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天鏡記  作者: 藤桜
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天文18年(1549年) 陸奥国会津郡黒川城

蘆名 四郎丸


やはりこれを言うのは早すぎたか…

皆完全に固まってしまっている…

「四郎丸様!その話は我々も聞いていないのですが…」

右衛門大夫が静かに若干どすのきいた声で話しかけてきた。

やばいなこれは…完全に怒っているな…

「すまぬな右衛門大夫!この機会にせっかくだから伝えておこうと思っただけなのだ…

 他意はない…」

言い訳してみたが目が完全に怒っている…さてどうするか…

「四郎丸よ先ほどの発言、右衛門大夫達にも諮らずに話したようだのう。

 まぁ良い!朝廷や幕府の件は儂も良いことだと思うので問題ないが…

 長尾との同盟とはどういうことなのだ。しっかりと説明せい!」

「その通りです!何も今長尾家と同盟する理由がありませぬ!」

父上と右衛門大夫が畳みかけるようにこちらへ詰め寄ってきた

「同盟に関してはちゃんとした理由があるのです。

 確かになぜ長尾家と御思いかもしれませぬが、同盟する事によっての利点があります。

 まず父上はこれから田村を攻めるおつもりかと思いますが、その時背後から越後の長尾家に攻められないようにするという目的があります。背後を気にしていては満足に戦も出来ませぬゆえ…

 次にこれが一番の理由ですが、同盟する事により直江津の港を使えるようにするという目的です。

越後の直江津から越前の敦賀、そして淡海乃海を使い京へと交易網を確立するためです!」

さてこの説明で納得してもらえるか…

「四郎丸の言い分は分かるが長尾が簡単に同盟に頷くとは思えんのだが…

 それはどのように考えている?」

「おそらくはなるかと思いまする。何でも長尾家は最近当主が代わったとのこと!

 そんなおりにわざわざこちらと事をかまえるようなことはないと思いまする!!」

そう最近長尾家は当主が代わったのだ!そうあの軍神上杉謙信に…

今は長尾景虎というらしいが…

そうなってくれば早めによしみを通じておきたいと思った!

どう考えても軍神となんて絶対に戦いたくなんてない!!本音を言えばこれが同盟を結ぶ一番の理由だ…

「そういえば確かに家臣からその様な報告があったのう…

 確かに一考の余地はあるか。しかしそうなってくると誰を向かわせるかだが…

 今は戦の準備で動かせる人材も少ないしのう」

父上は同盟には前向きになってくれたが、誰を向かわせるかで悩み始めてしまった。

案自体はあるが…これを言ったらまた荒れそうだなぁ…

まぁ言うだけ言ってみるか。

「父上!そのお役目私と右衛門大夫が受けたく思いまする!!」

「またいきなり何を申すのですか⁉」

「そうだぞ四郎丸!!右衛門大夫は良いかもしれぬがその方は嫡男なのだ!

 この城から簡単に出す訳にはいかん!!」

思った通り怒られてしまった…

しかしせっかくだから直江津の港や軍神を見てみたい!

ここは少しごねてみるか?

「父上は右衛門大夫だけで良いと思われていますが、今回の発案者は私です!!

 私も向かった方が長尾家の利点もしっかりと説明できるのでうまく事が運ぶ筈です!!」

俺が一切退くつもりがないと見たのか右衛門大夫と大和守は諦めてため息を吐くしまつ…

父上にいたっては唸り声を上げながら考えているようだ。

「殿!どうやら四郎丸は退く気は無いようです。某が問題を起こさないよう見ておりますのでお認めになってはどうでしょうか?」

「しかし右衛門大夫よ…他の重臣達やお千が認めぬと思うのだが…」

母上か…確かに騒ぎそうだ。さすがに俺も母上とはもめたくはない…

「他の御重臣達や御方様にはしばらく私の城にいると伝えましょう!

 そのうえで殿や大和守殿に口裏をあわせていただければ問題ないかと…」

右衛門大夫が助け舟をだしてくれた!

びっくりして右衛門大夫を見てみればこちらを見て苦笑していた。

「分かった。この件その方たちに任せる事とする!あとで長尾家に書状を送っておく!」

さてこれで話し合いも済んだし下がるとするか…

しかし下がろうとしたところで父上から声をかけられた。

「四郎丸!楽市楽座とやらの件を家中に広めればおそらくその方に父上から声がかけられるだろう…

 父上はすぐには納得しないだろう。その時は儂を説得したようにその方が説得するように!」

父上の父上ということは俺の祖父ということか?

しかし御爺様から声がかかるとはどういうことだろうか?

俺がいぶしがっていると父上が教えてくれた。

なんでも御爺様は寺社に対して諸権益を保証してきたそうだ

そういうことであれば呼び出しは当たり前か…

まぁ俺としても寺社勢力と争うつもりもないから問題はないだろう。

「わかりました!」と父上に言いやっとその場を下がった。

ただその後に右衛門大夫達からこっ酷く叱られるはめになったが…


天文18年(1549年) 越後国頸城郡春日山城

直江与兵衛尉 実綱 


殿が春日山城に移られてからもう半年はたったか…

先年の兄上との戦で表情にはださなんだが間違いなく気落ちされているだろう…

早く持ち直してくれればいいが

それにしても今回の呼び出しはいったいなんだろうか?

「殿!与兵衛尉お呼びによりまいりました!」

「来たか…与兵衛尉ここへ」

とのが近くに呼ばれたので失礼して座に着いた。

「して今回はいかようなことにございますか?」

「これが会津の修理大夫殿より届いた…」

これは書状か?殿より書状を受け取りなかをあらためるよう言われた。

それにしても相変わらず寡黙な方だと思いながらも書状の中身を確認した。

中には同盟の件、それに関わって改めて使者を遣わすとの内容が書かれていた。

「また急な話にございますね。それで殿はどのようにお考えなのですか?」

「まずは使者と会い話を聞いてみないと何とも言えぬ…」

それは確かにその通りだ…

一言に同盟とは言っても千差万別なのだから

「それでいつ頃こちらに来られるのですか?」

「書状を持ってきたものによると準備があるので二月後とのことだ」

二月後か…会津からここまでの距離を考えれば随分とのんびりなことだ!

それだけ急ぎの内容でもないという事かもしれんが…

今回儂が呼ばれた理由は今回の事調べろという事なのだろう。

「わかりました。では使者が赴くまでに伏嗅に調べさせることにいたします」

「たのむ…」

さて蘆名の思惑はどういったものか…


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