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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第4章 新人探索者パーティ対抗戦

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流霞の測定 Ⅱ




「――え? つまり、それを使うとテストとかしなくても色々判別できるようになった、ってこと?」


「……そうなるね」



 テストを中断すると言われて、一行と合流した流霞の問いかけに雅が答える。

 その答えを聞いた流霞は素直に「ほへー、すごー」ぐらいの緩い感想を抱いていたのだが、ふと疑問が芽生え、首を傾げた。



「……あれ、私なんか20分ぐらいさっき何も返事ないままテストしてたんだけど、それ――」


「――じゃあ早速だけどるかちーから見てみよっか!」



 …………。



「……ねえ、奏星。私ずっと走って――」


「――るかちーレベル4以上5未満ぐらいって言われてたから! 楽しみじゃね!?」


「それな!」



 ………………。



「……ミカミ――」


「――はーい、るかちー。こっちの壁際に立ってー」


「え、あ、あれ? うん……」



 質問をしようとする度に凄まじく食い気味に声を被せられ続ける流霞。

 しかし彼女はそんな対応に不満を抱くよりも「え、あ、タイミング被ったごめんなさい黙ります」となってしまう程度にはコミュ障である。


 なんなら20分ぐらい走らされていたのも、別に怒っている訳でもなく、ただただその時に魔導具が生み出されたのかな、ぐらいのノリで質問したかっただけだったりもするのだ。


 もちろん、雅、奏星、そして美佳里は違う。怒ると思っている。

 冴香が突然生み出した『解析片眼鏡』はそれぐらいのインパクトがあり、思わず流霞の体力チェックテストの方よりもそちらに夢中になってしまったのだから。


 コミュ障少女が流れにあっさりと流されて壁際に立つ頃、冴香は冴香でまた『創造の石板』との対話を試みているようで、ぼそぼそと喋っている。

 彼女の手元、『創造の石板』の上にホログラムが浮かび上がり、何やら長方形の板のようなものが現れた。



「あれ、さーねぇ、何作ったん?」


「出力用、の、魔導具。解析結果、をこっちに出力、して、紙に記入して、もらう」


「天才かよ」


「うん」


「え、こわ。ガチで肯定した。いや、天才なのは知ってるけど」


「雅も、お母さんも、すごい。わたしにない、力がある。だから、天才。家族のみんなは、すき」



 ぼんやりぼけぼけとした様子でそんなことを言い出す冴香。

 そんな冴香に言われ、瑤子や雅が照れくさそうに視線を泳がせたり頬をかいたりしている姿に、流霞もちょっとほっこりした。


 ――ウチは「戦えるヤツは好きさ。戦えない? 甘ったれてんじゃないよ。野垂れ死にたいのかい?」って言われてた歳の近い子いたけどなぁ。


 どこの修羅の孤児院なのかと言いたくなるような暮らしの自分とは大違いである。



「雅、試してちょうだい」


「ん、おけおけ。んじゃるかちー……――覚悟ッ!」


「覚悟!?」



 雅に突然そんなことを言われ、あわあわとしながらも何かこう、光ったりとかするのかと身構えた流霞であるが、実際に何かが起こる訳ではなかった。

 ただ雅がモノクルをつけて自分を見つめているだけであることに気が付いて、ゆっくりと身体の力を抜いていく。



「雅、それ、この端末に乗せて」


「おー……――え、あ、おけ」



 表示された情報を一人まじまじと見て、一人で納得した様子のまま動かなくなっていた雅に冴香が声をかけ、今しがた生み出した魔導具へ『解析片眼鏡』を載せる。

 僅かに反応するように『解析片眼鏡』と出力用魔導具が光を放ち、一枚の紙を出力していった。


 早速とばかりに雅が出力された紙を取り上げ、内容を確認する。



「……うん、バッチリ。あーしが見た情報と一緒だよ」


「マ? 見せてみせて」


「あーしも見たい!」


「ちょっ、今モニターに表示すっから待ってって」



 全員で覗き込むように顔を近づけ合う面々から、出力された紙を守るように雅がそれを持って近くのスキャナーへと近づいていき、スキャンを開始する。

 一番それを見たいのは自分だったりする流霞なのだが、そこに割って入る勇気はなかったので、大人しく待っていると、モニターに情報が表示された。


 名前の他に表示される項目は、『名前』、『レベル』、『ダンジョン因子名』、『スキル』のみであるらしい。

 ゲーム内のデータのように数値で能力が可視化できるのではなく、年齢などのパーソナルデータなどが出てくる訳でもないらしいが、それでも一見してレベルなどが測定できるという点からも、画期的な魔導具であることは間違いなかった。



「……レベル3じゃん?」


「それな。てっきりレベル4かと思ったわ」


「ということは、やっぱり〝常魔値〟が高くなって肉体強度が強くなったのかしらね……。あら、でもこのスキルは……?」


「てかるかちー、スキル多くね?」



 表示された情報で一番目を惹いたのは、やはりずらっと書かれたスキルの数だろう。

 元々はレベルアップ毎にスキルを覚えるのが通説とされていたが、スキル拡張を経てスキルを獲得するようになったようだ。


 第1スキルの【朧帳】と、第2スキルの【潭月鏡身(たんげつのかがみ)】はこれまでも知っていたが、その横には【鏡花水月】の文字がある。

 さらにそれらのスキルが書かれた列の次の段に、『拡張タイプ:反転』と書かれた欄があり、そこには【常時解放:凶禍酔月(きょうかすいげつ)】、【潮汐破断(ちょうせきはだん):下弦/上弦】と【零月(れいげつ)障壁】、といった文字が記載されていた。


 スキルは術者には〝どういうものかが理解できる〟代物だ。

 どうも【常時解放:凶禍酔月(きょうかすいげつ)】が流霞の能力を底上げしているらしい、と流霞は悟る。


 他のスキル、【潮汐破断(ちょうせきはだん):下弦/上弦】とは、赤い霧を発しながら分子破壊を引き起こすスキルであり、下弦がゼロ距離発動、上弦が遠距離発動を指している。

 一方【零月(れいげつ)障壁】とは、流霞の周囲に向かってくる存在の分子運動をゼロにする、〝適合反動〟時に見せたスキルであるが、これは意識しないと発動できない代物のようだ。


 改めてスキル名を見ると、なんだか漢字がいっぱい、という安っぽい感想を抱く流霞であった。



「……拡張タイプ……?」


「スキルの拡張にも種類がある……?」


「っ、奏星、ミカミカもいい?」


「え、あ、おけ!」


「あいあいよー」



 推測だけで満足するならばともかく、検証するには比較対象がなければ、何がどうなっているかも分からない。

 雅に声をかけられて、意図を読み取ったらしい奏星と美佳里の二人がそれぞれに『解析片眼鏡』で解析を受け、そのまま情報を出力して内容を表示する。


 奏星も美佳里もレベルは同じ3だ。


 奏星のスキル欄には、第1スキルの【灼火斬(しゃっかざん)】に、第2スキルの【火輪連斬(かりんれんざん)】、そして第3スキルが未だに配信などではお目見えしていない新スキル、【限定解放:赫灼かくしゃく】という、第1スキルと第2スキルを超強化する、いわゆる任意発動型の自己強化スキルであった。

 奏星のスキルの下の段には『拡張タイプ:特化』と書かれており、そこには【焼失の(あか)】と【火焔抱擁】の文字があった。


 奏星の【焼失の赫】とは、流霞を助けた際に魔力だけを燃やす炎を生み出したものであり、【火焔抱擁】とは、一定範囲内の標的に対して絡みつくように現れる炎のスキルである。

 どちらも使い所を限定させて特化させているという意味だろう。


 一方、美佳里は少々異なる。

 最初に取得したスキルは【魔力感知】であり、第一スキルとなるのが【魔弾生成】と【連携機能有効化(アクティベート)】。第2スキルが【解放:魔眼鏡(まがんきょう)機能α】。第3スキルは【虚空射撃(ホロウショット)】という、空中に魔法陣が浮かび上がり、直接そこから魔法銃などを介さない銃撃である。


 残念ながら美佳里は拡張スキルの欄が存在していないようであった。



「――分かったことは多いけれど、どうも〝拡張スキル〟には幾つかの系統があるみたいね」


「るかちーが〝反転〟で、奏星が〝特化〟かぁ。お母さん」


「えぇ、『明鏡止水』で〝拡張スキル〟を取得しつつある人たちにも協力してもらうわね」


「うん、お願い」



 かくして、流霞の測定で集まった面々であったが、その結果、予想外な事態が生み出されてしまった。

 今後、『明鏡止水』側でも詳細な情報収集などを進める内に、改めて基準値の算定などが落ち着いたらまた検査することになり、この日は解散となった。




 ――――そしてついに、〝第23回 全国新人探索者パーティ対抗戦〟が始まろうとしていた。




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