させて偽の被害者として行動してもらうという作戦だった。

 当日は、サミュルとオーリが夢繰りの館の女中たちと総力をあげて、簡易遊女をつぎつぎと生みだしていたのである。2柱が不服そうな顔で声を漏らす。


「何故、私と6柱と7柱には伝えなかったのだ。」

「2柱…そんなこと聞かなくてもわかるでしょ?」

「ナノスリスと対峙して対応できる自信は私にはないな。」


 それに7柱と6柱は冷ややかな視線を2柱に浴びせた。

 実際ナノスリスは柱ではなかったが、在籍時その戦闘能力の高さと指導力の高さを買われ、1つの孤児院を任されるほどの手練れであった。

 変化に富んだ体術とオーリも不覚をとった"香"の使い手として名を知られており、6柱、7柱が対峙した場合、打倒するよりも死ぬ算段のが容易いと言って良い程の実力者だ。

 その事を知っている2柱は、一瞬納得しかねたがその中にオーリが含まれていた事で再度、噛みつく。


「な…なるほど。しっしかし!3柱、5柱はわかるが、何故8柱が!」

「つよいわよ?オーリ。私より。」

「俺よりも強いな。」

「そ…そうなのか。」


 オーリの実力を正しく評価している2人にそう言われ、実力では一番劣る2柱は肩を落とし俯く。

 そんな2柱を見ていて若干、居た堪れなくなったエドガーが話を戻す。


「まぁ、女冒険者だけでなく、野郎どももしっかり働いてくれた。」


 エドガーは当日、冒険者ギルドに依頼を受けるためにやってきた冒険者たちに、悪そうな笑みを浮かべてこんな提案をした。


「おい、野郎ども。お前らみたいな糞ったれどもが、おもしろおかしく過ごせる天国である、このハンニバルで面倒を起こそうとしてるアホどもがいる。詳しい話はことが済んでからの説明になるが、どうだ?一晩で金貨1枚だ。ちょっと手空いてるやつは、手伝えや。」


 口調こそもいつものエドガーであるが、その真剣な表情に冒険者たちは次々に依頼を受け、仲間や知人たちにも声をかけ、最終的には500人にも上る数が依頼を受けた。

 "なにか面白そうだ"と思っている者たちも少なくはなかったが、エドガーが口にした"ハンニバルで面倒を起こす"と聞いて、黙ってられないと口にした者が大半であった。

 皆、自身が拠点としている冒険者の街と言っても過言ではないこの街を愛していた。

 人だろうが魔物であろうが、自分の巣を悪戯に刺激されて面白い者などいない。

 なによりエドガーが真剣な表情で語ったのが大きい。

 ロクなことが起きないと、それは止めなければならないと覚悟させた。


「こうして総数1000人近い"偽被害者予定者"が開門にあわせ花街に溢れかえったって訳だ。」

「被害者が全員偽物だったとは…。」


 2柱の言葉に計画の全容を知らされていなかった6柱と7柱も驚きを浮かべて頷く。しかし、エドガーが3人を気遣うように笑みを讃えて口にし、頭を下げた。


「いやいや、10数人は本当に被害にあってんだ。あんたらの働きが無駄ってことにはなんねーよ。むしろ知らないことで、本気で助けようって動いたあんたたちには頭が下がる。」


 6柱と7柱はエドガーが見せた真摯な態度に若干驚き、頭を上げる様に懇願した。2柱に至っては、急に頭領並の戦力を誇ると聞いていた男が頭を下げて感謝を述べる姿に少し胸を熱くする。


「放火は未然に、腕ききの偽被害者たちが取り押さえる事に成功。だが煙が無いと計画がうまく行っていない事を悟られてしまうからな。建物に火が移らぬ様に注意を払ってもらって煙だけ焚いてもらった。だが、毒に関してはやはり計画では煙に紛れて行動を行う予定だったらしく、相当数散布させてしまった。」


「だけど、2柱だっけか?もともと奴らもそのつもりだったろうが、おたくが軽傷者を救世教へ、やばそうなのは勇者教にって差配してくれてよかったぜ。お陰様でまじで被害あっちまった人たちが、早い段階で"危なくない"教会にスムーズに運べた。」


「俺様が言わなくても、やつらの狙いもそうだったんだろ?それなら俺様が褒められる理由はねーよ。」

「いや、偽1柱の立場として的確な指示を出し過ぎても違和感が生まれると懸念していたはずだ。相手の望み通りに行動した事は癪なのはわかるが、貴方の働きは称賛される事はあっても卑下する行いではない。」


 エドガーに引き続き、レオンにまで素直に称賛されてしまい2柱は附してしまう。

 褒められ慣れていないのか耳が赤くなっている。

 全員が心の中で"いつも、そうしていればいいのに"と胸の内でつぶやいた。

 エドガーは何度目かわからないが、そっとしておいてやろうと気を回し、話を先に続ける。


「まぁ、毒を巻いた奴らは、軽傷を装って全員救世教教会に運ばれる馬車を選び、完全包囲されて冒険者たちにボコボコにされて半数死亡、半分は郊外の奴らと一緒に檻の中だ。」

「ねぇ、気になる事あるんだけど。あの狼煙代わりの爆発はなんだったの?あまりの衝撃と音だったから、どこかに被害があるのかと思って軽く確認したんだけど、どこにも見当たらなくて。」


 仇花は事件開始の合図であったとおもわれる爆音について言及した。

 レオンが少し難しい顔を浮かべ額に手をあてて答える


「それはだな…。」


 襲撃犯たちが、仲間たちに開始を伝えるために仕掛けた爆発は、協力者たちの監視に引っ掛かりあえなく発見され取り押さえる事に成功した。

 レオンが用意した風系統の"-振動-"と"-音-"、光系統の"-発光-"を組み合わせた魔道具で代用を試みたが、想定より激しい音と振動齎す結果となり一時、現場は騒然とした。

 その事を申し訳なさそうにレオンは口にし謝罪した。


「いやいや、あれは笑ったっ。かっかっかっ」

「こら、エド。間違いはみんな経験するものよ?そんな風に言っちゃだめよ。」


 腹を抱えて笑うエドガーをレオンは鋭く睨みつける。

 仇花はエドを軽く窘め、レオンに「謝るようなことではないわ、被害も出てないんだし。」と声をかけた。

 柱たちも仇花と同じ考えらしく、頷いて同意を示し今だに笑い転げているエドガーに呆れた視線を向けた。


「かっかっかっ!まあ、そんなこんなありながら、一応相手さんの最大戦力ってのが救世教会で待ち構えているらしいから、相棒と行ってみたらこれまた面倒な事になってやがる。そこのお嬢さんは、腹から柄を生やして死にかけてやがる。おたくのとこのちみっこ無口君は、血たらした短剣握ってボーッとしてやがるし、近づいて声かければ無視されるわ、噛みついてくるわ、魔法までぶっ込んできやがるわ、最後の最後は自爆までしてくれちゃって。散々、迷惑と心配かけさせやがった想定外はあったが無事解決ってとこだな。」


 この話は前もって聞かされていたのだろう。

 ルイの話に及ぶとその場にいなかった2柱すらも苦笑を浮かべていた。

 事件の一連をすべて報告し終え、各々が酒を口に運びつつ子細について語り、解決したことを喜びあった。

 お酒も回り褒められた事もあって、些か調子にのった2柱が、エドガーとレオンに対して高圧的な態度で絡んでいた姿を見ているうちに、

 昨夜の自分を重ね、いたたまれなくなったオーリがこっそりと彼らの家名を伝えると、

 その顔を強張らせ、2人に土下座をして許しを請うという珍事もあったが、酒宴は終始穏やかに執り行われた。


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