第8話 take my hand
ビール祭りにやってきた。
約束の通り、ミヤと一緒に。
胸元を広く開けた独特の服を着た女性たちが注文されたビールジョッキを豪快に運んでくる。
私たちは乾杯し、喉を鳴らしてビールを飲んだ。
焼きたてのソーセージにかぶりつくと、
パリッとした音と共に皮を破り、中から旨味たっぷりの肉汁が出てきた。
「うまーい!」
二人ともまたビールを飲む。
いい天気だ。
ほかのテーブルを見回すと赤い顔をした人たちが楽しそうにおしゃべりしている。
歌い出す人。
肩を寄せ合うカップル。
ミヤと私もその雰囲気に溶け込み、いつもより大声でおしゃべりをしていた。
ステージでは音楽が始まった。
それを聞きながら、飲み食いをする。
炭火で焼いたソーセージって、なんでこんなに香ばしくておいしいのかしら。
油でぎとぎとになった口をさっぱりさせるために、酸味の強いキャベツを食べた。
音楽がさらに大きく鳴り響き、テーブルの合間を縫って列ができていった。
人々が手をつないで列を作り、軽く踊ったり歌ったりしながら小走りになっている。
自分から列に入る人、
列の人からひっぱりこまれる人、
戸惑いながらも列に入ると最初は恥ずかしがりながら、
でもだんだんとほかの人の目なんて忘れて歌い踊り始める。
そんな人たちの列を見ていた一瞬のことだった。
「サラ!」
自分の名前が呼ばれるのを聞いた。
その瞬間、私はぐいっと手をひっぱられ列の中に引きずりこまれていた。
ミヤの軽い悲鳴が聞こえた。
「エイスケ?!」
返事の代わりにエイスケがつないだ手にぐっと力を込めた。
列はその間にも結構なスピードで動いている。
小走りどころじゃない感じだ。
私はその列に連れ去られた。
酔いが回る。
目が回る。
感じられるのは私の手をにぎっている力がちっとも緩まないことだけ。
陽気な列はしばらく会場をぐるぐると回っていた。