4.投稿開始時期による違い 『なろう』誕生から現在まで(ポイント上位25%以内)
前回の話も同日(2018年7月7日)公開しています。
未読の方は一話前からお読みくださるよう、お願いします。
前回記した通り、対象をポイント上位25%に限定しました。つまり以下で扱う作品は下記の双方に該当するものとなります。
・総文字数が10万字を超える連載小説(連載中・完結済みの双方を含む)
・上記のうち、総合ポイント順に並べると上位25%に入る作品
このポイント上位25%の下限は770ポイントです。したがって相応しい魅力があるはずですし、そこに焦点を当てて多くの読者が目を留める傾向を探りたいと思います。
なお調査項目の纏め方や掲載順は、前回と同じです。
まず全期間の傾向です。話数、総文字数、一話文字数、ポイント、会話率を載せています。
表25: 【全期間】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
下記に比較のため、全作品を対象としたものを再掲載します。
表22(再掲載): 各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
上位作品には長期連載が多いため、話数や総文字数は伸びています。
一話文字数は平均値が千文字少々から五百文字ほどと大きく減少し、中央値が僅かに減りました。
会話率は上位作品のほうが2%~3%ほど下がっています。
なお作品数ですが、全作品に比べると上位25%では連載中の割合が増えています。全作品だと連載中作品は56.7%でしたが、上位25%だと60.5%です。
前回示した時期の区分を、以下に再掲載します。
表23(再掲載): 時期の区分
※調査時点の2018年5月上旬だと、最新作品のNコードは「N0000EU」より少し後。
以下の表は詳細に確認したい方向けです。次項に情報種別ごとの推移をグラフで示したので、概要のみを把握したい場合は次の見出しまで進んでください。
表26a: 【初期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
※初期=~2011年12月30日
表26b: 【勃興期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
※勃興期=2011年12月30日~2014年3月8日
表26c: 【成長期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
※成長期=2014年3月8日~2015年12月7日
表26d: 【円熟期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
※円熟期=2015年12月7日~2017年5月26日
表26e: 【直近一年】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~,上位25%)
※直近一年=2017年5月26日~
各情報種別の時期による推移です。
なお今回も話数と総文字数はグラフ化の対象から除外しました。
図27a: 時期による一話文字数の平均値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
図27b: 時期による一話文字数の中央値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
上記で見る限り、中央値は勃興期(2011年12月30日~2014年3月8日)への過程で上昇して後は下降していきます。
平均値は初期(~2011年12月30日)と勃興期がほぼ同じで、後は下降していきます。
大まかに言えば、現在は双方とも最も多い時期より千文字ほど減っています。
そして直近一年なら『なろう』で人気がある10万字以上の小説は、平均で一話4000文字を切り、半数が3500字未満と分かります。
図28a: 時期による会話率の平均値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
図28b: 時期による会話率の中央値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
会話率ですが、元のデータが整数のため中央値は重なっています。そのため以下では平均値で読み取れることを記します。
連載中の平均値は、初期の37%少々から直近一年の39.5%ほどまで緩やかに上昇しています。最近は伸びが鈍化しているらしく、この先どのように変化するか注目したいところです。
完結済みの平均値は、初め上昇して成長期(2014年3月8日~2015年12月7日)を頂点に下降していきます。ただし作品数だと連載中が六割を占めるため、双方を合わせると連載中と似た曲線になります。
上記からすると会話率が伸びていくと一概には言えませんが、完結区分を考えずに全部纏めると微増傾向にあるようです。
なお連載中と完結済みの違いに関しては、想像できることはあるものの根拠に乏しいため記しません。
図29a: 時期によるポイントの平均値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
図29b: 時期によるポイントの中央値の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
ポイントは勃興期(2011年12月30日~2014年3月8日)が最も多く、後は下り坂です。やはり長期掲載しているものにポイントが集まりやすいようです。
また、中央値の円熟期(2015年12月7日~2017年5月26日)を除くと完結済みより連載中のほうが多くのポイントを得ています。
やはり現在でも連載している作品のほうが、より注目されるのでしょう。
平均値のグラフは前回の該当範囲全作品のものと同傾向ですが、中央値は異なります。
該当範囲全作品の場合、中央値も平均値と同様に初期から勃興期にかけて上昇、勃興期を頂点として以降は減少していきました。
しかし上位25%の完結済み作品は、中央値の推移が少なく勃興期から円熟期にかけて幾らか盛り上がっているのみです。
これも想像できることはあるものの、根拠に乏しいため記しません。
図30a: 時期による作品数の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
図30b: 時期による作品数の割合の推移(連載中&完結済み10万~,上位25%)
作品数は前回と同じく、円熟期(2015年12月7日~2017年5月26日)が一番多くなりました。しかも推移も殆ど同傾向です。
ただし割合では勃興期と成長期が5%ほど上昇し、円熟期が逆に5%近く減りました。
つまり全体より上位25%のほうが、過去作品の占める率が高くなっています。これは上位だとランキングなどで人目に触れる機会が多いので、過去作品が読まれる率も上がるからだと思います。
一話文字数に関しては、近年は四年以上の長期に渡って明らかに減少しています。しかも平均値と中央値の双方で、最も多い時期より千文字ほども減っています。
これは二割やそれ以上の減少ですので、大きな変化といって良いでしょう。
会話率は全体としては微増傾向ですが、上位25%だと連載中と完結済みで異なる曲線を描きました。
しかし上位25%の完結済みも、最も多いときから1.5%弱が減ったのみです。一話文字数の減少に比べれば、増加にしろ減少にしろ僅かな違いでしかありません。
そのため以下のことが言えると思います。
・ここ数年の『なろう』の作品は一話文字数を大きく減らしている。
・会話率の変化は少なく、敢えていえば微増傾向。
また、ポイントに関しては昔の作品のほうが多いと分かりました。しかし『なろう』開始から2011年末ごろの作品はポイントが少なく、その直後から2014年3月の作品が最も得ています。
これは『なろう』がメジャーになった時期と重なっていると思います。書籍化作品が連続するようになり、認知度が大きく向上した時期です。
もしこれを新規作品に誘導するなら、以下のような方策が考えられます。
・投稿開始から一年以内など、新規作品のみのランキングを別に作る。
・検索やランキングに新規作品だと分かるような目立つマークを付ける。
ただし読者の立場からすると、古くても(あるいは長く続いていても)名作であれば読みたいでしょう。したがって、あまりに露骨な新規作品への誘導は害悪になるかもしれません。
もし実装するなら、それらのバランスを考慮する必要がありそうです。
作品数に関しては、大よそ予想できる範囲ですので割愛します。
一話文字数や会話率からすると、徐々に書き方が変わっているのは間違いないようです。そして変化は読みやすい形式を目指した結果のように思います。
ただし会話率は平均値と中央値を示しただけなので、次の話でポイント・会話率の散布図を示します。
次回は会話率の散布図を掲載します(期間別の図も掲載)。




