表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SALA  作者: Kyrie
7/19

007. 風を奏でる者

フエフキが私をちょくちょく訪ねるようになったのは、あれから2年くらいしてからだった。

まだふらついていた私に驚き、あのときは2週間ぐらい私のそばにいた。


「まさかこんなになっているだなんて」

エフキはかすれた声で言った。



フエフキとはあだ名で本当の名前があり、何度か聞いたけど到底私には発音できる名前ではなく、みんなが呼んでいる「フエフキ」と私も呼ぶようになった。

彼の名前の意味は「風を奏でる者」なのだと、教えてもらった。


その名の通り、彼は一つ所にいると落ち着かなくなり、また一度訪れた場所には滅多に行かない。

そんな彼が4~5カ月に1度、私を訪ねてきて2日くらいで旅立っていっていたのが、最近は2~3カ月に1度、それも1週間近く滞在することが増えてきた。


本来なら、もっと遠くへ、風の渡る草原で笛を吹きたいんだろうなぁ、と思いながらも、どうしてこんなに来るのかは気にはなるが尋ねたことはない。


この間、

「まだ待っているのか?」

と聞かれたのは、本当に驚きだった。


次の日、なにかの拍子でまたその話題になった。

前の日、自分でもよくわからなくなっているのだと答えたけれど、まだもっと言いたくなった。


「男の人って、黙って行っちゃうのよね。

私は聞きたいことがあるのに、聞いても

『ごめん』

って言うだけで、そのままいなくなっちゃうの。

私の質問には答えてくれないし、

なにに『ごめん』なのかもわからないし、

もやもやして、

むしゃくしゃして、

すっきりしなくて、

持て余して、

動けなくなっちゃったの」


それを聞いたフエフキはぷーっと吹きだすと、苦笑いに変えて言った。

「まぁ、俺もそのクチだからなんとも言えないな」


そうよ、フエフキ。

あなたは私のことが心配でふらりと来てふらりと去っていって、それはそれであなたの優しさなのだと、本当に心配しているのだと知ってはいるけど、去るたびに私は寂しくなって、次はいつかと待ってしまうの。

いつ来るかわからず、いつ去るかわからない友達を待ってしまうの。

たまにあなたは彼を責めるように言うけれど、あなたも同じなのよ、フエフキ。


「笑ってないで、なんとかしてよ。なんで男の人ってそうなの?」


フエフキはにやにやしたまんま。

そうやってまたごまかして、問い詰めたら「ごめん」って言って、どこかに行っちゃうんでしょ。


私は面白くなくて、つーんとそっぽを向いてやった。


フエフキは素知らぬ顔をして空になった自分のグラスにワインを注ぎ、ちびちびと飲んでいるだけだった。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitter @etocoria_
ブログ「ETOCORIA」
サイト「ETOCORIA」

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ