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天鏡記  作者: 藤桜
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天文17年(1548年) 陸奥国会津郡黒川城下

蘆名 四郎丸


俺は今生まれてから初めて馬に乗っている!!

これは前世も含めてという意味だ!この時代にきて久しぶりに興奮していた!

「四郎丸様あまり興奮しますと危のうございます!それに今からその調子では着く前に疲れてしまいますぞ!!」

俺の後ろで馬の手綱を握っている右衛門大夫が注意してきた。

しかし興奮するなというほうが無理だ!

なにせ前世では競馬を賭けもしない癖に見ていたり、某馬を育てるゲームも大分やりこんだほどの馬好きだ!!この体験は実に嬉しい!

そんな調子で目的地に着くまで興奮がやむことはなかった…


「疲れた…というか尻が痛い…」

興奮しすぎたせいか目的地に着くまでに完全に疲れきっていた…

「あのようにはしゃいでいれば当たり前です!!まだ四郎丸様は体も出来上がっておりませぬし鍛錬も最近になって始めたばかりなのですから…」

右衛門大夫は呆れてどうしようもないという感じに諫言してきた…

しかしこれは何も言い返せない…間違いなく自分が悪いのだから…

「すまぬ…次からは気をつける。あと帰ったら体力をつけるように鍛錬の仕方も考えねばならんな。それとすまぬが水をもらえないだろうか?」

それからしばらくの間、右衛門大夫から水が入った竹筒を渡され中身を飲みながら一息ついていた。

その間周りを見渡していたが思ったよりも閑散としている

いやまぁ建物などはそれなりにあるのかもしれないが明らかに活気がない!!

なにせ商売をしているものが全然いないのだ…

これでは田舎の田園風景そのままだ…気になって右衛門大夫に質問して見ることにした

「右衛門大夫!聞きたいのだが城下はいつもこのような感じなのだろうか?

商売をしている商人なども見えぬしあまりにも栄えていない…皆どの様に暮らしているのだ?」

右衛門大夫は然もありなんといった感じで答えてくれた。

「基本的に商売は六斎日に定期的に市がたつのです。なのでほとんどは百姓仕事をしているかと思いますがそれがおかしいございますか?」

まさかの回答だった。確かに楽市楽座などは織田信長が始めたの有名だったはずだが、今がここまでとは思わなかった…

「しかし商人がいないのは不便ではないの?急に入用になった時とかに困ると思うのだが…」

「そうですね…少し不便な所もございますが今までそれが普通でしたし、一応お抱えの商人はいたと思いますので何かあればそちらを頼るのかと」

まいったな…これじゃ殖産興業の方はあきらかに中途半端な感じになる!

「ちなみにだがこの市の制度を変えたいと俺が言ったらどうする?」

右衛門大夫は少し考えてこちらを見た。

「おそらく難しいかと…今六斎日の市を取り仕切っているのは宿老の佐瀬氏でございます。某が四郎丸様に代わって上申してもおそらく簡単には通らぬと思います。」

「そうか…なら佐瀬氏に会うしかないな!!」

俺の発言に右衛門大夫はびっくりしていた。

「お待ちください!!会いに行くとは誠にございまするか?いくら何でも急すぎるのでは?」

「何も今すぐという事ではない!さすがに俺でも段取りぐらいは知っているつもりだ!!なので右衛門大夫、佐瀬殿に俺が一度会いたいと伝えてくれないだろうか?」

俺は右衛門大夫に必ず会うという気持ちを伝えた!!

右衛門大夫はため息を吐きながら

「佐瀬殿の嫡男と面識がございますのでそちらを通して会えるように取り計らいましょう」

と俺の発言におれたのか渋々了承してくれた。

「それでどのような話をするのですか?」

聞いてくる右衛門大夫に俺は少し笑いながら

「なに佐瀬殿にとっても悪い話ではないと思う。それに話す事は商売の話に近いからな」

右衛門大夫は俺の発言を聞き呆れていたが、俺はすでに話す内容を考え始めていた。


天文17年(1548年) 陸奥国会津郡黒川城

佐瀬 種常


ある日右衛門大夫からご嫡男の四郎丸様が我らに会いたいと打診された。

正直な所会うかどうかは迷った!主に父上がだが…

何せ生まれてすぐの噂がひどかった!!

神童が生まれただの、はたまた物の怪の類だなどと城内では知らぬ者はいないほどにおかしかった。

しかし私は右衛門大夫から四郎丸様の事を聞いていたので素直に会ってみたいと思っていた!

だからこそ父上を説得してこうして登城したのだ!!

「佐瀬殿!!親子共々わざわざよう参ってくれた!!」

件の四郎丸様が座ってこちらを笑顔で見ていた。

「お初にお目にかかりまする!佐瀬大和守にございまする。隣が息子の源兵衛でございます。以後よろしくお願いいたしまする」

父上が頭を下げたので、私も一緒に下げた。

「ああ…佐瀬殿頭を上げてくれ。そのようにかしこまる必要もない!実は佐瀬殿に頼みたいことがあるのだが…その前に麦湯でも飲んで一息ついてくれ。話はそれからでよかろう」

しばらくして女中が4人分の麦湯を持ってきた。

待つ間も私は四郎丸様の事を観察していた。そして思った。

確かに先ほどのやり取りにしても今の落ち着きようも、まだ数えで1歳など信じられるものではない…

となるとこの後の話もしかするとんでもない事かもしれぬ…

少し気を引き締めるか。

私が麦湯を一口飲んだところで四郎丸様が話を始めだした。

「実は六斎日の市のことでな相談したいことがあるのだ。なんでも取り仕切っているのは佐瀬家のものだと右衛門大夫に聞いたのでな」

はて?市のことで相談とはいったいどういうことだろうか?

「確かに領内の市を仕切っているのは我が佐瀬家ですが…相談とはいったいなんでしょうか?」

父上も私と同じ疑問をもったのか四郎丸様に聞いている。

「実はな六斎日に市を立たせるというのを廃止し、自由に商いをさせようかと思ってな!

その上で商人や人を集めるために関税等も少しずつ緩和しようかとも思っている。

主に座の廃止や関所の通行税廃止などだ!!」

とんでもないの話がきてしまった!!

父上も開いた口が閉まらないほどの衝撃を受けておられる

右衛門大夫も見てみればこちらも今聞いたみたいな表情だ…

「しっ!四郎丸様!!少々お待ちいただきたい!いま座を廃止しにおまけに通行税の廃止とおっしゃいましたか?いくら何でもその話はお受けすることはできませぬ!!お家を潰すおつもりか⁉」

「大和守殿の申す通りにございます!!私もそのような話は聞いておりませぬぞ!四郎丸様!!」

父上と右衛門大夫が四郎丸様の話を聞いて取り乱している。

まぁそれも当然だ!かくいう私も少し取り乱している。

座の廃止などしたら寺社勢力が黙っていまい。最悪一揆が起きかねん!!

それに関所の通行税廃止こちらはもっと悪い!!他国の間者が入り放題になってしまう。

しかし肝心の四郎丸様が気にもしていないようだ…どうしたものかと考えていると

「まぁ皆の意見も分かるがまず詳しい話を聞いてから判断してくれぬか?それで納得できなければこの話は流しても良い‼」

四郎丸様は説得する自信があるのか力強く仰った!!

「わかりました!そこまで仰るのであれば詳しく聞きましょう!!」

いつのまにか右衛門大夫が四郎丸様に詰め寄っていた…

「そう怒るな右衛門大夫!!ちゃんと話す!!しかしこれでは落ち着いて話す事も出来んな。一度空気をいれかえるか…」

そういうと四郎丸様は女中に麦湯のお代わりを頼んだ。

ご自分で乱しておいてなんとのんきな…

しかし喉が渇いたのもあるし待つとするか

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