ユキの事
負けず嫌いで、気の強い子。
曲がったことが嫌いで、正義感が強い。
頑固で、一直線。
そして、優しくて可愛い子。
それがユキ。
俺は、あの雨の日に、ずぶ濡れで泥だらけのユキを助けた。
ユキは元々、優秀な奴隷として、その地位を築いていた。
それが、あの雨の日に信頼していた主に裏切られた。
まだ若いユキにとっては相当なショックだっただろう。
主の命令には従順に従い、いつも綺麗にして可愛がられるようにしていた。
奴隷になった仲間たちは、たいていの場合そうして長く主に使える。
主は、捕獲者から身を守ってくれる。
粗末だが、食事も与えてくれる。
そんな暮らしに満足している仲間が、俺は大嫌いだった。
俺には奴隷の経験はない。
だけど、そのときのユキの気持ちは分かった。
信頼するものに裏切られたこと。
もちろん俺も男だから、ユキの容姿に魅かれたことも確かだ。
これ程の美人でも、奴らはある日突然態度を変えられる。
酷い虐待に合った仲間も知っていたけれど、ユキには、それが分からなかった。
奴らは、ある日突然、何の前触れもなしに裏切ることを。
雨の日にユキは、まるでゴミを捨てるように主に捨てられたのだ。




