とある師団員の記述。
「ん……?」
そして、一人になってふと何かが引っかかった。
「どーしたんです?」
団長の専属のメイドが水と薬包紙を片付けながら俺を見てきょとんと首を傾げた。
「団長、ウィルっていってたよな? 息子さんのこと」
「……んー、そうですね。そーいえばそうでした」
「……ウィル、どこかで聞いたことが……」
「そういえば、魔法陣で魔力を全消ししたチート魔術師ってウィルフレッドさまでしたよね? んで、旦那様も、ウィルと口走っていたような……」
「それだ!」
びっとメイドを指さすと、メイドは首を傾げた。可愛い系で有名な彼女と一緒になれた今日が素晴らしいと思うが、それ以前に、これだった。
「団長の息子さんがあのバカ術式立てた張本人……!?」
愕然と、彼を思い出す。
影のある表情をしていたが、おおむねその顔は団長に似ていた。というか、若いころの団長はあんなんじゃないかと思うぐらい、涼やかな目元も、輪郭もそっくりだった。
「まあ、御無事でよかったんじゃないですか? 旦那様、チート魔術師さんいなくなったってあなた方から報告受けてからやつれていきましたから……?」
「え?」
「ほんとですよー? あの後、旦那様人知れずに泣いていたようですから」
「なにっ!」
「私たちもいちゃならないと思って、あなたたちが退出した後すぐに出たんですけど、お茶器忘れて私、戻ったんですよ。したら……」
目元赤くした団長が悄然と椅子に座って外を眺めていたらしい。
「それ見て、私も泣けてきちゃって。すぐに部屋を出てお茶器片づけて……」
でも数時間後にはいつもの団長だったらしい。
「あんまり表情変わらない方ですけど、そういう端々に感情が表れる方ですから、もう、観察が楽しくて楽しくて……」
目をキラキラさせている彼女に、俺は、ふと引っかかって聞いていた。
「君、もしかして……?」
「はえ?」
「団長のこと好きなの?」
聞いてはいけないと思いながら、聞くと、彼女はぱっと顔を輝かせてこくんとうなずいた。
「ええ。旦那様大好きです。旦那様を愛でる会がメイドにありましてね!」
と意気揚々と団長の可愛さ、彼女たち曰く萌えポイントを語り始めた彼女の残念さに、俺は内心深くため息をついた。
いや、実際、団長は俺たちから見てもあこがれられるほど渋い大人の色香をまとっていらっしゃると思うよ。
もともと彫りが深くオールバックの髪型が似合う整った顔立ちの団長だけど、しわが目立ってもそのしわですら団長の整った顔立ちを引き立たせるってどういう化けもんだよって、思うこともあるよ。
でもな、こんなかわいい彼女から、同年代の俺たちがかっこいいじゃなくて団長がかっこいいしかわいいといわれると何か、胸にぐさっと来るものがあるね。
うん。
可愛い花は、俺たち若木より、枯れた木にあこがれているようです。
この情報を、彼女を狙っていた身の程知らずのバカに教えてやらないとな、と適当に相槌を打って、早くこの時が終わらないかなと、考えていた。
シリアスだったのにどうしてこうなったORZ
とりあえず、枯れ専乙。(笑)




