1.一話文字数の最適値は何千文字台?
以下は「完結済み10万文字以上」の全て、12,018作品を調べた結果です。
なお対象は、前話で記したように四大ジャンル(=『恋愛』『ファンタジー』『文芸』『SF』)です。
データ取得ですが、一つの作品の総文字数や話数(小説情報で部分と表記されるものの数)はAPIで可能です。
一話の平均文字数はAPIで取れませんが、「総文字数/話数」を作品ごとに計算して「一話文字数」としました。
さて「完結済み10万文字以上」全体で、上位に入りやすい一話文字数(何千文字台)を一つだけ挙げるなら?
その答えが上記です。千文字台ごとに該当作品を集計し、全体や総合評価ポイント(以降、ポイントと表記)の上位について、数や割合を確かめました。
ただし、あくまでも「一つだけ挙げるなら」です。どこまで許容範囲かは、順を追って説明します。
まず表を記載しますが、今回の後半でグラフとして纏めています。ザックリ把握したい場合、そちらをご覧になってください。
表1: 一話文字数の千文字台ごとの作品数・ポイント上位突破率(完結10万~)
一話文字数(千文字台): 話(部分)の文字数を千文字台(1,000~1,999文字など)ごとに分けた範囲
作品数 全て : 該当範囲の全作品数 → ①
作品数 上位5% : 該当範囲のポイント上位5%に入った作品数 → ②
作品数 上位25%: 該当範囲のポイント上位25%に入った作品数 → ③
突破率 上位5% : 該当範囲のポイント上位5%に入った割合(=②/①)
突破率 上位25%: 該当範囲のポイント上位25%に入った割合(=③/①)
ポイント上位n%は、全12,018作品での上位n%を意味します。
「作品数 上位5%」なら該当範囲の何作品が全体の上位5%に入ったか、「突破率 上位5%」なら該当範囲の何割が全体の上位5%に入った(突破した)か、を意味します。
数や率が最も多い箇所は、表内の該当部分を赤字にしました。
作品数で多いのは「一話あたり3千文字台」、突破率で多いのは「一話あたり4千文字台」だと分かりました。
この場合は後者、つまり突破率を重視すべきでしょう。
1千文字台と7千文字台の上位25%を例にします。
・1千文字台
上位25%以内=211作品
該当範囲の総数=1,042作品
上位25%突破率=20.2%
・7千文字台
上位25%以内=106作品
該当範囲の総数=410作品
上位25%突破率=25.9%
一見すると1千文字台が有利に思えます。しかし該当範囲の作品数に大きな差があり、上位25%の突破率では7千文字台が勝っています。
双方とも該当範囲の作品数は充分にあるので、1千文字台より7千文字台が上位25%に入りやすいと考えて良いでしょう。
そして突破率が最も高いのは、上位5%と上位25%のどちらも「一話あたり4千文字台」です。したがって一話4千文字台を意識して書けば良さそうですが、分布の傾向はどうでしょう?
以下に作品数と突破率の双方を、グラフで示します(作品数は比較のために掲載しました)。
図1a: 一話文字数の千文字台ごとの全作品数(完結10万~)
図1b: 一話文字数の千文字台ごとの上位5%作品数(完結10万~)
図1c: 一話文字数の千文字台ごとの上位25%作品数(完結10万~)
図1d: 一話文字数の千文字台ごとの上位5%突破率(完結10万~)
図1e: 一話文字数の千文字台ごとの上位25%突破率(完結10万~)
作品数で眺めると、一話あたり2千文字台~4千文字台が非常に突出しています。
しかし上位への入りやすさは、一話あたり3千文字台~5千文字台を中心に緩やかな山を描いています。
「一部に集中しているように思える」しかし実際は「その一部の数が多い」だけ。よくあることです。
たとえば東京区部ですが、二十三区の総面積は日本全体の約0・17%です。しかし二十三区の総人口は日本全体の約7.5%、45倍もの差があります。
何かの統計で「二十三区は○○が全国平均の四十五倍」とあっても、人数を並べただけなら単に人口の差、割合は全国平均と変わりません。
そこで普通は「千人あたり」など割合として示すはずです。
少なくとも、今回のケースについては上記が当てはまるでしょう。そこで突破率でボリュームゾーンを考えます。
上位25%突破率のグラフ(図1e)でしたら該当箇所が25%近辺なら充分ボリュームゾーンだと思います。上位5%突破率のグラフ(図1d)と合わせると、一話あたり2千文字台~7千文字台までをボリュームゾーンとしても良いくらいです。
つまりボリュームゾーンを考える必要はありますが、かといって「ここじゃなきゃダメ!」というほどシビアではありません。
どこか一つ選ぶなら4千文字台、しかし前後も充分に広い。こういうことのようです。
とはいえ「完結済み10万文字以上」の中身は様々です。そこで次話では、ポイント順に分けてみます。
画像での見出し文字、いかがでしょうか?
図表を使っているから画像表示できる環境専用の作品、それなら使っちゃえと(笑)
「見やすい/見にくい」など、お気軽にコメントお願いします!