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別れ

 ユキは結局、この日の奴隷市に来ていたカップルの女のほうに引き取られることになった。


 これでユキの命が繋がった。


 喜びは束の間。


 ユキの命が繋がったと言うことは、ユキはもうここから出て行ってしまうと言うこと。


 今生の別れ。


 別れの日、お風呂にも入れられてカットもしてもらったユキの姿は、まるで花嫁さん。


 ユキの最後の我儘で、その花嫁さんが牢の仲間たちに挨拶して回った。


「綺麗だよユキ。幸せになれよ」


 まるで娘を嫁に送り出すお父さんの台詞にユキが噴き出して笑う。


「馬鹿ね、それじゃお父さん。アキラは私の恋人でしょ」


 笑顔の目には涙が溜まっていた。


「アキラ。今度会えたら……」


 そこまで言うのが精一杯だったのだろう。


 ユキは声を詰まらせて黙った。


「分かっている。心配すんな」


 分からなかったけれど、元気よく答えた。


 俺の言葉がまだ終わらないうちに、ユキの厚い唇が俺の唇をふさいだ。


“抱きたい!思う存分ユキを抱きしめたい!”


 衝動にかられ激しく鉄格子にぶつかったけれど、ガシャガシャと頑なな音が鳴るだけで外の世界に通じる門はびくともしない。


 涙で霞んだ目が、離れていくユキを一層綺麗で神秘的に映し出していた。

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