表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第4章 新人探索者パーティ対抗戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/161

試合開始は実況席から




《――さあ、今年もこの時期がやってきましたね、猿島さん!》


《はい! 今年も呼んでいただいてありがとうございます、本多さん》


《いえいえ、今年もよろしくお願いいたします。さあ、第23回を迎える、全国新人探索者パーティ対抗戦! 過去にはこの大会で優勝、好成績を残したおかげで大手クランから声をかけてもらうパーティなども多く、注目度の高い新人たちの晴れの舞台を演出してまいりました。実況は毎度お馴染み、私、本多智則と――》


《――わたくし、猿島啓治の二人で務めさせていただきます》



 全国新人探索者パーティ対抗戦、その公式チャンネルでは、早速とばかりに実況担当者と解説担当者が慣れた様子で挨拶をしながら今大会のルールを説明していく。

 この大会ではもはや名物実況、解説となったコンビの登場に、お祭り気分で集まった視聴者たちのコメントが凄まじい早さで流れていく。



《――さて、私たちのことはともかくとして、今年度はなんと、特別なゲストをお迎えしております! いよっ!》


《あははは、いやいやいや、毎年のことじゃないですか》


《あっははは、いや、毎年素晴らしいゲストの方に来ていただいておりますとも。ですが、今年も凄いですよ?》


《おっ、本多さんがそこまで言うなんて、期待しちゃいますねぇ》


《いや、もう私も今日会えると聞いて、ちょっと緊張しておりますとも。いえ、私の感想などはいいでしょう。ではでは、ご紹介させていただきましょう! 日本最強のクランと言えば、やはりここしかない! 海外のクランとも積極的に交流を続け、中層突破を目指して精力的に活動しているクラン、『神風(かみかぜ)』の若きエース! 齢21歳にしてレベル6探索者! 周郷(すごう) 徠人(らいと)さんです!》


《よろしくお願いします》



 大手クラン『神風』の若きエース、周郷 徠人。

 甘いマスクとは裏腹に豪快に魔物たちを斬って伏せる正統派剣士であり、さらさらとした茶色がかった自然な黒髪に端正な顔立ちをした、見るからにイケメンの登場にコメントがさらに加速していった。


 もっとも、コメントは歓迎して盛り上がる人もいれば、その甘いフェイスと整った顔に怨嗟をぶつけるような、醜い嫉妬が混じった叫び声をあげるコメントもあったりするのだが、濁流のように押し寄せるコメントに流されて消えていく。



《いやあ、凄い人気ですね、周郷さん! コメントもえげつないことになってますよ》


《いえいえ、それはこの大会が人気だからこそだと思いますよ。僕が出なくても大変盛り上がっていましたし。僕としても、昔から観てきたお二人とこうして一緒に肩を並べて拝見できるなんて光栄です》


《いやいやいや、百点満点の回答過ぎますって! ちなみに、最初に僕らの配信を観たのは何歳頃のお話で?》


《えっと、物心ついた頃ですから、多分、4歳ぐらいかと……》


《えーと、つまり17年前ですかね? 猿島さん、僕らもう長いことやってますね》


《この話題やめません? おっさんって言われてる気分なんですけど。いや、もうおっさんではあるんですが》



 軽妙なトークにしっかりと混ざってこなしてみせる周郷の対応を褒めるコメントや、名物実況と解説コンビの二人の年齢を改めて考えるコメントなどが溢れ、明るく楽しい雰囲気でオープニングトークが流れていく。


 そもそもこの二人のコンビは、初回配信からずっと担当してきた二人だ。

 そろそろ後進に譲れと書かれたコメントを目敏く見つけて椅子にしがみついたりと、コミカルな対応をしてみせ、本戦までに空いた時間を見事に繋げてみせていた。



《――さてさて、周郷さん。ちなみに今大会、周郷さんが注目しているパーティをお教えいただけますか?》


《そうですね。もちろん、『神風』の下部クランに所属している〝十字星〟のパーティについては、個人的にも応援していますよ。いつかは彼らも『神風』に入ってくる、新たな後輩になってくれると期待しています》


《周郷さんがここまで言うのも無理はありませんね。実はこの〝十字星〟、パーティのバランスが非常に良く、探索でもそれぞれの役割を安定してこなせる実力派として――》



 待ってましたと言わんばかりに映像が切り替わり、〝十字星〟の配信動画の一部が編集されたものが流れ、それぞれのメンバーを本多と猿島の二人が紹介していく。


 レベル2パーティ、〝十字星〟。

 堅実でありながら強力なスキル、読者モデルなどもやっている女性メンバーなども在籍しているため、何かと話題となっており、非常に注目度の高いパーティであった。



《――ちなみにですが、〝十字星〟とライバル関係にあると言われているのが、〝銀の聖杯〟というパーティです。周郷さんはご存知でしょうか? 彼らは『神風』のライバルとも言われるクラン、『天照(あまてらす)』のメンバーですが》


《えぇ、もちろん。彼らもいいパーティですね。特に刀使いの――》



 周郷の相槌に応じて、今度は〝銀の聖杯〟というレベル2パーティの紹介映像が流れ始める。どうやらこの辺りの動画がすぐに出てくるあたり、最初から織り込み済みの流れだったらしい、などというメタなコメントなども流れている。


 ネットニュースでも注目パーティとして〝十字星〟や〝銀の聖杯〟を紹介している記事はそれなりにあったため、注目パーティに対してはやはり力を入れているらしいことが窺える。


 しかし、それらのパーティの紹介が終わったところで、周郷が続けた。



《――ですが、正直に言えば、今回の大会は両者ともに少々分が悪いと言わざるを得ませんね》


《おや、そうなのですか?》


《はい。《《あのパーティ》》がいる以上、どうしたって〝十字星〟と〝銀の聖杯〟では見劣りしてしまうだろう、というのが正直なところです》


《おっとぉ? 周郷さんがそこまで言うとなると……やはり、あのパーティでしょうか?》


《あーっ、私も分かりましたね! いやぁ、色々な意味で話題に事欠かない彼女たちが、満を持して表舞台に殴り込みをかけましたからねぇ》



 ここまで言われて、コメント欄の反応は分かれた。

 周郷らが言うパーティが誰か分かっている者たちと、分からない者たちの反応だ。


 知名度という意味で言えば、圧倒的に両者に劣っているというのが実状だ。

 実際、更新頻度も両者に比べれば劣ってしまっているというのも事実であるし、チャンネル登録者の人数としても、大手クランがバックについている〝十字星〟と〝銀の聖杯〟はすでに250万人を超えているほどでもある。

 もちろん、そこに読者モデルの女子高生などもいたりするから、というのもあったりするのだが。


 ともあれ、そんな両者を相手に引き合いに出されるパーティ。

 それは。



《――〝金銀花(カプリフォリオ)〟。色々な意味で話題となったパーティですが、彼女たちの実力は紛れもなく本物だと言えるでしょう》


《やはりそうでしたか! スタッフさん、映像出ます? ……あ、オーケーだそうです!》


《いやあ、彼女たちと言えば、かの人為的『魔物氾濫(スタンピード)』の一件ですね。彼女たちが動いたおかげで助かった探索者たちがいたというのに、それが認められず、何故か彼女たちが無茶をしたというような情報が世間に出回っていた時は驚きました》


《猿島さんもご存知だったんですね。いや、実は私もテレビでニュースを観てから調べたんですがね。いや、コメントにも勘違いしていらっしゃる方がいるようですが、テレビで言っているような、目立ちたがって無茶をしたとかではなかったですからね!》


《えぇ、僕もそう思っています。彼女たちは自分たちの実力に自信があり、だからこそ、助けるという選択を選べた。立派な探索者ですよ》



 猿島、本多、そして周郷が〝金銀花(カプリフォリオ)〟を認めるような発言を堂々としてみせたために、コメントでもそれらを後押しするようなコメントや、知らなかった、動画を見てみる、というようなコメントが出始めている。

 もっとも、「だからそう言ってんだよ」というような、ここぞとばかりに理解者のようなコメントをしている節も見受けられたりもするが。



《今回は出場パーティの中でも唯一のレベル3パーティ、しかも初年度メンバーの3人でこれです! 周郷さん、レベルというものはこれほど早く上がるものなのでしょうか?》


《いえ、レベルを上げるには常に自分たちの限界、その先を目指して歩み続けなければならないと僕は思っています。つまり、これだけレベルが早く上がるというのは、必然彼女たちがそれだけの努力をしてきたという証でもあると言えます》


《なるほど! さすがは弱冠21歳にしてレベル6探索者の言うことは違いますね! 猿島さん、今回のルール上、レベル3パーティは有利なのでしょうか?》


《ハンティングは、レベルに応じた魔物を倒してポイントが入るというものです。その点、レベル3パーティは中層以降の魔物が対象です。ダンジョン入場開始からゲームスタートまでに中層に到着するというのは、はっきりと言って不可能に近いですからね。しかも魔物も中層以降になると強さが変わります。正直、ルール的に言えば不利な面が大きいのは否めないですね》


《ありがとうございます。確かにそう考えると中層は不利だと考えられなくもないですね。その辺りをどう切り抜けるのかが見ものですが……ここで……? ――おっと、ダンジョン入場10分前となり、各パーティの配信が始まりました! 〝十字星〟、〝銀の聖杯〟、そして今しがた話題に上った〝金銀花(カプリフォリオ)〟も配信を開始しましたね》



 盛り上がる実況や解説は、そのまま大手クラン所属の新人パーティや、そのクランの下位クラン、あるいは話題になったパーティを次々に紹介していく。


 コメントも順調に盛り上がり、盛り上がってきたところで、ついにゲーム開始の時間が近づき、カウントダウンが始まった。



《――さあ、第23回、全国新人探索者パーティ対抗戦! 入場開始まで、5、4、3、2、1……スタートです! 各パーティ、早速ダンジョンの内部へと入っていますね》


《本多さん、こちら映せますか?》


《こちらはー……おっと、先程話題になった〝金銀花(カプリフォリオ)〟ですね。どうやらまだ内部に入っていないようですが……何やらドローンカメラを手に持ち始めましたね? これは八咫島流霞選手が、突然カメラを手に取り、そして……? ――っ、なんと、これは!? 駆け出した!? 凄い、すごい速さだ! 凄まじい速度でダンジョン内を駆けていく!》


《……まさか、彼女たちは一時間で中層に行くつもりか……?》


《そのつもりなのかもしれません! この速さは凄まじい! 壁が接近したり離れたり、しかもその速さについてくる姫屋奏星選手、川邊美佳里選手も素晴らしいですね! 時折カメラに向かって手を振ってくれています!》


《おおおっ、凄い迫力ですね……!》


《それでも、ここまで映像がしっかりと確認できるということは、八咫島選手の体幹がしっかりとしているということです。配信であることを意識してのことですが、この速度で映像がブレないように調整してくれるのは、彼女がただ速さを求めていない、まだ余裕があるという表れとも言えますね》


《なるほど! さすがは周郷さん、しっかりと探索者目線でありがとうございます! ちなみに視聴者の皆様、ドローンカメラを手に持って移動してはいけないというルールはありません! ですが、万が一にもこれをやって配信が停止してしまった場合は、その時点でそのパーティのスコアはストップされてしまいますし、その時点で配信は終了となります! つまりこの速さは間違いなく配信中の光景です! 周郷さん! これはやはり?》


《はい、このペースならもしかしたら、もしかするかもしれません》


《ありがとうございます! あの周郷徠人が認めた! たった1時間での中層へのランニング! 〝金銀花(カプリフォリオ)〟、今日は一体何を見せてくれるつもりだー!?》



 ドローンを手に持って駆け出すという暴挙に出た〝金銀花(カプリフォリオ)〟の配信は、コメント欄も凄まじい速度でコメントが流れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ