【コラボⅤ】 05
ゲームは複雑なルールのもとで開始された。
まず、一つ目。それは回復道具の使用制限。一プレイヤーにつき五回まで使用可能だった。
そして、このゲームは現実や思考で再現できる技を使用できるという。つまり、海紫の『ムーンライトオンライン』での魔法や、蒼依達の能力もそうだ。
海紫達は、カプセルの中で目を閉じる。そして、思考がゲーム内に引き込まれていった。
このゲームではVR 仮想空間に仮想の身体を再現して戦う格闘ゲーム。そして、選ばれた空間は湖畔のほとり。
海紫は思った。もう、蒼依達には悪いけど、ゲームで負けることはない。なぜなら、こんなゲームは体験済みで、一般人には勝てない領域にまで俺らが進出しているから。
無双の開始。
出現したところは森のなか。蒼依は自分の手を見た。少し、ゴツくなったかと思ったけど違うようで男に戻っていた。
そして、蒼依の近くには一人、白峰だけ。しかし、白峰は女のままである。
視界を確認。右上にパーティメンバーのHPが表示されている。左上に自分のHP、その下には何か分からないが、0を示しているゲージがあった。
そして、蒼依達は行動を開始する。まず最初にメンバーとの合流が先決だろう。
「朱ちゃん、此処って」
「そうだね、マップ660に似てる気がする」
「やっぱりね」
他四人にも、ましてや蒼依チームには分からないだろう、朱ちゃんとのゲームをしていた日々。
「でね、そしたらこの魔法を、いくよ。『神業なる諸侯、民に力を求むる――――覇率』」
朱梨の身体を光が包み、そしてその光が広がって海紫を包む。それからマップ中に広がって他メンバー、ケイン達にもHP二倍、防御率二倍の効果をもたらした。
海紫の姿は聖騎士のような厳つい鎧を身に纏っていて、そして朱梨はローブ姿。
拠点として湖の横で補助魔法を探っていた。
――――――ッ!? 森のなかで鳥達の叫び声。
「装甲―蒼龍神ッ!!」
「理科学装甲―ホワイトッ!!」
風が吹き抜けて、声の方から衝撃波が地面をえぐり、木々をなぎ倒し向かってくるのが分かる。
瞬間に二人は飛びのき間をとる。
森のなから現れたのは、蒼い竜を模した装甲を腕に装備している蒼依。そして、いつぞやの神聖剣の倍くらいはありそうな盾を持ち、もう片手には人の二倍はあるビームサーベルを持った白峰がいた。
なんとなく、その二人は戦い慣れた感じである。しかし、蒼依と分かるまでも、男??
四人は互いに構えて距離をおいている。だが、武器を装備している蒼依、白峰のほうが有利であるが、今回は――。
「やべぇ、やべぇ」
「逃げなさいよ、うるさいってさっきから」
「暗黒超人ウラカッター、参上!!」
ケインとエミルダが逃げようとしていた湖方面に黒い刀身と円曲した演舞刀をもち、顔まで布で覆った、真っ黒な星人が立ちはだかる。
「エミルダ、大杉。やるわよ」
真城が言うと、彼女は鈴のついた杖を振り上げて空に文字を綴る。
『黒雷に付く神々よ。地上に降る聖霊よ。禍々しく輝く悪魔よ。 今その契を解き我に力を与えんとする。つまりそれは肉体を捧げる――――封約 昇華』
真城の巫女装束の背から翼が生えた。そして、鈴のついた杖が長剣になり、そしてそれを横薙ぎに構えた。
「ウラwwカッツwター」
「笑うな」
「悪い悪い。力を貸すぜ」
朱雄である。彼は「なんたら装甲――俺に力をっ!!」
叫ぶ。しかし、何も起こらない。
装甲とは。レジェンド含め数人は己の崇める神に自分の体の一部を捧げることで、捧げた一部に神を降ろし、一時的に肉体を強化するもの。
そして、その強化されたものは装甲と言い、神の一部として鎧や武具を与えられる。
しかし、朱雄のような人には神は答えてくれなかった。
だが、そう考えたケインは、何か無性に試したくなったか、真似た。
「なんたら装甲!! エミルダ、俺を纏え!!」
つまり、ケイン自身が神の真似をする。
瞬間、ケインの姿が光りだし、輝き、エミルダに取り付いた。
「ふぇッ!? あ、やめろ、気持ち悪いんじゃ!! 離れろ、はなれろぉぉ――」
無理だった。ケインが来ていた服をエミルダが着ていた服の上に羽織り、ケインのパンツ(ブリーフ)を、エミルダは頭に被っていた。
HPは四倍になったが、何かを失った。彼女は今にも吐きそうな顔になっている。
「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー」
と、まだ天に手を伸ばして叫んでいる朱雄は、装甲が来そうな感じもしない。
「暗黒拳!!」
ウラカッターが演舞刀を一定の方に切りつけて、黒い光の三角形を作る。
そして、右手を引いて、「やぁー」とウラカッターがその三角形の中心を演舞刀で突いた。すると、三角形からビームが発射される。
「「ぎゃぁぁぁーーー」」
ちゅどーーん。 直撃して爆発。ケイン装甲をまとったエミルダが不快そうに顔をしかめた。HPが三分の二くらい減っていた。
「大杉ケイン、何してんの? なんたら装甲なんでしょ? どうにかしなさいよ」
『あいわかった』
エミルだの右手が動いた。数字が表示される。ひも状にその手の動きでどんどん数字が増える。
金色に輝く数字。そして、左手ではその数字を書き換えて、消していた。
ビームの衝撃で発生した煙が晴れる数十秒の間、何千、何万、の数字を書き換える。
エミルダが地面に両手をつき
「『プログラム実行。対象二人を消失、強制ログアウトを実行する』」
その言葉の瞬間に、ウラカッターと朱雄の敵プレイヤー表示が灰色になった。
つまり、死亡扱い。