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電脳なおれと翡翠の彼女  作者: 藤乃宮遊
君の声が聞こえたから
18/19

scene12 終了


 変身ヒーロー物の変身シーンに似ているとは思う。

 いわば、まぁそうだろう。のみこまれていった身体が再構築され再建した時に、海紫、朱梨も驚いたに違いない。

 背から、背後に3mはあるだろう翼を持ち、そして、身体は、竜を模したような紋様と、鎧を着用している。頭は、竜の頭を縮小したような頭鎧ヘルムであった。

 老剣士の刀は青黒く光が灯されていて、刀身は三倍のように膨らんでいる。

 十五の尾は倍以上に増えて、うねっていた。

 それは、闇属性で、伝説の

 『フルムーン・オンライン』上で最強の

 唯一武器ユニークウェポン


『黒竜の抗鎧』だった。


「殺し屋の姿と一致するわ。調査兵を逝く人殺している、ドラゴンアサシン」


 真城は、勝てないと言いたかったが、眼前の朱梨に睨まれ、自重した。その朱梨は、鳥類から飛び降りようとしていた。


「私は、この世界の住人。此処の守り人。《舞華》様にお命を与えられた兵士だ」

 チッと、舌打ちをして、逆手のタガーを握り直す。

「君も一緒に、《舞華》様を崇めよう。それまで強いんだ。多分、認めてくれる」

 左手を差し出す老剣士の心情がどうなのか全くわからない。だから

「さぁ、 死ねッ!!」

 呟いたのは、老剣士。どうしても、睨みをきかせる海紫に気分を害したのか。


「お前も、姉ちゃんの名を呼ぶんだな」

 会ったばかりの数人の姿を思い浮かべて、全力で睨む。歯を食いしばる。会いたいのに会えない。その悔しさが分からない人間は多い。

「ああ、君はどうしても《舞華》様の加護はお与えなさらないだろう。故に私は、殺す」

 濁った声で、笑っているように聞こえた。そして、ガチャリと、大きくなった刀を、大剣を右側に構えるのだ。

 

 タガーを握りしめ、護りの方に入る。少し、危ないように見えた。

 多分、このゲームの限界値を越えている。いわばチート。いわば運営のカス。


 ここまで、死を認識したのは初めて。多分、死ねば、《舞華》教の老剣士に引きずられて。





「しー―ちゃー―ん」

 空の上から、鳥から、朱梨の声がする。

 彼だって、いつまでも傍観するほど気が長くはない。そして、目的が竜の冠。それならば、早く倒してしまえ。

 そういうことだった。


「しーちゃん、手加減とかしなくていいんだから。早く、たおそ」

 隣に並んで彼は言った。でも、相手が、チートを超越した無敵の運営側の策略モンスターってことを朱梨は察する。

「でも、死にたくないなら、遠慮しちゃ、ダメだよ」

 「めっ」とウィンクする。男なのに、なんとなく、落ち着いた。


「「我――限界を超え 力を求めるものなり 力を開放し 真の姿を 与え給え」」


 それは、スキルを封じる運営側のはからいのもの。

 9999まであるスキルポイントを、5つ以上獲得し、そしていずれも9999+までカンストすれば、自動的に発動してしまう物。

 半分のステータスを勝手に抑えこまれるスキル。

 それを開放すれば、自分のステータスが4倍になる。

 簡単にいえば、魔法で伸ばしたステータスではなくて限界値が4倍になるということ。

 スキル解放しなければ100しか無いBPだとすれば、それが400になるということ。

 そこに、倍率スキルを(一定時間)又掛けすることができるそれ。

 それに、魔法を、マナに関係なく連発できる。




 天に手を伸ばして朱梨は


「業火よ 儚く強く 咲く花が如く 門を戒し糧となれ 《紅蓮慈炎華》」


 マグマのように、宙に出現した魔法陣から炎が出現する。そして、最強の壁としてそこで、相手を阻む。

 円状に、マグマは残し、ビルの全てに行き届く。黒竜の騎士――ドラゴンナイトは、空を飛び、かわすが、着地点はない。

 マグマに当てられたビルは溶ける。崩れ落ちて、後は朱梨と海紫を残すのみ。


「壁のつもりだったのか? 残念だなぁ、貴様らの動きが阻まれただけだった」


 朱梨が右手を振り上げた。

 瞬間、足場の溶けたビルと一緒に下に流れ落ちたマグマの炎が湯煎のように吹き上がってドラゴンナイトと、海紫、朱梨。3人を囲むように空高く壁ができる。何十キロも空まで。

 これで、ドラゴンナイトが逃げることはなくなった。

 本気の朱梨はもう少し、できると思ったが、海紫に獲物をあげようと自重しているようだ。


 これで、外からの干渉は出来ない。

 だが、この世界に適合している敵より、こちらは長くいすぎると侵食される上に、こちらにはスキルの時間制限があるのだ。

 どう考えてもこちらのほうが不利である。

 短期決戦に持ち込まなければ。


「《紅蓮慈炎華》二式――」

 杖を正面に向けて、そこから広がったキーボード上の半透明のそれを叩く。

 海紫は、空中魔法を開始。


自由文スペル 神封 発動」

 唱えながらそこでジャンプする。その魔法は、空気を魔法陣で固め、宙にとどまれるもの。

 ところどころに魔法陣が現れ、そして、ドラゴンナイトより一番遠い所に着地する。




「何をするかと思えば、それだけか」

 ドラゴンナイトは、大剣を頭上から下へ一線に振り下ろすと、その空間が裂け、その裂け目が大きくなっていく。

 すべてを飲み込み、その裂け目は、ゆっくりと正面にちかずいていくのがわかった。

 空気魔法の魔法陣を次々に飲み込み、バラバラにしていく。

 

 タガーを前かがみに構えて、呪文を詠唱。


 それは、モーションアクセス。決まった動作を、決まった形を取れば、システム的に身体をアシストする魔法。

 自分で作ったモーションアクセスしか使えないが、それで、プレイヤーの力量が図れると思っていい。

 そして、海紫の剣技は、間違いなく、全プレイヤー中最高ランク。


 自分の足場を思い切り蹴りつけて、裂け目に飛び込む。

 

 右手のダガーを前に、左手を腰辺りに配置。


「――――モーションアクセス。『月炎皇乱衝』」

 顔をあげた海紫は、自分が通ろうとする目の前に、光の道を作り出す。それは、空気魔法の応用と一緒。

 

 海紫は、誰の目にも止まらないような速さで裂け目に向かって、

 叫びながら、剣をふるう。右から、左から斜め、切り上げ 光が眼前を覆い――――裂け目が、弾けて――消えた。



 そして、ドラゴンナイトの動きが止まった。

 耳に手を当てて「――――はいそうですか。分かりました」と、呟いた。

 光から飛び出た海紫は、もう一度、モーションにアクセスした。

 

「うおおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁ」


 ドラゴンナイトは、動こうとしなかった。

 唯、13連撃に当たる、海紫のモーションアクセスを食らうだけ。2本をクロスさせてばってんを描くように切り下げ、回転するように次の攻撃につなげる。

 敵の存在を、無残にも切り刻んでやる。


 ラスト一撃の攻撃で、右手のタガーを切り上げると、瞬間に、海紫は後ろに飛び退く。

 そこに、無数の炎の弾丸が飛来する。

 上位の魔法、「二式」。その間、わずかに2.0秒の連携。

 

 固定化された魔法陣に着地して、膝をついて肩で息をする。

 炎の弾丸は、降り注ぐ。そして、ぴきぃっ という何かが割れる音がして、そして、炎の弾丸が途切れた。

 ドラゴンナイトの鎧が、ヒビ割れて、そして砕け散った。


「私は、反撃しなかったが、この鎧の耐久を上回る攻撃をするなんて驚いた。――――№053 《秋野 海紫》」


「っ!?」


 そして、ドラゴンナイトは、身体に無数のラグが生じて、そして、ポリゴンのかけらになり、弾けて消えた。

 朱梨の魔法が溶けた。そして、目の前に《Win》の勝者表示。

 

 次の瞬間に、脳に直接響く声があった。

『よしよし。君が《海紫》くん。もう一人が《杉岡朱梨》君もだ。我々は二人に期待しているんだよ』


 敵を倒して得られたアイテムを確認した。



 item:黒龍の冠【闇】


『決して私らは君等の敵にはならないはずだ。選択を間違えない限り、ね。まぁ、私は《舞華》の仲間でもないがね』


「誰だッ?!」


 海紫は、タガーを消して、受け取りますかの質問に『Yes』を選択。


『私は、この世界で転生したのは事実。しかし、《舞華》の力ではない。私は、政府所属―独立研究機関―狩生研究所の一人』


「何をする機関だッ!! おしえろ」


『ははは。桜坂にでも聞けばいいさ』


 そう、言った。


 ――――――――今、君がいる《異変》は、《舞華》が造ったのではないんだよ。これは実験さ。







 スチャリと、それをディスプレイから眺めていた七三分けの研究者が、ズレた眼鏡を直しながら呟いた。

「起動実験は終了――――次辺りに《異変》に突っ込んじゃおうかな―」

 グフフと不気味に笑い研究者がそこにいた。 狩生政規その人だ。

これにて、本編が終了いたしまして、エピローグをやって、本当に終わりますね。

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