1.連載中と完結済みの違い(既出情報と比較)
新たに連載中を含む「10万文字以上の全て」のデータを取り直し、更にジャンルや会話率など取得項目を増やし、古い作品と新しい作品の比較もしました。
しかし、まずは今まで掲載した完結済み作品との違いを簡単にご紹介します。
以下では「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容と、新規に調べたうち連載中作品について同様の集計を行った結果を比較します。
調査時期は以下の通りです。
・「1.1.完結済み10万文字以上の全て」のデータ
2018年2月中旬
・新調査による連載中作品のデータ
2018年5月上旬
三ヶ月近く経過していますが、新調査の完結済み作品を確かめたところ殆ど変わっていませんでした。
そのため、ここでは新調査の完結済み作品についてを掲載しません。
まず「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容の再掲載です。
表1(再掲載): 一話文字数の千文字台ごとの作品数・ポイント上位突破率(完結10万~)
一話文字数(千文字台): 話(部分)の文字数を千文字台(1,000~1,999文字など)ごとに分けた範囲
作品数 全て : 該当範囲の全作品数 → ①
作品数 上位5% : 該当範囲のポイント上位5%に入った作品数 → ②
作品数 上位25%: 該当範囲のポイント上位25%に入った作品数 → ③
突破率 上位5% : 該当範囲のポイント上位5%に入った割合(=②/①)
突破率 上位25%: 該当範囲のポイント上位25%に入った割合(=③/①)
該当作品数: 12,018作品(表の掲載範囲以外も含む)
次は新調査の連載中作品を同じように纏めた結果です。
ただし今回は「上位5%」の部分を省き、「全て」と「上位25%」のみ掲載しています。概要の比較が目的なので、他も幾つかの調査項目を割愛しました。
表19: 一話文字数の千文字台ごとの作品数・ポイント上位突破率(連載中10万~)
該当作品数: 16,633作品(表の掲載範囲以外も含む)
一見すると、あまり違いがないように感じます。突破率は4千文字台から3千文字台に移りましたが、元々が僅差ではありました。
ただ、次回以降に示しますが徐々に一話ごとの文字数が短くなっています。「連載中=新作が多い」と考えると、より新しい作品の傾向が表れた可能性はあります。
以下に図にしたものを掲載します。
まずは「1.1.完結済み10万文字以上の全て」からの再掲載です。
図3e(再掲載): 一話文字数の千文字台ごとの上位25%突破率(完結10万~)
次に新調査の連載中作品です。
図17: 一話文字数の千文字台ごとの上位25%突破率(連載中10万~)
連載中は四割近く作品数が多く、数量を表す線は随分上に移りました。しかし傾向は似通っています。
連載中は1万文字以上でも突破率が高いように見えますが、これは該当範囲の作品数が少ないからで有意性に欠けます。
該当範囲の作品数は百数十から十数、突破数も三十以下から数作品と非常に少なく、僅かな違いで率が大きく変わります。ですから右半分の突破率は無視して良いと思います。
これらを踏まえると、双方とも傾向としては大差なさそうです。
今回も最初は「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容の再掲載です。
表2a(再掲載): 話数・文字数の平均値・中央値(完結10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
総文字数の範囲: 作品全体の文字数による区分け
話数: 作品に含まれる話(部分)の数
総文字数: 作品全体の文字数
一話文字数: 話(部分)ごとの文字数
次に新調査の連載中作品です。
表20a: 話数・文字数の平均値・中央値(連載中10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
話数と総文字数は、明らかに連載中のほうが増えています。そして一話文字数は若干ですが連載中のほうが減っています。
実は連載中には何年にも渡る長期連載が多く含まれています。
総数は16,633作品ですが、そのうち最近約一年のものは4,473作品、26.9%でしかありません。
つまり、およそ73%は一年以上の長期連載で、四年以上続いているものも全体の13%以上あります。そのため話数や総文字数は増えていますし、傾向も新規作品とは少々ずれます。
以下に、一話文字数の推移のみグラフにしてみました。
図2a(再掲載): ポイントと一話文字数の相関(完結10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
図18: ポイントと一話文字数の相関(連載中10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
連載中のほうが変化は緩やかですが、傾向は似ています。
おそらくですが、連載中で右側の増加が減った理由は、他サイトからの一括転載が殆ど含まれていないからだと思います。仮に他サイトからの転載でも、長期間で徐々に更新するならサイトの傾向に合わせて分割などの工夫する方も多いでしょう。
最初は「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容の再掲載です。
表2b(再掲載): ポイントの平均値・中央値・下限(完結10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
ポイント: 作品のポイント(総合評価)
ポイントの下限: 該当範囲で最小のポイント
次に新調査の連載中作品です。
表20b: ポイントの平均値・中央値・下限(連載中10万~,ポイント順で上位から5%刻み)
ポイントは連載中のほうが何割も多いです。全体の平均、上位25%の平均、上位5%の平均は三つとも1.8倍を超えています。
高ポイント作品以外も連載中のほうが何割か多いので、更新回数が多い分だけ目に留まると考えられます。それと連載中を好む読者が多いのかもしれません。
しかし俗に言う『完結ブースト』(※)があり、完結済み作品のほうが高ポイントになるのでは、と思っていたので少々意外でした。
ただし「表2b」で見る限り完結済み上位50%の下限は99ポイントですから、少なくとも半数はブーストというほど増えていません。1000ポイントを超えるのは上位20%以上ですし、必ずブレイクするわけでもなさそうです。
それに前回の「1.シュレーディンガーの完結作品」で記したように、区分上は完結でも実質的に「未完」の作品もあります。このような場合はブーストしないでしょうし、きちんと終わっていても多くの読者が首を傾げるエンディングであれば伸びないでしょう。それどころかブックマークや評価を取り消す人すら出るかもしれません。
完結ブーストがあるのは事実ですが、激増する作品は全体からすれば随分と少ないのでしょう。そのため一定範囲で平均や中央値を出すと、連載中として更新し続けたほうが高ポイントになるのだと思います。
※完結ブースト
完結により評価でポイントが増えること。ランキングに載れば新たな人の目に留まって更に好循環が続き、ポイント大幅増となることもある。
最初は「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容の再掲載です。
表3a(再掲載): 話数・文字数の平均値・中央値(完結10万~,上位25%,総文字数範囲別)
・該当範囲の全作品数
10万~20万文字: 7,461作品
20万~30万文字: 1,884作品
30万~60万文字: 1,803作品
60万文字以上: 870作品
10万以上全て: 12,018作品
次に新調査の連載中作品です。
ただし30万以上全ては省いています。
表21a: 話数・文字数の平均値・中央値(連載中10万~,上位25%,総文字数範囲別)
・該当範囲の全作品数
10万~20万文字: 8,085作品
20万~30万文字: 3,215作品
30万~60万文字: 3,393作品
60万文字以上: 1,940作品
10万以上全て: 16,633作品
これを見る限り、10万~20万文字のように比較的短い作品ほど、連載中のほうが一話文字数が短くなっています。逆に60万文字以上だと大差ありません。
それに図の下に付けた範囲ごとの作品数で、長期連載が多いのも読み取れます。連載中は10万~20万文字だと8%少々多いだけですが、60万文字以上だと2.2倍です。
長い作品は古くからのものが多い。
長くなると毎日連載から週一や隔週に切り替えるから、代わりに一話文字数が増える。
慣れてくると沢山書けるようになる。
他にも色々想像できますが、二つ目と三つ目は調査した数字から読み取れないので保留します。一つ目の投稿時期での変遷は、次回以降で掘り下げます。
最初は「1.1.完結済み10万文字以上の全て」で示した内容の再掲載です。
表3b(再掲載): ポイントの平均値・中央値・下限(完結10万~,上位25%,総文字数範囲別)
次に新調査の連載中作品です。
こちらも30万以上全ては省いています。
表21b: ポイントの平均値・中央値・下限(連載中10万~,上位25%,総文字数範囲別)
総文字数の範囲ごとに見ても、ポイントは連載中のほうが多いです。
10万~20万文字と20万~30万文字は約四割り増し、30万~60万文字は七割近くの増加、60万文字以上は三割少々の増加です。
60万文字以上は元々のポイントが多いので、これ以上は簡単に増えないのだと思います。
とはいえ三割増ですから、連載を続けたほうがポイント的にはメリットがあるようです。
「連載中のほうが多くのポイントを得ている」のは「手応えのある作品を書き続けている」ということでしょう。
書籍化作品であれば、出版社から書き続けるよう要請があるかもしれません。それに書籍化するつもりがない場合でも、多くの感想が寄せられたらモチベーションが上がると思います。
「面白い」という肯定的な感想だけではなく、「ここはもう少し盛り上がりが」といった指摘もありがたいです。
アマチュアですから他者の意見を求めている人も多いと思います。読み手の反応を期待しての公開なら、全くの無反応ではガッカリするでしょうし……。
したがって「ポイント至上主義」などと言うつもりはありませんし、創作に限らず意欲が湧くものを続けるのは当然かつ良いことだと思います。
というわけで、感想をいただけると大変励みになります(笑)
本作以外も沢山のお声をお待ちしております!
追記:
感想欄でご指摘をいただき、完結ブーストとの関連に関する考察を追加しました。ご指摘ありがとうございます!