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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
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2章-夜空を駆ける一条の砲弾

百話を突破してから、一話から順に、不定期ではありますが、改稿を開始しました。

少しでも読みやすく、百話積み重ねた分、多少は上達したであろう文章能力を……。

きっと上手くなってると思いますので、気になったらちろっと読んで見てください。

「ここにいないエドの許可なく、あれの能力に触れるのは如何かと思ったが、

 ルイ自身、その目で見たことがあるのならば良いだろう」


まるで、その事を考えていたために思考に没頭していたと言い訳がましい物言いに、

表情に出すことはしなかったがレオンは、胸の内で自嘲した。


「他人の能力に関わる事だから、詳しくは教えてやる事は出来ないが、

 エドが瞬間的に、任意の武器へと持ち変えられるのは、見た事があるな?」


「あの夜以来、目にはしてないですけど。覚えはあります」


「……長剣、大剣。それと最後に、短槍だったな。

 対峙したルイ自身、あれが相当な優位性(アドバンテージ)を持つ事はわかるな?」


「あの時は無我夢中だったから気にしてられなかったですけど、

 あの夜の攻防で、師匠がその気になれば、その都度、的確な武器を持ち換えられた。

 そんな事されてたら、何もさせてもらえず倒されてたでしょうね」


ルイは、当時の事を思い出して苦々しい表情を浮かべる。


あの日、エドガーはあえて"速度が出ない重い大剣"でルイの相手をしていた。

他の武器だと、とてもではないがルイは、攻撃を掻い潜る事は出来なかっただろう。


その事は、ここ一年以上の日々の中で身体を持って体験した。


「それに近い事は、()()殿()を操作して出来るのではないか?

 あの一瞬で緩んだ部位の金具を外して、再び着けた程だ。

 武器その物が難しくとも、投擲ナイフの柄だけでも出せるだけでも有用だ」


ルイは、足元の影から投擲ナイフの柄を出してみる。

そのまま、影に手元まで運ばせてみた。


「…これだと屈んだ方が早いか」


少し悔しそうな顔をするルイを見ていて、レオンは素朴な疑問を口にした。


「足元で無ければいけないのか?」


「どういう事ですか?」


「影は、足元にだけできる物ではないだろう。手をかざすだけでも生まれる。

 服にも、装備にもそこかしこにあるだろう。足元の影しか操作出来んものなのか?」


「……」


ルイは無言のまま、手甲(ガントレット)の下の影を意識する。


すると見覚えのある投擲ナイフの柄がぬるりと姿を現せた。


それならばと、コートで出来た影に手を入れ込む。そこでも柄の感触を感じられた。


まさかと思い、黒鎖とつぶやくと手甲の下から黒い鎖が一条姿を現せた。


最後にルイは、悔恨の表情を浮かべた。


「なぜ、今まで気付かなかったんだろう」


「そう気を落とすな、特異能力(ユニーク)は成長をする物も多い。

 今出来ずとも、いずれ出来るかも知れない。駄目だったからと卑下したり、

 出来たから良しとせずに、腰を据えて今後もゆっくり付き合って行けば良いさ」


「まだまだ、百舌には振り回されるのか…少し分かったと思ったら、これだ。

 前みたいに、急に魔力を持ってく時は、なんか合図してくれると良いんだけど…」


「ん?魔力は要らなくなったのだろう?」


「つい最近なんですけど、ほら、リグナットさんが傭兵と遭遇した時です。

 それこそ、あの大聖堂の時くらい持ってかれまして……」


「枯渇しなかったんだろ?」


「はい、あの時よりは魔力量ありますから平気です」


ふと、レオンの脳裏に、それは"ルイが、枯渇しなかった"のではなくて、

"特異能力(ユニーク)が、枯渇させないよう調整した"のではないか、そんな考えが過ぎった。


「…黒い刃を一本で構わないから見せてもらえるか?」


ルイにではなく、足元の影へレオンは、そう声をかけた。


影が水面のように揺れ、一振りの黒刃が姿を見せる。


「……ありがとう、百舌殿」


レオンは自身の問いかけにも応じた影に驚嘆しつつも、礼を口にした。


出現した黒刃をしげしげと見つめ観察して行く。


収納から片手で扱える程の小さな鎚を取りだし、強弱をつけて叩く。

最後に、そっと指を刃にあて、すっと指を走らせた。


「血が出てますよっ」


「ああ、大丈夫だ。すぐ止まる、切れ味を確かめただけだ」


硬度、強度、切れ味、鋭さに至るまで、レオンが以前見た物とは比べ物にならない。


黒刃の造詣も、当時はただ刃を纏った黒い刀身らしき物と言った印象だったが、

今は、剣の刀身とらしさが窺え、よりそれらしい造詣になっている。


「途中経過を見て来なかったが、あの夜見た物と同質とは思えん、全くの別物だ」


「おお…」


ルイは感嘆の声を漏らし、他人事のように目を輝かせて、黒刃を見つめる。


「この件は、リズィクルとルーファスに任せきりだったが、今後も百舌殿が武器として性能を向上させて行くのであれば、俺が経過観察した方が正確に探れるだろう。今後、何かしらの変化があったら必ず報せてくれ」


百舌の性能が向上しているかどうか確認するのならば、これ以上の適任はいない。

ルイは()()()()()()()()()、レオンの言葉に強く頷いて見せた。


だが、レオンの思惑は少し違った。

変化があった際に、必ず報告するよう()()()()()()()()()()()()

ルイに対しても、ルイの特異能力(ユニーク)に対しても、

自然な流れだと受け入れさせた事が、大きいと考えていた。


しばらくは、足元を除く影から何が出来て何が出来るのかをルイに確かめさせ、

すぐに自分の戦闘に取り入れられるか判断させる時間を作った。


魔力が消費すると言う、ルイが口にした事象は起きなかったが、

ルイも新しい発見に手応えがあったのか表情は明るい。


「そろそろ、行くとするか」


頃合いを見計らって、そう声をかけると、

ルイは動くのを止め、域外に視線を向けた。


月の光すらも拒んでいるような、暗欝な空気が漂う域外。


ここからでは見えない、気配察知にも捉えられない。

だが、この暗がりの何処かにあるという拠点を睨みつける。


「魔物との遭遇は、無いと思うがあまり気を抜くなよ」


「レオンさんが魔物をやっつけてくれるって事ですか?」


「くく、そうしても良いが、それだと時間が掛かり過ぎる。

 俺の送迎方法は少し特殊でな。

 さて…向こうには、今頃サミュルも到着して待っている頃合いだ、こい」


「――おっ」


ちょっとこっちに来いと膝を付き、手招きされるがままにルイはレオンに近づくと、

腰から引き上げられて、肩に担がれた。


「首をまたいで乗れ、その方が安定するだろう。

 多少、恥ずかしいかもしれんが、少しの辛抱だ」


急に視界が高くなった事に、興奮したのかレオンの言葉など、まるで届いていない。

足元へと視線を向け、感嘆の声を漏らし、周囲を忙しなく見回しはしゃいでいる。


「余計な心配だったようだな、そんなに喜んでいるのならなによりだ。

 だが、はしゃいで墜ちてくれるなよ?」


ルイからの返事を然程、期待せずそう言って笑みを浮かべる。


域外側の城壁の端まで、ゆっくりと歩を進め止まる事なく踏み越えた。


「おおっ、おお…おーっ!」


突然の自由落下にルイは、思わず歓声をあげた。


普段、街の上を駆ける時に感じる、普段の落下速度とは訳が違う。

それも当然、ルイの重量や質量などレオンのそれとは比べるまでもない。


訓練場で、中空から地面へエドガーから叩き落とされる時でも、

これ程の落下速度は感じない。


あっと言う間に、城壁の中腹まで辿りつく。


すると、あれ程、衝撃的な落下速度がぴたりと止まる。


「どうして…?」


その不自然さに、足元を見渡すも足場らしきものは見当たらない。

周囲を見渡しても、レオンの太い手が城壁に触れているのを除いて何も見当たらない。


レオンは、ルイが口にした声に笑い声だけ返し、秘密だと口にして城壁に足をつける。



「さあ、夜空の散歩と洒落こもうか」


―― ドオォンッ


レオンが、軽い調子で口にした言葉は、遅れて響いた重低音に掻き消された。


さながら砲弾の如く、空を疾走するレオンとルイ。


顔を叩く風の圧力に、目を開ける事も難儀しながら、

詠唱を口にし、レオンと自分の顔の前に、風の幕を張る。


「ぷっ…はあっ!びっくりしたっ!」


「なかなか見事な風避けだ、ありがとう」


恐ろしい勢いで景色が後方へ吹き飛び去って行く。

振りかえり見るとハンニバルが、もう小さく見えた。


眼下に目をこらすと、すごい勢いで流れる景色と共に、

夥しい数の魔物らしき気配も、気配察知の範囲内を流れて行った。


もうどれだけ進んだか、ルイには分からないが、

初速の勢いが徐々に衰えはじめ、流れる景色が落ち着きを取り戻す。


「ここから先は、地上を行くんですか?」


ハンニバルから、だいぶ離れたせいか魔物の気配も疎らなのが分かる。


このまま行けるところまで、飛んで行き、

あとは地を駆けるのだろうと、考えそう訪ねたルイ。


だが、レオンは首を横に振って収納(アイテムボックス)から、

巨大なタワーシールドを取り出し、それに軽々と飛び乗った。


「第二射だ、落ちるなよ」


再び、ぐっと腰を落とし、そう愉快気に口にして再び2人は砲弾と化した。


「盾、いいんですか?!」


足場にした盾が何処にあるかなど、景色が流れ過ぎて検討もつかない。


「気にするな、帰りに拾って行くさ。あんなでかくて重い盾、人も魔物も、

 使おうとも拾おうとも、思わんだろうさ」


ルイはもちろん、あんなタワーシールドを扱える者など想像がつかない。


「なに、昔から良く戦場や魔物の群れの上をこうして走り回ったが、

 一度だって、持っていかれた事などないからな」


―― ド…オオ…ォォン


遠く離れた後方から、恐らく先ほどの盾が落下したと思われる衝撃音が聞こえた。


レオンとルイのこの加速を考えれば、

あのタワーシールドがどれ程の勢いで落下したか、想像に難くない。


当時のレオンと戦場で出会った者たちに、一抹の同情を感じるルイ。


「……豪快な移動方法ですね」


なんとかそれだけを口にしてルイは、

見えるはずの無い落下位置に思いを馳せ、振り返る。


やけに土煙りが舞っている場所が、ぐんぐんと離れて行くのが見えた。


「ルイならば、直撃などせんだろう。」


「………あれは、直撃を避ければどうにかなるって規模なんですか?

 はぁ、あの夜の相手が師匠で良かったって、心の底からそう思えます」



良くて、余波で空の散歩、悪くて瓦礫でハチの巣。

直撃を回避しても、待ち構えているのは後者である気がしてルイは寒気を覚えた。


「くくっ、エドが相手で良かった…か。本心で言えるのだから、凄いやつだ、お前は。」

 やはり、あのエドガー・ルクシウス・ワトールが認めた弟子だな」


つい先日の事のように、ルイと邂逅した夜のことは、いまでも鮮明に覚えている。


「もうっ、なんて事、言うんですか、レオンさんも僕の師匠じゃないですかっ!

 先生も先輩も、教授だって、みんなみんな僕の大切で尊敬できる師匠ですっ。

 それを……僕の師匠がアレだけみたいに、言わないで下さいっ」


「はははっ、そうだ、そうだったな。アレだけではない、みんなお前の師だったな。

 ふふ…あと残る2人も、この件が終わればハンニバルに顔を出す。

 また、ルイの師が増える事になるだろうな。しかし、なんとも不思議なものだ……、 

 俺達七人、全員揃いも揃って、一人の弟子を持つなど考えもしなかった」


先生(マサル)先輩(ルーファス)も、似た様なこと言ってましたけど。気が早くないですか?

 会ったこともないし、皆さんみたいに、僕の師になるかなんて…」


「いや、なるさ」


ルイの言葉を遮り、レオンはそう強く断言した。


「俺たちがルイを弟子にしたからと言って、じゃあ、なるって事はないかもしれん。

 だが、あの夜、あの大聖堂でエドと俺がそうだったように、

 ハンニバルで、お前と出会ったマサルやルーファス、リズがそうであるように、

 お前と会い、お前を知れば、必ず残りの2人もルイを認める。

 俺だけではない、お前の全ての師たちの自慢の弟子なのだからな」


レオンは肩に触れる感触から、ルイが頷いたのを感じ取る。


「さあ、ルイよ。あの夜、オーリを守ると立ち塞がった時のように、

 ゼルとリーヌも救ってやれば良い。お前ならば、それが出来る」


「はい」


そう返事したルイの声音からは、気負いは感じられない。

感じられたのは確かな自信。


力を過信している訳でもなく、誰と対峙しても負けないと自負している訳でもない。


シュナイゼルとセリーヌ。

ルイが守りたいと願った存在を、守るという強固な意志が込められた自信。


日に日に逞しく育つ自慢の弟子が、誇らしい気持ちでいっぱいになった。


それから数回、盾を踏み台に夜空を駆けていると、

気配察知の範囲内に、よく知る希薄な気配を捉えた。


目を凝らすと、その気配がある方角が明るく光を発しているのが見えた。


「あれが、野営地…」


「そうだ、あそこがお前の目的地だ。…少し手前で、降りる」


収納から別の盾を取り出し、レオンはその場でルイと自身の頭を真下に向ける。


「―― えっ」


「少し怖いかも知れんが、声はあげるなよ」


レオンは、そう釘を刺してルイの返事を確認せずに、盾に足を乗せ地上を睥睨する。


空中でまさか直角に進路変更。その上、行き先が地上になるとは、

流石に想像していなかったルイは、悲鳴を零さないように、必死で両手を口にあてる。


何度目かの砲弾体験の中で、断トツの迫力と身体に感じる重力、

そして、精神的破壊力が、ルイの心を襲う。


「―― んーーっ!」


塞いだ口から声にならない悲鳴をあげ、ルイは真っ逆さまに地上へ落下した。


レオン「直角落下は、かっこいいと思うんだが」

ルイ「…作者がレオンさんと朱華が好き過ぎて多彩でずるい」

レオン「スキンヘッドの優男って初期設定が、スキンヘッドの巨躯の偉丈夫になったがな…」


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