不養生なご主人様にご奉仕
そして、朝。
「……ん?」
明るくなったのを感じて目を開くと、あったかいベッドの上にいた。一瞬どこにいるのかがわからなくなって、しばらくぼーっと見覚えのない天井を見上げて、はっと、どこにいるのかを思い出して文字通り飛び起きた。
「マスターっ!」
部屋を出て、姿を探すと、外の井戸に立って、水を浴びている姿を見て、バッと家の中に戻る。
朝の光に照らし出された体は、程よく引き締まっていて、一切の無駄のない体つきだった。
一瞬でどこまで見ているんだと、自己嫌悪を覚えて頭を抱えていると、足音が近づいてきて、イレーニャは振り返った。
「イレーニャ? 起こしてしまいましたか?」
昨日よりずっと顔色を良くしたウィルが、濡れ髪を拭きながら家に入ってきた。いつも通りにガシガシと頭をタオルで片手で拭きながら、最低限留めただけのシャツから見える鎖骨と首筋が浮いて見える。
「マスター、もう?」
「ええ。すっかり良くなりました。……どうもすいませんね。驚かせたでしょう?」
「驚かせたって……」
昨日の朝、倒れてピクリとも動かないウィルを見た時の衝撃を思い出して、イレーニャは泣いてしまっていた。
「ちょ、イレーニャ?」
困った顔をするウィルに、そんな顔を見ることもせずに、抱き着いていた。
「マスターっ」
ぎゅぅと抱き着いて意外に厚い胸に顔をうずめていた。
「……」
そんなイレーニャに、ウィルは、ずいぶん困った顔をして、というよりは、情けない顔をしていた。
「マスターぁ」
わんわん泣いているイレーニャに、ウィルはそっと溜息をついて、唇を真一文字に引き結んで、彼女を包むようにぐっと強く抱きしめ返した。
「マスター?」
その腕の力に、不思議そうに顔を上げたイレーニャに、ウィルは黙ったまま、小さな頭に頬を寄せ、目を閉じた。
「しばらく、このままでいてくれませんか?」
苦しそうな声でそう言うウィルに、イレーニャは、何も言わずにこくんとうなずいて、自分を包み込んでくれる優しくも力強い体を感じていた。
マスターは細マッチョ(笑)