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ユキの香り
今日の奴隷市には、なんだか見覚えのあるやつが来ていた。
この男、どこかで見たような気がする。
相手のほうも、俺の事を覚えているらしく、いちいち構ってくるので正直面倒くさい。
何回目か、男の手を跳ねのけようとしたとき、不意にユキの匂いがした。
なんで、この男からユキの匂いがするのだろう?
改めて男の顔をよく見る。
女!
そうだユキを連れて行った、あの女と一緒に来ていた男だ。
手を差し出す男の袖口から、何とも言えない懐かしい甘いユキの香り。
俺は陶酔するように、男の手に縋りついていた。
奴隷市が終わり、男が去った後、いつもの檻に戻る。
監視人たちが楽しそうに、なんだかソワソワしている。
死刑執行かぁ?
そんなわけないのは分かっていたが、奴らにそう声を掛けた。
職務とは言え死刑執行の日監視人たちは、自分たちの仲間が死ぬように辛く感じるらしく暗く神経質な雰囲気なのだ。
いままでの経験上、このソワソワ・ウキウキした雰囲気は、誰かが貰われて行く準備。
ユキがそうだったように、お風呂に入って散髪もして綺麗になって旅立って行く。
「誰だ、この幸せ者は」
他の仲間に聞こえるように大きな声で言った。




