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カラスとセイレーン  作者: 真川紅美
カラスの意趣返し
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カラスの意趣返し

「……これが?」

 驚いた声はレオン君のものだ。

 まだ、動力は生きているらしい。紫色の光を放つ大きな魔晶石に、見慣れた私はめんどくさいなと思うだけだったが、彼らは目を丸くしている。

 紫色は自然界でとれる魔晶石のなかで三番目ぐらいの純度だが、何百年も動作し続けてこの色だ。もともと、高純度で、透明に近い青の魔晶石だった。

 それが判断できるぐらいの知能は持っているのかとため息をついて、私は、一歩踏み出した。

「あなたたちはそこで待っていてください」

「ちょ、ウィルフレッドさまっ!」

 ついてこようとしたレオンさんが一歩私に近づこうとすると、核に近づかせないために張られた障壁が展開する。彼だけがはじかれて壁に叩きつけられる。

「なんで……」

「それ以上、近づかない方が賢明です。今、古代魔法を解除します」

 操作盤として、まだ、生きている透明な板に魔術文字が幾重にも彫られた正方形の板に手をかざす。

「……ふむ」

 ここは防衛拠点だったわけですね。埋もれているが、砦と同じ大砲が三機、そして追跡用の小型機もそこらに眠っていて。

「めんどくさいですねえ。これ」

「何がだ?」

「ここはもともと防衛拠点です。今より、ずっと操作性にたけたゴーレムがたくさんいたという話を聞いたことがあるでしょう? あれよりめんどくさい機械がたくさんそこらじゅういっぱいに埋まっています」

「それをぶっ壊したら?」

「ここで魔法をぶっ放したら、彼よりもっとひどいことになりますよ」

「……」

「マジで?」

「ええ。八つ裂きぐらいで済んだらいいですね」

 そういって、地味にこの大きな魔晶石に彫り込まれた命令文字の一部を消していく。

「何やってんだ?」

「コードを削除しています」

「コード?」

「古代魔法は、魔晶石に特別な文字を彫り込むところから始まります。これにも同じようにその特別な文字を彫り込まれていて、制御者として認められた人が、今、私が触れている制御盤に触れられて、なおかつ制御ができます」

「なんで、あんたは、制御できる?」

 先ほど猿に吹っ飛ばされた方の魔法騎士が鋭い視線を私にくれる。男の私から見ても、女性が放っておきそうもない、涼やかでいて、きりりと引き締まった精悍で整った顔をしている。それが、筋肉の鎧を着ている状態の彼は、私の正体を見透かそうと目を細めている。

「さっき言ったでしょう? カラスを隠れ蓑に行動をしていると」

 そういって、引っかかった記述を消しにかかる。魔晶石が共鳴して不吉な音を立てる。

「お前……」

「うかつなことを聞くんじゃないよ、カインくん。私は余計なことに首を突っ込んで自らを危ない目に合わせる子は嫌いですよ」

 そういって同時に、この設備を閉じるための操作を左手に展開する。

 ここ以外にも核があるらしい。それをすべて魔力でつなげて、核の動きを停止。そして、引き寄せる。

「……大きいですね。このまま地上に出しましょう」

 核を地上に露出した形において、ここの閉鎖を完全にする。

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