実行
月の高い夜。
微かな風が鼻先をかすめて通った。
”もう、腹を括るしかない”
供養塔に体をあずけて横になっていた体を起こし、決断した。
捕らえられる確率の方が高くとも、やるしかないのだ。
助けに行くことが、ユキが俺にくれた愛情に応える精一杯の誠意だから。
今度は決して逃げない。
俺がどうなろうとも、絶対にユキだけは逃がしてみせる。
次の日、俺はユキが捕まったあのグラウンドに行ってみた。
情報通り仲間がいた。
俺は、道路を隔てた森の影からチャンスを窺う。
そこには捕らえられた仲間たちが、監視人付きでフェンスの中で運動をさせられている最中だった。
大勢の仲間たちに混ざっても、美しいユキは直ぐ分かる。
他の仲間が奴らの言いなりになっているなかでも、気の強いユキだけは言うことを聞かず監視人を手こずらせていた。
凛々しいその姿を見ると、心が燃えるように熱くなる。
しばらくチャンスを窺っているうち、丁度奴らが帰り支度を始めた。
いくら言いなりになったとはいえ、さすがに俺たちの仲間は奴等には手ごわいらしく手間取っていた。
そして、そこにスキが見えた。
”今だ!”
勢いよく森から飛び出そうとした瞬間、ユキが俺に気が付いて何か叫ぶ。
何を言われたのか分からなかい。
ユキの叫び声は、直ぐ近くで鳴るクラクションの音が掻き消した。
それには構わずに、俺はユキだけを見て猛然と走った。




