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期待しないでください 1

まだ完結してない作品しかないのに、つい新たなシリーズを書いてしまいました。

今回もまた苦労ヒロイン。

すみません。

どうぞよろしくお願いします。

「どうして・・どうして・・・」


そう悲劇のヒロインらしく、崩れ落ちるか弱い少女は、私を涙に濡れたその瞳に映した。


可憐で美しいその姿は、男の庇護欲をそそるだろう・・・これが俗に言うコマドリちゃんって奴かと全く別の思考が入るのは私だからだろうか。

茶色の髪を振り乱し、彼女は自身の不幸を憂いているのらしい。華奢な肩が震え涙の滴がドレスにたくさんの滴を落とした。

はい皆さん・・・。

そんな期待に満ちた目で私を見つめないでほしい・・得に彼女の周囲の皆さん。


そして濡れた美しいエメラルドの瞳が私を映すと許してとそう一心に訴えてくるのでついつい頷きたくなるし、もういいと言ってしまえばここで終わりだけど・・・いやーオーディエンスが全くそれを許さない。


そして私の立場も。


本当・・・公爵令嬢なんてなるもんじゃない。



ーーーーーー



どうも、私、『ココット・ホップキンス・ダブリス』と申します。

ダブリス国というそれなりに大きな軍事国家の公爵令嬢をしております。


そんな私ですが、ちょっと他国では有名な極悪非道な『ホップキンスの悪姫』という異名を持っております。

何故かって?


それは話せば長いのですが・・・まぁ、私の家が問題と言っておきます。

そしてそんな私は、日々平穏を望みながらも周囲の期待?に応える事が日課となってるんです。


「いい加減にしてくださらない?」


(訳)ほんと勘弁してください。


「でも・・ココ様が」


わたくしがなんですって?」


(訳)だから、誰も望んでないってば


「・・・リリスをあの方から遠ざければココ様が」


「そんな事何時頼みましたかしら?しかもソレがあなたのやり方なの?」


目に見える小瓶は、毒々しい濃い紫色で明らかに飲んだら危険物だ。

彼女が手にしているそれを指さして私は言いつのる。危なかった・・・マジでマジで危なかった。今も私の背中には冷や汗がびっしりだ。

ドレスってこんなに涼しいものだったかしら、とにかくあの小瓶を早く処分してしまいたい。


「う・・うううう・・ココさ、・・、」


女の子が泣き崩れる姿を内心オロオロしながら、私は思考を巡らせる。

このまま何事もなかったようにこの場を収めるにはどうすればいいのか。


幸いにもまだ未遂なのだから、今なら間に合う筈。

そう必死に考えて、私は周囲を見回しそこにいる最高権力者へ手を差し伸べた。


「此度は、不問にしましょう?ね、母上」


社交界の華と呼ばれ、私を生んでなお、若々しさを失わない母は、十代の少女たちでひしめくこの場でも全く遜色なく紛れていらっしゃった。

身内ながら、この人本当はいくつなのだろうか、と疑問に思う事がある。


最近じゃ実母であるかも不安になっいるとは本人には言えない秘密だ。


「あら、ここで私に振るのねココット」


優美にほほ笑み、立派な扇子を扱う様は堂にいってつい見惚れてしまう。

だが天使や女神と喩えられる微笑が今・・・どうしてか恐怖を感じさせるのは、気のせいじゃない。

ヤバい・・間違ったとそう後悔する間もなく、彼女は言い放つ。


「あなた方の献身、嬉しく思うわ・・・ね、ココット。」


「えっ・・」


「でもやり方を覚えなさいな、はき違えんな小娘」


あっ・・・私の周囲に居た数十の少女たちのうち数人が倒れ、何人かは恐怖で震え、青ざめてしまっている、流石です母上。


「は・・母上」


「あなたもよ、ココット。ホップキンスの名を持つ者として自覚が足りないのではなくて?」


鋭い指摘を慈愛に満ちた笑みを浮かべながら告げる姿には背筋が凍る。


「・・・申し訳」


「言葉などいらないのよ、ココット・・さてそこのエルヴィン子爵令嬢さん?」


名前は呼ばないのは流石だ、徹底して無関係を装うらしいとそれだけで予想でき、その後に続く言葉も私は知っていた。


「あなたが行おうとしていたのは犯罪よ、それを私の娘まで巻き込もうなんて・・・あなたの勝手な行動でホップキンスを汚そうとするならそれなりの事をさせてもらうわ」


「母上、お待ちください」


「おだまりなさい・・・未遂ではあったのだから此度の事を公にはしない、その代りエルヴィン家との交流を今後一切断つ事にするわ・・・前王妃様の親類であったのに惜しいわね」


全く惜しいなんて思ってない口調でそう告げて、周囲を見る。


「王家を守る盾となるべき者を輩出するそれこそが公爵家の役目、その協力を得たいなら立派な淑女でありなさい・・・よろしいわね、小娘共」


カツ――――ンと高らかにヒールを鳴らして彼女は言い放つ。

茫然としていた少女たちが必死に首をたてに振る姿はなんてシュールな光景なのかしら。

私は絶望に苛まれながら、数分前の自分を呪う。

なぜこの場を収めるのに母を引っ張りだしてしまったのかと・・・。


「さて、もう時間もないわ。・・・あなた方も一度身支度に戻りなさい。そんな姿で舞踏会など・・・ダブリス国の恥となりますわっ」


バンッ!という大きな音をたてて、彼女は自慢の扇を一度大きく鳴らして少女たちを牽制する。


そして彼女は微笑と共に私にも言い放った。


「あなたもよ・・ココ。」


悪姫という私の呼び名を形作る一端は、間違いなくこの母であるとここに言っておこうと思う。


「はい・・母上」


「よろしい・・・舞踏会でのあなたの振る舞いに期待するわね」


彼女は颯爽と部屋を出て行く。数十人の少女たちは彼女を畏怖と尊敬の目で見送ったのだ。


そうこんな風に渡しのまわりにはとても親切「・・」な人が多すぎて・・困ってしまう日々を過ごしているごく普通の公爵令嬢である。

ダブリス国は、今日も・・・騒乱を回避できました。

私はそんな風に過ごす事に慣れた普通の公爵令嬢である。


だから期待しないでください。














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