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ランプ売りの青年  作者: ふん
命の灯火編(上)

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第二十五話

 それから数日というもの、リット達はガルベラの研究所に入り浸っていた。

 今日も朝から埃にまみれて、なにかないかと調べていた。

 情報が得られそうなものは書物しかなく、本に目を通すだけでもかなりの時間がかかる。キーワードは最小に絞り込んだものの、高くそびえ立つ本棚の十分の一も確認できていなかった。

 何度も見たような折り目がついた本、重要そうに印がついてる本と、その他の本は別にして積み上げていく。

スペースのない二階を自由に動き回れるのはノーラとチルカだけで、天井まで続く本棚から本を下ろすのにも時間がかかる。

 リットは投げ捨てるように本を置き、気持ちを晴らすように大きく息を吐いた。

「何を探したらいいかわからねぇ探しものってのは……気が滅入るな」

「いきなり問題も答えも見付かるとは思っておらぬ。せめて、ガルベラがこのディアナで何をしていたかがわかるとよいのだが」

 グリザベルはリットの倍以上の速度で本に目を通していく。

 読んだ本の量は明らかに違えど、リットには先に限界が訪れていた。

 瞳に雲がかかったようにかすむ。リットは積まれた本を枕代わりに寝転がると、顔だけをグリザベルに向けた。

「息抜きついでの雑談なんだけどよ。闇に呑まれても光は届くって知ってたか?」

「ほう……興味深きことだ」

 グリザベルは読んでいた本から目を離して、食い入るようにリットの瞳を見つめた。

「東の国の大灯台の話だ。闇に呑まれたペングイン大陸まで光が届いたのを見てきた」

「ペングイン大陸とは、テスカガンドや魔族の地がある大陸だな」

「そうだ、五大陸で一番でけぇ大陸だ。まぁ、光が届いたっていうオドベヌスは、ペングイン大陸の辺境にある街だけどな」

「普通の光ではないのだろう?」

「昔はフェニックスの羽を使った種火。今は龍の鱗を使った反射鏡。闇に届く光は、一つじゃねぇってことだ」

「ふむ……霊鳥と呼ばれるフェニックスも龍も神獣だ。共通点があるとするならばそこだな」グリザベルは少し考えたあと、おもむろに口を開いた。「これまでのことを、一度まとめてみるのもよいかもしれんな」

 グリザベルは「二つの魔宝石の話を覚えておるか?」と話し始めた。

 二つの魔宝石とは、ディアドレがヨルムウトルで作ったものだ。

 一つはヨルムウトルに財を成したもの。もう一つは失敗作でヨルムウトル中の命を奪ったとされているものだった。

 しかし、ヨルムウトル中の命を奪ったのは失敗作の魔宝石ではなく、魔神フェニックスだった。

 つまり、ふたつ目の魔宝石は、その行方も、失敗作かどうだったかもわからないまま歴史から姿を消した。

 ひとつ目の魔宝石ができたのは、大五元素のエーテルの失敗から出来た偶然の賜物であり、たまたま財を成すことができたものだ。そして、この幸福エネルギーと呼ばれているものは、魔力の理から外れた『神の産物』と似ている。

「疑問があんだけどよ。エーテルの失敗が、幸福エネルギーって呼ばれるもんなんだろ? どの元素に入るんだ?」

「幸福エネルギーとは魔力の暴走から生まれる。単純に『熱』と『乾』の性質が合わされば『火』という魔法が生まれるわけではない。バランスというものがある。四性がバランスを崩し、暴走した魔力を宝石に閉じ込めたものを幸福エネルギーと呼ぶ。ゆえに、幸と呼ばれるものは魔宝石にしかない。暴走した魔力を宝石に留めるのは難しく、命を落とすことが多い。現代に、幸福エネルギーの魔宝石を作る者がいなくなったのはそのせいだ。我としては『幸』ではなく、『カオス』と呼びたいところだ」

 言い終えると、グリザベルはとらえどころのない笑みを浮かべた。

「だから、四大元素のどれなんだよ」

「火かもしれぬし、水かもしれぬ。はたまた風か土か……。それがわからぬから幸と呼ばれておる。ゆえにカオスだ。解明したら歴史に名を残せるぞ。フハハ!」

 グリザベルが笑い声を響かせていると、間隔の短い足音が聞こえてきた。

「二人だけ休憩してズルいっスよォ。こっちは奴隷のように働いてるっていうのに」

 ノーラは抱えた本を顎で挟みながら階段を下りてきた。

「本を下ろしただけで大げさな奴だな」

「本を抱えて、はしごの上り下りをしてみてくださいってもんです。まるで自分がちっぽけなアリになったみたいに感じますよ」

「元からチビスケで、アリみてぇに食いまくってばっかじゃねぇか」

「運んでるのが食べ物なら、それでもいいっス。アリが本を運んでるところ見たとこあります?」

 ノーラは本をリットの前に置くと、老婆のように自分の肩を叩きながら腰を下ろした。

「あるぞ。下克上のすすめって本を運んでた」

「大丈夫っスかァ? お酒の飲み過ぎは幻覚を見るみたいっスよ。ちゃんと現実見えてます?」

「大丈夫だ。働かされて不機嫌になってるチビが見える」

 リットは体を起こすと、固くなった肩をほぐそうと首を回す。

「そうです、私はお怒りです。腹の虫が収まらないんです。聞いてくださいよ、この音」

 ノーラのお腹からは、空っぽの胃が空気を吐き出すようにキュウーキュウー鳴っていた。

「ずいぶんひな鳥が騒がしく鳴いてるな。餌やってないのか?」

「えぇ、旦那のおかげで」

 ノーラは珍しく不機嫌をあらわにしたままリットを睨みつけた。朝早くからここに来ているせいで、朝食を食べていないからだ。

 しかし、すぐに表情が崩れた。お腹が空きすぎて、怒りもどうでもよくなったらしい。

「昼食には少し早いが、遅めの朝食ということにして、どこかに食べに行こうか」

 グリザベルの言葉に賛成したノーラは、言葉ではなく立ち上がることで意を示した。



 リット達が朝食を兼ねた早めの昼食を取りに来たのは、高台にある高級そうな料理屋だった。

 店内は昼だというのに薄暗く、油を塗ったような光沢のある木の柱や壁がランプの明かりを淡く反射させている。

「よき場所だろ。我の馴染みの店といったところだ」

 グリザベルはローストビーフにナイフを入れながら言った。

 薄く三枚に切ってリットの皿に取り分けると、肉汁がソースと混ざりランプの明かりに綺麗に輝いた。

「馴染みの割には店員になんも言われなかったな。普通は声をかけられるもんだろ」

「我の威厳に萎縮したのだろう。おいそれと声をかけられるようでは、人としての底が知れるというもの」

「おいそれと声をかけられたいくせに何言ってんだ。そのうち、この薄暗い店と一緒でカビが生えるぞ」

 リットの言葉が聞こえたのか、いつの間にか店員が後ろに立っていた。

「お客様……。なにか御用ですか」

 柔らかい物腰だが、注意を含んだ声色で店員が聞いた。

「酒のおかわり」

「かしこまりました」

 店員は軽く腰を曲げて了承のおじぎをすると、酒を取りに厨房へと向かった。

「我が入店禁止になったらどうするつもりだ。店に迷惑をかける発言をするな」

「いちいち会話に気を使ってられるかよ。酒場なら、今の発言でどっかの酔っぱらいが笑い声を響かせてるぞ」

「こういう店は雰囲気を大事にし、会話を楽しむべき場所だ」

「一人で来てるくせに、誰と会話してたんだよ」

「否、一人でも雰囲気を保てる場所だ……。ノーラも食べよ」

「どもっス。……よいしょっと」

 グリザベルは三枚切り分けたが、ノーラは切り分けられたものではなく、肉の塊が乗った皿のほうを持ち上げて自分の目の前に置いた。

 そして、ナイフで切ることなく、そのまま持ち上げて食いついた。

「ノーラ……こぼしておるぞ」

「今の私はちまちま食べてる余裕なんかないんスよ」

「オレもだ。ちまちま注ぐんじゃくて、瓶ごと置いてけよ」

 リットは店員に無理やり酒瓶をテーブルに置かせると、コップにたっぷり酒を注いで飲み始めた。

「もうこの店に来られぬ……」

 グリザベルは店員の迷惑そうにしている目つきに頭を抱えた。

「オマエは友達がいないから知らねぇだろうけどな。誰かと飯を食うってことはこういうことだ」

「もう騙されんぞ……」

 溜息をつくグリザベルの後ろに、リットは見知った頭を見つけた。リスのしっぽのように膨らんだグンヴァの髪だ。

「おい、オマエが来るような店じゃねぇだろ」

 リットが声をかけると、グンヴァはものすごい形相で振り返った。そして、人差し指を唇に当てて、静かにしろとジェスチャーを送る。

「一杯目じゃねぇよ。もう、三杯目くらいだ」

 リットがのんきに言うと、グンヴァは更に眉をしかめて、静かにしろと唇に当てていた人差し指を揺らした。

「しょうがねぇな。一杯だけだぞ」

 リットが酒瓶を持ち上げて瓶口を向けると、グンヴァは足音を立てないように、しかし素早く歩いてきた。

「静かにしろって意味だっつーの。普通わかるだろ」

 グンヴァは大口を開けるが、誰かを気にしたように声は小さかった。

「わかるけど、察したからって、オレが気を使うような奴だと思うか?」

「……リットのアニキこそ、なんでここにいるんだよ」

 グンヴァは小さく舌打ちをすると、ノーラの前にある使われていないコップを手に取って、リットに向けて伸ばした。

 リットはグンヴァに酒を注ぐと、ため息混じりに答えた。

「グリザベルに聞け」

「アネゴはいいんだよ。リットのアニキが、酒場以外にいるのが不思議なんだ」

「アネゴってグリザベルのことっスか?」ノーラはグリザベルに目を向けると、小難しい問題を解くみたいに唸った。「アネゴって感じはしませんけどねェ」

「我としては、気軽に漆黒の魔女グリザベルと呼んでもらいたいのだがな。臣下の意見に耳を傾けるのも、上に立つべき者の務めよ」

「友達が欲しいくせに、手下作ってどうすんだよ」

「リットだってノーラという部下がおるではないか」

 グリザベルは友達も部下も変わらないとでも言いたげに口を曲げた。

「私はアレっスよ。部下というよりも良きパートナーってやつっス。旦那が悩んでいたら一緒に悩み、旦那が迷ってたら一緒に迷い、旦那が困っていたら一緒に困る。それがパートナーってもんスよ」

「一緒になって困ってたら意味ねぇだろ……」

 ノーラが「そうっスね」と笑うと、グリザベルもつられるように笑った。

 その笑い声の隙間に入り込むように、グンヴァがリット達にだけ聞こえるくらいの強さでテーブルを叩いた。

「なに、ほのぼのしてんだよ。俺様がここでなにしてるか気になんねぇのか?」

「だって、触れたら話を聞かなくちゃいけないじゃないですかァ」

 ノーラはグンヴァの視線から逃げるように、少しだけ体を傾けた。

 しかし、グンヴァの視線は変わらない。元からノーラではなく、その後ろの席を見ていたからだ。

 リットもグリザベルも興味なさそうに食事を進めているが、そんなことはお構いなしにグンヴァは話し始めた。

「見ろ、カロチーヌだ。知らねぇ男と楽しそうに飯を食ってやがる……。誰だアイツは? 見たところ人間見てぇだが……。オッサンじゃねぇかよ。あんな奴より俺様の方が――」

 グンヴァはグチグチと不満を漏らして、悔しみに歪んだ顔で遠くの男を睨んでいた。

「うるせぇな……。当て馬の役目は済んだってことだろ。そのうえ、惨めったらしく負け犬にもなるつもりか?」

「こういう時、アニキなら慰めてくれてもいいだろ」

「愚痴るならせめて酒場でしろよ。こんな変なムードの場所で愚痴られても、酒の肴にもなりゃしねぇ」

 リットはコップに残った酒を飲み干すと急に立ち上がった。

「トイレっスか?」

 ノーラがふくらんだお腹をさすって、至福の表情を浮かべながら言った。

「戻んだよ。食い終わったんだからもういいだろ」

「余韻も大事なんスよ。美味しいものをお腹いっぱい食べたなァって時間を過ごしてこそ、食事をしたと言えるもんです」

「作業が遅れたら、明日もまた朝飯前に連れ出すことになるぞ」

 そう言うとリットは一人で先に歩いて行った。

 ノーラは遅れまいと、急かすようにグリザベルを立ち上がらせる。

「さぁ、グリザベル、行きやしょう。日が落ちちゃいますよ。グンヴァももう行かないと、評判が落ちちゃいますよ」



 ガルベラの研究所に戻ったリット達は、お腹を満たした後の気だるさから、なかなか作業に戻らなかった。

「さて、続きをやるか」

 リットが床に腰を落とした瞬間、小石を思い切り投げつけられたような痛みが頬に走った。

「さて、続きをやるか……じゃないわよ。バーカ!」

 チルカがツバを吐き捨てながらリットを睨んだ。

「いきなりなにすんだよ」

「いきなりじゃないわよ。こっちは数時間分の怒りがあるのよ。これくらいじゃ足りないわ!」

 チルカは再びリットの頬に渾身の拳を食らわせた。

「おい、ノーラ。この羽の生えた生物はなにを怒ってんだ」

 ノーラは「さぁ」と肩をすくめた。

「誰一人、私がいなかったことに気付かなかったってわけ?」

 ノーラが「そういえば」と頷くと、チルカの羽は怒りに強く光った。

「いやー、お腹が空いててそれどころじゃなかったんスよ」

 チルカは空腹に腹を鳴かせていたノーラは仕方ないと少し表情を緩めたが、リットとグリザベルを見て再び目を吊り上げた。

「で、そこの無神経バカと根暗バカの二人は? 言いたいことがあるなら聞いてやるわよ」

「忘れてたもんはしょうがねぇだろ」

 リットは正直に言ったが、チルカはそれで更にカッと怒りが湧き上がった。

「どういう神経してたら、手伝ってくれてる人の存在を忘れられるのよ。もしかしたら忘れられてるかもって思いながら、下の階に声をかけて本を運ぶ気持ちがわかる? どんなに惨めで屈辱的か!」

 チルカはわざわざリットの耳元まで飛んでいき、大声を張り上げた。強く光る羽のせいで、すさまじい怒りが山火事のように全身に広がっているように見える。

「それは悪かった。そんなマヌケな光景を見逃すとは……。今度そういうバカな事するときは呼んでくれよ」

「無理よ。今夜ベッドの上でアンタは死ぬんだから。最後に私のとびっきりの笑顔だけ見せてあげるわ」

「最後の最後までオマエの汚ぇ顔を見せるとは、最高の嫌がらせだな」

「そういうジョークは、地獄の門番に媚び売る時までとっておきなさいよ」

 結局この日はチルカの怒りが収まらなかったので、これ以上調べ物が進むことはなかった。



 夜になり、いつもの酒場ではグンヴァの笑い声が響き渡っていた。

「それで、そんなに頬が腫れてんのか。いつも俺様をからかうからだ。天罰ってやつだぜ」

 チルカに殴られて赤く腫れたリットの頬を見て、グンヴァは楽しそうに酒を飲んでいる。

「どう考えても天罰じゃなくて人為的だろ。つーかよ、フラれたんなら一週間くらいは落ち込んでろよ。忙しいせいで、全然からかえてねぇじゃねぇか」

「充分からかってると思うぜ……」

「まぁ、でもグンヴァはようやく立ち直ってきたって感じだな。最初の二、三日は人が変わったようだったからな……」

 店主があれは酷かったと苦笑いを浮かべると、グンヴァも気まずそうに笑った。

「あの首を絞めたくなるような名前はやめたのか?」

 リットは軽い笑い声を響かせて、グンヴァをからかった。

「忘れてくれよ……あの時はどうかしてたんだ……」

「そういえば、リットはしばらく酒場に来てなかったな。なにやってたんだ?」

 毎日のように来ていたリットが急に来なくなったのが不思議でしょうがないらしく、店主はしつこいくらいにリットに質問を投げかけた。

「忙しかったんだよ。一から説明してたら、長くなるから面倒くせぇ。そのしつこさで、かみさんも落としたのか?」

「そりゃもう。周りが引くくらい泣き落としたからな」

「その時の心労が、今になって頭にきたってわけか」

 リットが店主の生え際に目をやると、店主はさっと手で隠したが、あきらめたように手を降ろしてカウンターについた。

「振られ男と、振られるまでにも至ってない男に何を言われても痛くも痒くもねぇや。で、なにしてたんだよ。グンヴァみたいに女の尻を追いかけてたのか?」

 店主が話している最中に、ドアが開く音が聞こえた。

「いらっしゃい」と店主は声をかけて、今入ってきたお客の顔を見ると、驚きに顔を固めた。

「ロマンを求めていたんだよな」

 ヴィクターはニヤっと笑うと、リット達のいる席に向かって歩いていく。

「これは、ヴィクター王。しばらくで」

「最近忙しかったからな」

 ヴィクターはカウンターに置かれたリットとグンヴァのコップを見て「同じものを頼む」と言うと、リットの隣の椅子に座った。

「誰かさんも同じこと言ってたな」

 店主はカウンターにコップを置き、ヴィクターに酒を注ぐと、チラッとリットに目を向けた。

「モントに政務を任せるために色々やってたんだ」

 ヴィクターは一口酒を飲んで、疲れを吐き出すように一息ついた。

「それはこれから忙しくなりそうですね」

「そうだな。これからもっと忙しくなる」

 そう言うとヴィクターは、リットの肩に手を回して引き寄せた。

「どうりで、チルカが簡単にオレの手伝いをしたわけだ。下僕にしたモントが忙しいんじゃな。暇でしょうがねぇってわけか」

 自分の力ではヴィクターの手を払えないと悟ったリットは、諦めてそのままの体勢で酒を一口飲んだ。

「突然どうしたんだ、オヤジ。モントのアニキに譲位するのか?」

「あぁ、そういうことだ」

 ヴィクターは皿を取ってもらうくらいに軽い口調で言った。

 しかし、突然のことに周りの客は叫びにも似た驚きの声を上げる。

「おいおい……酒場で退位の発表なんて、いくら慕われてる王様だって問題だろ」

「どうせ明日には発表する。先に馴染みの酒場に知らせるくらいどうということはない。そういう関係を築いてきたからな」

 リットは「そんなに体が悪いのか?」と聞こうとしたが、得体のしれない感情によって、喉でせき止められてしまった。

 そんなリットの気持ちを知ってか知らずか、ヴィクターはリットのコップに自分のコップを合わせて音を鳴らすと、一気に酒を流しこんだ。

 そして、酒臭い息を長く吐くと、リットの肩を掴む力を強めた。

「ガルベラの謎……。おもしろそうじゃないか。このヴィクター・ウィンネルス。冒険者に返り咲きだ!」






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