不養生なご主人様にご奉仕
受け取ったイレーニャは、ほっと息をつきながら、汗でぬれている服を分けて、夜ながらも洗濯をして、部屋に干し、軽く水浴びをしてから、早くも寝静まったウィルの寝室を覗いた。ベッドの端に倒れていないか、心配になったのだ。
「……」
ドアに背中を向けるように眠るウィルの姿を見て、うなされていないだろうか、と中に入って顔を覗き込む。
少し、顔が赤いだろうか。ぐったりとして、目を閉じているが、ただ、眠っているように見える。
ほっと息を吐いたイレーニャは、まだ、汗をかいているウィルに、濡らしたタオルでそれをぬぐってやる。
「イレーニャ?」
荒い息で、うっすらと目を開いたウィルに、ピクリと体をこわばらせたイレーニャの姿でも、そこにいるということに、ほっとしたようだった。ふっと、寄っていた眉根を解いて、ベッドに置いたままのイレーニャの手に、ゆっくりと手を伸ばして捕まえると、ぎゅっと握りしめた。
「マスター? 大丈夫ですか?」
熱いぐらいのその手のひらを感じながら、握り返しながら、ウィルをのぞき込むイレーニャに、ウィルは、ぼんやりとした目をしながらもかすかに笑ってしっかりうなずいた。
「お水、飲んでください」
水差しの水が減っていないのを見てくわえさせようとすると口を引き結んでいやいやと首を横に振った。
「だめです」
無理やりくわえさせようとしても、意固地になって首を振る。
「……」
どうするべきか、と唇をむっとさせて、ウィルを見つめる。ウィルは、楽しそうな目でイレーニャを見ている。子供みたいだ。
「……もう」
あんまりしたくないのに、とずっと頭の片隅にあったことを実行しようと、水差しを自分で咥えて一口、口に含んでウィルに覆いかぶさる。
「イレーニャ?」
不思議そうな声に、イレーニャは、そのまま唇を合わせて、口移しで水を飲ませる。唇が合わさった瞬間、握った手がびくりと震えたのを感じながら、イレーニャはしてやったと笑っていた。
「……」
驚いた顔をしているウィルに、イレーニャはふふんと鼻を鳴らして笑った。
「さあ? 自分で飲みますか? 飲ませましょうか?」
腹が据わったような声をしているイレーニャに、ウィルは素直に口を開けた。それに水を補充した水差しを差し込んである程度飲ませると、もういらないとウィルは首を横に振った。
水差しを置いて、汗で凝った髪を撫でて梳いてやる。
「マスター?」
そんな手の感触を目を細めて感じていたウィルがやがて、ふっと瞼を落とした。
いきなりで、驚いたイレーニャがゆすろうとしたが、先ほどより深く寝息を立てている姿に、眠ってしまったのだと、ため息をつく。
「マスター」
気の抜けた寝顔をさらすウィルを眺めながら、イレーニャは近くに置いてある椅子に腰かけて、握った手に額を乗せて、いつの間にか、眠ってしまっていた。
鳥ちゃんの母性(/・ω・)/
ご主人様(;・∀・)