供養塔
夜の供養塔周辺は、蠟燭の灯がともり物悲しい。
幸いなことにユキが埋葬された痕跡はなかった。
しかしここには、おびただしい数の霊魂が眠っている。
あらためて奴らの犯した罪と過ちを思い知り、同時にこのおびただしい蝋燭の意味も俺は知っている。
これは俺たちの仲間の死に対する哀悼の意味を示す。
そういう友好的な奴等が金を出し合って、こういった集団埋葬場や供養塔を造ったのだ。
でも、供養塔を造るくらいなら、最初から俺たちを捕らえなければいいのではないか?
そして、俺はここでユキの安否確認を一週間続けていた。
だが、それは意味のないこと。
やはり、俺は今でも逃げているのだ。
この供養塔で確認できるのは、ユキの”死”だけなのだから。
月の居ない真夜中、供養塔に寄りかかりユキを救出する作戦を考えた。
生きている世界で、自分が生き残ること考えるとイライラしてくる。
どうしても生き延びるためには、奴等が最大の障害になる。
しかし、こうして死の世界に近い場所にいると、何故か妙に心が落ち着く。
ユキを救出する作戦はまだ見つからないが、ここで隠れていても何もならない。
次の日から俺は堂々と表に出た。
とりあえずなるべく大勢の人たちと接して、情報をより多く集める必要があるのだ。