3.投稿開始時期による違い 『なろう』誕生から現在まで
今まで挙げた項目は『なろう』の初期と現在で違うのか。それを調べてみました。
今まで挙げてきた情報は、投稿時期による変化があります。『なろう』の歴史は2004年からですし、14年も経過すれば徐々にでも変わっていくようです。
そこで下記では作品を投稿開始時期で分け、その違いを示します。
まずは全期間の傾向です。話数、総文字数、一話文字数、ポイント、会話率を載せています。
会話率とは、名前の通り作品にどのくらい会話が含まれているかの割合です。これは『なろう』が提供するAPIで取得できます。
ただし会話率は割合が返ってくるだけなので、本当に正しいか疑問が残ります。それにAPIの技術マニュアルには通常の括弧で閉じている行のみを対象にしているとあります。
つまり『』や《》などを特殊な会話の表現として用いた場合、対象とはなりません。また括弧で始まっても閉じずに改行して一つの会話を複数行で表現する場合、最後の行のみが対象になるはずです。
そのため割合自体は参考にしかなりませんが、変化により会話の増減の傾向が読み取れると考えて調査対象にしました。
表22: 【全期間】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
これだけでは意味がありませんが、時期別のデータとの比較用に載せました。
なお上記の会話率は綺麗に揃っていますが、計算ミスではありません。APIで取れる会話率は整数値なので一致していますが、平均値は小数点第三位以下から差異がありました。
それに下に掲載する時期別のデータは整数部や小数点第一位から違いました。
時期別のデータですが、14年間を一年ごとに載せるのは面倒ですし、あまり細かすぎても意味がないと考えました。
そこで『なろう』の始まりから現在までを、以下のように五つに分けてみました。
表23: 時期の区分
※調査時点の2018年5月上旬だと、最新作品のNコードは「N0000EU」より少し後。
見ての通り、Nコードで分けました。
Nコードとは個々の作品に固有の番号で、上記のように連番で振られます。つまり最初の「N0000A~N9999Z」は26万のNコードを含みます。
ただし番号を取っても投稿しなかった作品、投稿したが既に削除された作品があり、実際には遥かに少ない数となります。
仮に全てのNコードが作品に使われていれば120万以上となりますが、現時点で公開されている作品は57万台です。
なお大幅な乖離の原因には、以下もあります。
・Nコードは関連サイトを含めて共通している。
・過去に『にじファン』(二次創作作品の投稿サイト)の終了で大量削除があった。
以下の表は詳細に確認したい方向けです。次項に情報種別ごとの推移をグラフで示したので、概要のみを把握したい場合は次の見出しまで進んでください。
表24a: 【初期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
※初期=~2011年12月30日
表24b: 【勃興期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
※勃興期=2011年12月30日~2014年3月8日
表24c: 【成長期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
※成長期=2014年3月8日~2015年12月7日
表24d: 【円熟期】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
※円熟期=2015年12月7日~2017年5月26日
表24e: 【直近一年】各種情報の平均値・中央値(連載中&完結済み10万~)
※直近一年=2017年5月26日~
各情報種別の時期による推移です。
なお話数と総文字数は基本的に投稿期間が長いほど増加するので、グラフ化の対象から除外しました。
図22a: 時期による一話文字数の平均値の推移(連載中&完結済み10万~)
図22b: 時期による一話文字数の中央値の推移(連載中&完結済み10万~)
上記で見る限り、中央値は勃興期(2011年12月30日~2014年3月8日)で上昇して後は基本的に下降していきます。
平均値は連載中が下降、完結済みが上昇です。しかし次話で掲載しますがポイント上位25%以上では別の傾向を示します。
図23a: 時期による会話率の平均値の推移(連載中&完結済み10万~)
図23b: 時期による会話率の中央値の推移(連載中&完結済み10万~)
会話率ですが、元のデータが整数のため、中央値は重なってしまいました。別の形式にすればよかったのですが、平均値と中央値が近いのでそちらで傾向を読み取ることにします。
平均値は連載中と完結済みの双方とも上昇していきます。つまり徐々に会話率は上がっています。
一話文字数の中央値は下降しており、一部の例外を除けば文字数が減っていると分かります。
したがって率としては増えても、会話の文字数自体は減っています。ただし会話率が上がっているので、地の文のほうが少しだけ多く減ったようです。
図24a: 時期によるポイントの平均値の推移(連載中&完結済み10万~)
図24b: 時期によるポイントの中央値の推移(連載中&完結済み10万~)
ポイントは勃興期(2011年12月30日~2014年3月8日)が最も多く、後は下り坂です。やはり長期掲載しているものにポイントが集まりやすいようです。
また、どの時期も連載中のほうが高くなっていますが、これは現在でも連載している作品のほうが完結した作品より注目される期間が長いからだと思います。
図25a: 時期による作品数の推移(連載中&完結済み10万~)
図25b: 時期による作品数の割合の推移(連載中&完結済み10万~)
作品数は円熟期(2015年12月7日~2017年5月26日)が一番多くなりました。これは以下の理由からだと考えます。
・古いものほど削除されたものが多い。
・直近一年は、これから10万文字に到達するはずの作品も含んでいる。
・直近一年は現在のNコードからすると、対象範囲が二割以上狭い。
つまり作品数に関しては、予想通りというべき結果でした。
全体の傾向としては以上です。しかし統計的興味からはともかく『なろう』で多くの方に読んでもらえる傾向を探るには不充分です。
なぜなら一話文字数などは、ポイント上位の作品と下位の作品で明らかに傾向が異なるからです。
ポイントはブックマークと評価の合計ですから、それだけ多くの人が読んだ証拠でもあります。ブックマークに関しては読む前につける場合もありますが、それも期待値と考えれば読まれる要素の一つとして良いでしょう。
つまり、ある程度読まれた作品を対象にするには、ポイント上位に限定すれば近いものとなるはずです。
以下にポイントと一話文字数の相関図を示します。
図18(再掲載): ポイントと一話文字数の相関(連載中10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
図26: ポイントと一話文字数の相関(完結10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
※上記は図18と同様に、新規取得データ(2018年5月上旬)を元に作成。
このようにポイント下位では一話文字数が急激に増加していきます。
これは以前の話で記したように、『なろう』の形式を気にしない作品や他サイトからの転載で細かく話を分けていない作品が多いからだと思います。
そこで次回はポイント上位25%のみを対象にして、今回と同様の図表を掲載します。
連載中と完結済みを合わせた全作品だと、上位25%の下限は770ポイントでした。そのため特別な上位作品のみではありませんし、多くの方の参考になると思います。
次回はポイント上位25%の作品群に対する同様の調査です。




