002. orange chocolate
テーブルの上にはつやつやのオレンジの紙で丁寧に作られた紙袋。
私は椅子に座って、それをしばらく見てた。
が、中から香ってくるチョコレートの匂いにたまらなくなって、中から小さい小箱を取り出した。
そっとふたを取ると、壊れ物のように柔らかな詰め物がしてある中に、ぽちりと一粒のチョコレートがあった。
「出来上がったんだ」
上等のチョコレートなのは知っているので、私はコーヒーか紅茶かを入れようと立ちあがり、やかんに水を入れ始めたが、やめた。
せっかくのチョコレート、このままこれだけを食べるのがいいわ。
私は椅子に深く座り直し、背筋を伸ばして軽く目を閉じ、一度深呼吸をして目を開けた。
そしてそっと艶やかに光るチョコレートをつまむと、口の中に滑らせた。
どこまでも滑らかなチョコレートが口に中の熱で溶け始めた。
私は溶けきらないうちに、歯を立てた。
濃厚なビターチョコレートの奥に香るオレンジが混ざり合う。
これがあなたが探していたオレンジなの?
問うが答えは口の中。
そして夢のように消えてしまった。
やっぱりコーヒーも紅茶もなくて正解ね。
私はそのまま、テーブルの上に頬杖をつく。