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カラスとセイレーン  作者: 真川紅美
戦とセイレーン
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戦とセイレーン

 カラスの使い魔が、ぽとりと一人に目がけてふんを落とした。

 ぽて、と音を立てて肩に当たった不名誉な狙撃弾に、半眼になって、一人、訓練中のバーナードは上を見上げて腕を上げた。カラスはすっと音を立てずにその腕に止まって書状になった。

「……閣下宛?」

 訓練を抜けて、砦の主であり、ここら一帯を治める、シエラント卿の執務室に向かった。

「閣下、突然の訪問、失礼いたします。少し、お時間よろしいでしょうか?」

「すまん、後にしてくれないか。火急でないのであれば」

 よほど忙しいらしい。カラスからの書状といっても通してくれないだろうな、と思いながら、彼の本名を、初めて知るミドルネームとラストネームを読み上げる。

「ウィルフレッド・アンガース・リインカーネート・ラインベルグからの書状です」

「誰だそれ……?」

「……おい、今、ラインベルグといったか?」

 どうやら、先代が訪れていたようだ。申し訳ないことをしたな、と思いながら、バーナードは、ウィルからの書状はかなりまずいことを示しているのだと、一歩部屋に入った。

「許可なくお部屋に立ち入ることをお許しください。こちらになります」

 先代に話を通したほうが早いと書状を、久しぶりに見るかくしゃくとした老人に差し出すと、表の宛名と裏の記名に目を通して、低く唸る声を上げた。

「ロベルトよ、なぜ、ラインベルグの血族が領地内にいるということを教えてくれなかったんだ?」

「は? ラインベルグ、とは……。まさか、あの?」

「馬鹿者が! ないがしろにしてはならない古の一族だ! ……こちらに書状をよこすなんて、相当なことになっているんだろう!」

「どうしましょう……」

 泣きそうな声に先代である、この老人は、書状に目を通して、目を細めた。

「あの、バカ王侯……。こうしちゃおられん、バーナードくん、君はラインベルグの末裔のところへ。このバカ息子の名前を使ってもよい。私は王のもとへ」

「……先代様。いったい何が?」

「リインカーネートと名乗るんだ、大方すべての叡智をその身に宿したのだろう。アンガース、は初代の名前。まずいものを引き出しやがって」

 老人は口悪くののしると、杖を手に、その杖の先に備え付けられている呪刻魔晶石の力を使って、どこかへ、おそらく、王城へ飛んだ。

「失礼します」

 嫌な予感がする。バーナードは砦のてっぺんへ上って、魔術を使って空を飛び、ウィルの家へ飛んでいった。

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