カラスの意趣返し
「父上の魔力でも簡単に効くって、どれだけ少ない魔力なんですか?」
「息子よ、お前がばかみたいに多いだけだ。私で多いぐらいなのに……」
と、世間一般の感覚を口にする父に、つまらないな、と思いながら、追い返されたあのデブが面倒事を起こさなければいいが、とため息をついた。
「確かに、浅い家の魔術師ほど威張る傾向が強くなっているな」
「ええ。……じい様に悪いが、私は必要であれば、この家を再興させます」
「おい!」
「シャーレイの当主ともいろいろ話しました。本当に必要であれば、ですよ。我々は影の一族。表に出てきていいことなんて一つない」
「……わかっているならいいが。やりすぎるなよ」
「大丈夫ですよ。私はもう独り身ではありませんから」
左手の薬指を見せると、父があんぐりと口を開けた。
「とりあえず、報告がてら。もうすこし、安定したら、あの子を連れてこちらに来ます」
「本当か?」
「ええ。そのために、砦の仕事も振り分けました。まあ、あの話がうまく乗れば、遅くなりますが」
「あの話?」
「バシュラールの末息子を弟子に取ります」
「……っ」
その言葉に、父が盛大にむせる。何から何まで忙しい人だ。
「おま、お前な、いきなりっ」
私が結婚したことより驚いている。それだけ、私とあの子の関係はわかりやすいものだったんだろうか。複雑に思いながら、シャーレイの当主とも話した内容を父に言っておく。
「……あの方も、はあ……」
あきれ交じりの父のため息に私はあくまで事務的に肩をすくめて見せる。彼の駒になるのは非常に不愉快だが、私ほど動ける実力的に高位の魔術師が今いないのだ。
「第一弾で、私の魔術師ギルドの加入です。で、あれの首根っこひっつかんでいる間にあの方が動いて、あれを解任。というか、もはやギルドの解体のためになにかネタを掴んだようなので、それが動くまで私は派手に動きます」
「私が陛下に大目玉を食らうじゃないか!」
何気に父と陛下は仲が良かったりする。非公式に酒を飲んだり、会食をしたりしているらしく、一部の連中から非難されているが、父は意に介していない。さすがは我が父だ。
「八つ当たりなんて受け流してくださいよ。あんなののさばらせておいた陛下が悪いんですからね!」
不敬罪に当たるようなことを言いながら私は、さりげなく防音結界を張っておく。こんな親子喧嘩、犬も食わない。
「ああああ」
「ということで覚悟決めておいてください。世直しですよー」
そういって、父のやつあたりの魔術が飛んでくる前に、転移魔法で家に飛んだ。




