独房
気が付いた時、目の前に見えたのは頑丈な鉄製の格子。
両横と後ろは厚いコンクリートブロックで覆われていて、誰がどう間違っても此処はホテルではなく牢屋の中に間違いない。
しかもその狭い牢屋の中に居るのは、俺だけだ。
つまり俺は奴らに捕まり、この独房に入れられたのだ。
まあ今どき大部屋の牢屋なんて流行らない。
仲間にもいろんな奴がいるから、うるさい奴や凶暴な奴と相部屋になることのない独房のほうが気楽でいい。
ただひとつ困ったことは、これじゃあユキがどこに居るのか、姿が見えないことだ。
まあ姿は見えなくても、声なら分かるだろう。
そう思い、大声でユキの名前を叫んでみた。
すると、俺の叫び声を打ち消すように、沢山並んだ独房の奴らが一斉に好き勝手に叫び声を上げやがる。
沢山の声の中に、ユキの声を確認することはできたが、うるさすぎてユキが何を言っているのか分からない。
「黙れ!」
俺が怒鳴ると、仲間の叫び声はさらに大きくなる。
あまりの騒音に頭痛がしてきた。
体もまだ怠い。
とりあえず、騒ぎが収まるまで寝ることにした。
しばらく寝ていると、辺りが静かになっていた。
俺は小さな声で、隣の独房に入っている仲間にユキの事を訪ねてみた。