表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブの命が軽すぎる!  作者: 夜星 灯
笑うもの
23/32

23

 ガラリと開かれた扉の向こうから、入ってきたのは、どこか心のどこかで予測していた通りの人物で。


「おや……どうかしたのかな?」


 困ったように頬を掻いて部屋に入ってきたウィリアムに、ルキ先生はどこか不思議そうで。確かに、昨日手当てしたばかりなのに。そんなにすぐ保健室に来るだろうかと、私も疑問に思う。もしかして包帯が巻けなかったのかな、と確認した腕の包帯は、ピシッと巻かれていて。なおさら違和感がある。


「…俺、鍛錬に早く戻りたいから。だから、カリプソ先生に言われた通り、安静にしてたんス。それで朝、寝てるうちによれた包帯を巻き直そうと包帯を剥がしたんです。そしたら……」


 ウィリアムが言葉とともに包帯を緩める。しゅるしゅるという微かな擦れる音の後、現れた腕には痛々しい切り傷と、紫色の痣が大きく広がっていた。ルキ先生は、その腕を確認してすぐに頷いて。


「そっか、びっくりしたよね。昨日より酷くなってるかもって、感じたよね?大丈夫だよ。切り傷が深いと、傷の周りに内出血が広がったりするんだ」


 そう説明しながら、ルキ先生はテキパキとウィリアムの腕に手当を施していく。その言葉を聞いたウィリアムは、安堵からか深刻そうだった表情をわずかに緩めて。そうして顔を少し上げたことで、私と視線が交錯する。そこで、初めて私がいるのだと認識できたらしい。


「うぇ、ユラ嬢!?」

「ちょっと失礼なのでは?ウィリアム様」


 怪我に焦っているところが格好悪いと思ったのだろうか。あたふたとするウィリアムに、年相応の感じがして、ふふっと小さく笑う。そこで、何かが頭を過ぎった。何かゲーム本編で、ウィリアムの怪我に関することがあったのではないか、と。


「はい、終わり!引き続き安静にね?」

「はい!あざっした!」


 元気よく返事をしたウィリアムの声に、思考が掻き消される。ウィリアムは何かを言おうとして辞めたようで、昨日と同じように手を振ってから保健室を出て行った。


「騎士になるためとはいえ、あんな怪我をするほど鍛錬頑張ってて偉いよね」


 ルキ先生の言葉に、曖昧に頷く。何か、重大なことを忘れているような。そこまで考えても、もやがかかったように思い出せなくて。


 私が答えを得たのは、その日の夢でのことだった。


(あれ……?)


 不意に、ここは夢の中で、自分の意識が誰かのものと混ざっているのを感じた。


 その誰かの見下ろす腕に、青と紫でできた顔が広がっている。傷口が、口となって言葉を紡ぐ。


「誰もおまえを見ていない」

「セルバンテスの子、グレアの側近候補」

「お前の価値はそれだけ」

「セージも、お前自身を見ることはない」

「自分に何もないことは、お前が一番よくわかっているだろう?」


 呪詛のように、嘲る言葉が次々と傷口から漏れでる。痛い、痛い、痛い。


 ——どこが?


 話すたびに開く傷口?それとも。


「心が弱いのでは、騎士になるなんて無理な話だろうなあ?」


 うるさい、うるさい、うるさい!!!


 私の頭の中にその言葉だけが反響して埋め尽くしていく。ああ、これは。


 ——ピピピッ!!!


 クロックーの鳴き声が朝と、ウィリアム編の開始を知らせるようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ