5.ポイントと会話率の相関関係
対象全て、連載中、完結済みのそれぞれに対し、散布図で相関関係を表しました。
また、投稿開始時期による違いも少しだけですがご紹介します。
「2.連載中と完結済みの違い 補足:ポイントと各種情報の相関関係」では、総文字数、話数、一話文字数を取り上げました。
しかし会話率との相関関係は未掲載ですので、以下に示します。
図31a: ポイント・一話文字数の相関(連載中&完結済み10万~,対数表記なし)
ゼロポイント付近だと、会話率は最小の0%から100%まで点が連続しています。しかしポイントが増えるほど40%付近に収束していくようです。
とはいえ数万ポイントでも、20%を超えたあたりから50%くらいまで切れ目なく点が連続しています。したがって一定の評価を受けている作品でも充分に多様と読み取れます。
しかし詳細が分かりにくいので、ポイントを対数表記にしてみます。
図31b: ポイント・会話率の相関(連載中&完結済み10万~)
ポイントは100ポイント以上に限定しました。
前回と前々回で示した平均値や中央値の通り、会話率は40%弱が中心のようですが、上下とも充分な幅があります。
ただし上記のグラフは『全ジャンルを纏めてデータ化したもの』です。
ジャンル、作風、対象年齢層などで適切な会話量は違うと思いますし、時代による好みの変化もありそうです。ですからあくまで目安とし、自身の書き方や作品の内容に相応しい分量に仕上げれば良いと思います。
以下に連載中と完結済みの集計結果を添付します。ただし傾向は双方とも同様です。
図31c: ポイント・会話率の相関(連載中10万~)
図31d: ポイント・会話率の相関(完結済み10万~)
点がバラけているのは区分ごとに分けたため範囲内の数が減ったためです。そして連載中のほうが完結済みより多いので、点の量や密度にも差があります(連載中=16,633作品、完結済み=12,689作品)。
前回や前々回の調査結果では、各種データが『なろう』の開始から現在まで徐々に変化していると分かりました。そこで時期により会話率の散布に差があるのかを確かめたいと思います。
なお今までと同様に時期は下記の五つに分けています。
表23(再掲載): 時期の区分
※調査時点の2018年5月上旬だと、最新作品のNコードは「N0000EU」より少し後。
以下では、初期、勃興期、直近一年の三つを例として掲載します。
図32a: 【初期】ポイント・会話率の相関(連載中&完結済み10万~)
図32b: 【勃興期】ポイント・会話率の相関(連載中10万~)
図32c: 【直近一年】ポイント・会話率の相関(完結済み10万~)
ご覧のように対象作品の多寡によって点の密度は違いますが、会話率の集中している場所は似通っています。元々変化があるとはいえ、以下のグラフが示すように2%~3%の推移だったので妥当な結果でしょう。
図23a(再掲載): 時期による会話率の平均値の推移(連載中&完結済み10万~)
これだけでは少々寂しいので、以下に期間での変化が大きかった項目、一話文字数について示します。
図33a: 【初期】ポイント・一話文字数の相関(連載中&完結済み10万~)
図33b: 【勃興期】ポイント・一話文字数の相関(連載中&完結済み10万~)
図33c: 【直近一年】ポイント・一話文字数の相関(連載中&完結済み10万~)
二番目の勃興期に比べ、三番目の直近一年は明らかに点が下へと移っています。
これは一話文字数に大きな変化があったからです。勃興期から直近一年の中央値は、連載中と完結済みを合わせた全体だと500字以上、上位25%で1000字近く下がっています。
以下に該当データのグラフを再掲載します。
図22b(再掲載): 時期による一話文字数の中央値の推移(連載中&完結済み10万~)
図27b(再掲載): 時期による一話文字数の中央値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
会話率も上下に大きな幅があると確認できました。つまり平均値や中央値を厳密に意識する必要はなく、作品に応じた創作をすべきだと考えます。
とはいえ0%付近や100%付近など極端なものは、あまりお勧めできません。実験作品としてチャレンジするのは良いと思いますが、多くの好みから外れているのは間違いないようです。
また一話文字数のように時期ごとの変化が大きい項目は、散布図でも充分な変化が読み取れました。
このような項目に関しては、先々の傾向を探るなら最近のデータのみを扱ったほうが良さそうです。もちろん全体を見ないと変化が読み取れませんから、双方を併用しつつ将来の推測では直近数年くらいに絞るべきだと思います。
時期という切り口のみでも違いが浮き上がりましたし、やはりジャンルごとなどに分けて考える必要がありそうです。
そこで次回からは、ジャンル別のデータをご紹介します。
次回はジャンルごとの違いに触れます。