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電脳なおれと翡翠の彼女  作者: 藤乃宮遊
君の声が聞こえたから
17/19

scene11 転機


「えっと、これでいいんだね。秋野くん」

「武器は、普通に鉄の剣とかでもいいから。別に、性能変わらないんでしょ」

「まぁそうだね。で、何か必要な物とかある?」

「もう無いよ」


 ろうかで、そんなやり取りをしていた。別に、会議なんて朱梨が「ボク達のコンビネーションを見せてあげるから、二人は指を咥えて見てるといいよ」の一言で終わったことに後悔はない。

 そして、今は真城とキャラクターメイキングのような、過去着ていた甲冑を再現するので精一杯。

 

「おい、新入生」

「海紫でいいですよ」

「いつから、俺の目上になったつもりだ。――一人で突っ込みすぎて死ぬなよ」

「誰に言ってるんですか」

 ヤンキー先輩との会話は終わり。そして、海紫は《異変》に脚を踏み入れていく。朱梨は既に入っていた。それを追いかける形。

「調査兵が居るんだろ。でも、無視するからな」

 誰に言うわけどでも無く。独り言のように、そういう。

 そして、脳がラグを感じ、断界。次に、世界の色が変わっていた。






 目の前に、『ムーンライト・オンライン』上の朱梨が居た。

 ピースして、それを右目に重ねてから

古代呪文スペルマスター アカリだよッ!!」

 と、決めポーズ。キュピーンと言う効果音が似合うかもしれない。どうしてか、男のくせに、女にしか見えないのが歯がゆい。

「おひさー。 で、メニュー画面を開いて」

 軽く受け流してから、メニュー画面を開こうと手を2本立てて、地面に平行に引っ張った。

 ピコン

 と、機械音がなって、視界の左端にメニュー画面が広がった。上から、装備 アイテム 設定 ログアウト。どれも、ムーンライトで見慣れたメニュー画面だった。

 装備をタッチ。そして、スキル画面へ進む。魔法を使うので、スキルのパラメータをあげておかねば、そう思ったのだ。

 だが、記憶が正しければ。

 記憶通りなら。


 表示されたスキル画面は


 魔法力9999+

 支援魔法9999+

 光魔法9999+

 体術9999+

 幻影9999+

 肉体9999+

 呪文速化9999+

 呪文耐性9999+

 剣術8569

 属性強化6320


 10のスキルは、この通りだった。

 SPスキルポイントは、ある条件をクリアや、ゲーム内通貨のSP化で稼ぐことが可能である。

 二人は、そのどちらもSPを割り振るためにゲームをやっていた。記憶がそう言っている。

 そして、同じような状態にあるアカリ。彼は、特に魔法を中心に上げていて、全てがオールマックス。9999+である。

 

 戦い方は体に染み付いたように覚えていた。そして、


「自己強化《俊風》」

 それは、自分の走力をあげる魔法。

「全体強化《激晄》」

 続いて、全体へバフを掛けた。それは、HPとその他ステータスを2~3倍する補助魔法。


 海紫は、黒っぽい甲冑を下半身だけ。それに、ノースリーブパーカを上には着ていた。その下に、長袖の緑色の服を着いた。微妙なチョイスも、当時は小学生だったからだ。

 特に、中二病と言い換えてもいいかもしれないくらいに、下半身だけ鎧の格好がかっこいいと思っていた。

 

 アカリは、白いローブを着ている。フードを被って顔を隠しているのでどんな表情をしているのかも、どんな顔をしているのかも知らない、というのが評価。

 そして、自分の身長の1.5倍位の杖を持っている。

 杖の先っちょは、黄色の魔法陣が広がっていた。


「行こう」


 そう言って、教室をちょっきって一心に窓の外へ走る。そのまま、ベランダの檻を踏み越えて、飛ぶ。

 

「我に飛行する魔獣を従えよ 顕現せよ《ディアヴィデル》」


 二階から活きよいよく飛び出た二人を教室から見ていた真城、ヤンキー先輩、川原。

 アカリの杖の魔法陣が大きくなり、その中から、巨大な毛むくじゃらな――――鳥類が出現し、アカリと海紫を背にのせた。

 

「二つの御霊を捧げ 場を清めよ《ロヴィ―》」

 

 それは、BPボディポイント、つまり防御力含めてステータスの底上げをする補助魔法。今回、二つの別魔法――いずれも最上級魔法――をかけているので、並大抵の敵には負けるはずはない。

「『暁の紫電』が出現した時に敵側が勝てなくなるくらい強くなる、と言う噂は本当だったのか」

 真城が驚いていた。

「正直に、チートだと思うなぁ、俺」

 ヤンキー先輩が呆けていた。その、巨大鳥類を旋回させながら、方向を変えて、川原含めて三人いる教室に向かってきた。


 そして、海紫が手を伸ばした。

「行こうぜ」









「魔法なの? これも」

 真城がアカリに聞く。頷くと、へ~って、毛むくじゃらな毛並みを撫でた。

「まぁ、竜に近づいたら降りますけどね。早く終わらせよう」

「師匠、レイドパーティが居ますよ」


 飛ぶ鳥類から下を眺めていたヤンキー先輩が言う。

 レイドパーティというのは、攻略組のこと。この《異変》を本気で攻略しようとしている第一線の調査兵。


 そして、パーティは、あろうことか、鳥類に向かって弓を引いた。そして、放つ。一緒に魔法も飛んできて、

 敵として認識されたみたいだった。


「何してんの? 馬鹿でしょ、あの人達」

 川原が呆れる。

「雷電の怒り《雷神ノ一撃》」


 鳥類が口を開いて、そこに魔法陣が出現した。「って――」というアカリの声で、魔法陣から無数の雷の槍がレイドパーティに飛んでいく。

 恐らく、生き残るには凄く運が必要。


 レイドパーティのいたそこは、何百ものクレーターのような穴ができて、そして煙を立ち上らせている。

 建物も姿を消して、跡形も無い。

 まぁ、死んでも向こうが手を出してきたんだから。


「き……様等――――」


 その声は、鳥類の後ろから。つまり、背後から聞こえてきて、驚くように振り返る。

 エイのような魚が宙に浮いていて、そこにさっきのレイドパーティ。そして、頭に乗る一人の人間。


「この巨大鳥類は『暁の紫電』の所有生物でなかったのか? 貴様らは、人間……まさか」


 髭を伸ばした威厳の強そうな厳つい顔立ちの老剣士。武士のような鎧を身につけて刀を2本腰に挿していた。ラストサムライとは言いすぎだろうか。と思うほど。


「ははは。このディアヴィデルを知ってるなんて只者じゃないね―。そう、『暁の紫電』の一柱『暁』。古代呪文スペルマスターアカリちゃんだよ――」

 立ち上がって杖を構えながら叫ぶので、これは、流れに身を任せ

「同じく『暁の紫電』。『紫電』の海紫」


 髭の老人が高らかに笑い始めたのが分かった。それは、心から、本心からではなく、馬鹿にしたような意味合いのほうが強いかもしれない。

「あー、思い出したよ。しーちゃん、あれはしーちゃんに一太刀入れた奴だよ」

「あー。一番強かった敵な―」


「ならば、一回戦ってみたいのぉ。これでも、昔は現役兵長だったからの」


 龍のことはほっとくとして、こんな楽しそうな闘いを見逃すことは出来ない。乾いた笑いとともに、海紫は近くのビルに飛び降りた。

 海紫は、魔法を発動。白い光をタガーのように逆手に構えた。

 

 「よいっこいせ」と、老剣士もビルに降り、腰の日本刀を抜いた。

「思い出したの。昔、その2本のタガーと戦った気がするの。――――信じたくはないが、本物か?」






「さぁてね。確かめれば?」


 地を蹴った。

 数十メートルの差を一気に縮め、活きよいと共に、タガーを老剣士の首筋に切りつけた。

 

 キィィィん

 

 と、嫌な音を立て、老剣士はさやでその攻撃を防いだ。

 どうやら、金属で出来ているらしい。それも、魔法では切れない。

 通じないと思った瞬間に、後方にバックステップで間合いをとった。そして、タガーを構え直す。


「初撃、お見事。恐らく本物と思うのぅ。よみがえるの、昔の記憶が――――――黒竜の冠、第一段階開放」


 老剣士から、黒いオーラが発され波打つように老剣士を取り囲む。ビルの方は、その波に当てられるだけで砂になり、消える。

 腰のあたりから15に及ぶ尻尾のような黒い影が見える。


「いいことを教えてやろう。冠は私に宿っている。私を倒せば、この世界は終わろう」

「―――。光属性 付加エンチャント 《晄剣》」


 白い光をタガーに宿して、海紫は動き始める。のたりのたりと、少しおどけるように、両手のタガーを地に近いところで構えて敵を嘲るようにゆっくりと、近づいていく。


 老剣士は刀を海紫に向けた。渦巻くオーラが活きよいよく、槍のようにゆっくりと歩く海紫に突き刺さろうと向かう。

 一本が、海紫を捉え――――――ようとした時

 海紫がブレて、消えた。



 

 瞬間、老剣士の背後に光が集まって朱い閃光が輝く。横一文字に老剣士が斬られた鎧が、ラグを発し、数本の尻尾が、パァァンとはじけ飛ぶのだ。

 老剣士が振り向くが、誰もいない。元から居ないのか、それとも、剣閃だけを飛ばしただけなのかもしれない。


「仕方ない。時間が押している。 黒竜の冠――第二段階――開放」


 老剣士は、刀を足元に刺して呪文のように手を組んで、詠唱する。


 空に、黒い魔法陣が現れ、それが徐々に降下していき、老剣士を包んでいったのだ。

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