第12話 ここに来て
日曜日。
エイスケの休憩を狙ってマーケットの青果の店をのぞいた。
タイミングが悪くて、エイスケの休憩はすぐに終わるところだった。
たまにそんなことがある。
エイスケは私に気がつくと、そっと耳打ちをした。
「川のそばのシダレウメのところにあとで来て」
私は言われたとおりに彼の仕事が終わりそうな頃、シダレウメのそばのベンチに座っていた。
ウメは濃いピンクの花をつけ、滝のように流れている。
ほどなくして、エイスケが現れた。
あら?
「それ…?」
私はエイスケの首からかかっているストラップの先の黒いカメラに目を留めた。
「そう、これ!」
彼は嬉しそうに私に見せた。
「これなんだ、オレがずっとほしかったものって」
エイスケはほしいものがあるので、あの店の手伝いをしていた。
それは長い間秘密だったけど、カメラだったのね!
「昨日、買った」
「まぁ!素敵ね」
エイスケははにかみながらも誇らしげにしていた。
「それでね、サラ」
「ん?」
「初めての写真、サラを撮りたい」
私はぽかんとしてエイスケを見つめる。
「私?」
「そう」
「そんな、私、そんなこと知らないから普段着だし、メイクも手抜きだし」
「構わないよ。サラが撮りたいんだ」
結局、エイスケの強引な要求を飲み、私は被写体になった。
エイスケもまだカメラに慣れていなくて、ぎこちない手つきで扱っていた。
「写真、失敗したらごめん」
「それはいいの」
私はとにかく恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながら、必死でレンズを見つめた。
エイスケはファインダー越しに私を見つめてる。




