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バカップル
ユキのお目当ては、若いカップル。
女のほうは前に二度見た覚えがある。
ユキは俺を連れて行き、しきりにこの二人の前でバカップル振りをアピールする。
若い男女は、俺たちを見て笑っていた。
特に女のほうは、何が気に入ったのか俺を指さして大笑いをしている。
「笑いもんじゃねーぞ!」
俺は時折ガンを飛ばすが、それが女にとっては面白いらしく、笑いのボリュームを上げるだけになってしまう。
「いい加減にしやがれ」
俺が諦めて、ふて寝を決め込むと、女は優しく俺の頭を摩ってくれてこれが妙に落ち着くというか、気持ち好い。
撫でられるままおとなしくしていると、ユキが割って入る。
女の前で、ユキはいちゃ付いて来る。
「よせよ人の見ている前で」
「嫌よ」
「なんで?」
「だってアキラのこと好きなんだもの。このままだと、この女にアキラのこと取られちゃうじゃない」
女にここまで言わせるなんて、俺は何て罪作りな男なんだろう。
ひとり自惚れながらユキを抱いていた。




