畜生
腹ペコでヨレヨレの俺は、残った気力と体力を振り絞り夜中にコッソリと残飯を漁る。
これじゃぁ、まるで野良猫じゃないか。
でも、今は仕方がないのだ。
逃げた俺を、いつ奴らが捜しに来るか分からない。
とにかく今は人の目に付くのはマズイ。
何も考えがまとまらないまま捕まるわけにはいかない。
カサカサと枯葉を踏む音に驚いて振り向くと、猫の目が妬ましそうに光っていた。
「フンッ。野良猫か」
驚かされた腹いせに威嚇すると、猫はサッと闇に消えた。
この辺りは観光地なので、ゴミの収集は毎日早朝に来る。
だから、取りやすい上のほうにあるのは、残飯と言っても”腐った物”ではなく、言うなれば”新鮮な残飯”だ。
中には団子や餅なんかもある。
甘いものは有難い。
脳がよく働く。
ひととおりゴミ箱を漁ると、頭が冴えてきた。
先ずはユキの安否確認をしよう。
ユキがまだ生きているか、もう死んだかは意外に簡単に調べることが出来る。
ユキが死んだ場合、おそらくはこの坂道の途中にある畜生用の集団墓地に埋葬されるはずだ。
癪に障るが、催事を仕切る奴等は俺たちの事を”畜生”と呼び、自分たちの墓地とは違う場所に葬る。
俺は柵を潜り抜け”供養塔”と呼ばれる高い塔のある畜生用の集団墓地に忍び込みユキの痕跡を探した。